2009年11月06日

No.223 ある公爵夫人の生涯

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欧 州 映 画 紀 行
                No.223   09.11.06配信
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週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ いつの時代も女が自由と居場所を求めている ★

作品はこちら
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タイトル:『ある公爵夫人の生涯 』
製作:イギリス・イタリア・フランス/2008年
原題:The Duchess

監督・共同脚本:ソウル・ディブ(Saul Dibb)
出演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、
   シャーロット・ランプリング、ドミニク・クーパー、
   ヘイリー・アトウェル
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■STORY&COMMENT
18世紀後半イギリス。スペンサー家の娘ジョージアナは17歳で名門貴族デヴォ
ンジャー公爵と結婚する。公爵は世継ぎを作ることにしか興味がなく、結婚生
活に失望するジョージアナ。しかし機知に富んだ彼女は、社交界で注目を浴び
て、自分の居場所を見つけていく。
子を産んでも女の子続き。夫に無視されるなか、政治家を目指す昔なじみのチャー
ルズと再会し……

実在の人物の伝記が原作である。歴史にはあまり詳しくないのだけれど、イギ
リスではポピュラーな「歴史上の人物」なのかな。実際の話より作り物(本物
と思えるように上手く作り込まれた)が好きな私は、あまり期待しないで観た
のだけれど、ジョージアナの行く末をいちいちハラハラして眺められる、いい
ストーリーだった。最終的な収まり方なんかについては、ホントいうと「だか
らホントの話ってつまんないっ」と思わなくもないんだけど。

幸せな結婚生活を夢見て嫁いだはよいが、現実に絶望する、という話は、まま
ならぬ時代の定番中の定番の物語である。子どもを産める産めないはすべて女
の責任、しかも男を産めなきゃ義務を果たしたことにならない、なんてひどい
時代だ。もっとも現在だって、家によってはそれに近いことは起こるし、産ん
でこそ女(妻)という考え方も根強い。

結婚初夜、服を脱がせる面倒くささに「女の服はどうしてこう複雑なんだ」と
いぶかる公爵と、「これが女の表現なんです」と説明するジョージアナ、そし
て公爵は、人が何かを表現する、ということの意味をまったく解さない。この
ことが象徴するように、「つまらない」公爵と「魅力的な」ジョージアナは対
照的だ。
夫が退屈だと席を立ってしまう政治談義も、ジョージアナは興味深く聞き、男
たちを相手に堂々と議論をふっかけたりする。その機転とセンスで、社交界の
ファッションリーダー、つねにその動向が注目される夫人として、彼女はその
才能を開かせる。

旧態依然とした男に対し、自分の才で自分の居場所を確保するジョージアナと
いうキャラクターは、現在の女性が(もちろん男性でも)スムーズに感情移入
できる。あと数年でフランス革命が起きる時、自由を尊ぶ時代の雰囲気ともマッ
チする。

昔なじみのチャールズは、自由を訴えて選挙に出る。ジョージアナは有力支持
者として彼を支える。自由を訴え、個性を奪われた家から引きずり出そうとす
る恋人は、新時代の救世主にもなぞらえられる。
こうして見ると自由の新風はいつも時代にも吹くらしい。それは、自由はいつ
も足りたくて、人が欲するからだろうか。

ただ男の子を産むことだけを求められ、自分にも娘にも興味を抱かない。そん
な夫と暮らしていて、紛れもない「自分」を愛してくれる人に出会ったら、こ
ろっといっちゃうよね、うーん、わかる。
と、同時に、多くの人に注目され、ファッションセンスも抜群で華のあるジョー
ジアナは、私にはまぶし過ぎて、彼女の親友(ネタバレになるから多くは言わ
ないが、いろんな関係である)、エリザベスの生き方に、私はより興味を持っ
た。

コスチューム好きな方はヨーロッパ時代劇特有の豪華な衣装をめいっぱい堪能
できるだろう。そして私は、こういう時代物では、お城の前に広々開けた庭を
見るのが大好きだ。

■COLUMN
スペンサー家とは、ダイアナ妃の出身家系で、この映画に登場する三角関係は、
ダイアナ妃とチャールズ皇太子とカミラ夫人を連想するように描かれている、
らしい。「スペンサー家」という名前でピンとこなかった私はちっとも思いつ
かなかったんだけれど。

チャールズ皇太子がカミラ夫人と結婚したとき、これは見方を変えたら、「大
恋愛の成就」、「貫く純愛」だよと思ったけれど、ダイアナ妃とカミラ夫人の
あまりの人気のギャップに、決してそうは思ってもらえない結婚のようだった。

悪者にされる人にも、それなりの理屈があるもので、悪者側から事態を見れば、
そうじゃないときに比べて同情の余地があったり、むしろそれが正しくて当然
と思えたり、どうしてもそうなってしまう不可抗力がうかがえたりするものだ。
ふつう、人は忙しいから、とりあえず何となく中立っぽい立場、何となく常識っ
ぽい立場からものを見て、いかにもひどい人を「ひどい奴だ」とし、何か被害
を受けた人を「かわいそうに」と、判断をする。
それはそれで問題はないのだけれど、いつも、そればかりなら、見方が硬直し、
物事の後ろに隠れているものが見えなくなるかもしれない。

そういうとき、悪人側からものを見せたり、とるに足らない人の側から世界を
見せたりできる「物語」の力は大きいと思う。
日常暮らしていてはあまりできない、視点の移動を「感情移入」という装置を
使っていとも簡単に実現するのだ。想像力は世界を変える原動力。「物語」は、
世界を前進させ、ちょっとでもよくするのに、決して欠かすことのできないも
のだと思う。

この映画、もしも別の視点から眺めるとしたら私は、デヴォンジャー公爵の側
から見てみたい。妻に関心をはらわず、世間体ばかりを気にする貴族の、孤独
や不器用さや人知れない悩みが垣間見られるかもしれない。

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★コメントくださった方へお返事
尾崎 さま
『4分間のピアニスト』、ピアノを習ってらっしゃった方なら、さらにいろんな
角度から楽しめる映画だと思いますよ。ぜひぜひご覧になってください!

コメントへの返事は、基本的に次の配信中でいたします。
メールで返事をご希望の方は、アドレスとその旨お書きください。

★DVD
『ある公爵夫人の生涯 』 ¥2,880(09年11月6日現在のAmazon価格)

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編集・発行:あんどうちよ
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タグ:イギリス
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2009年11月01日

逃げちゃダメ、ですかねえ。

ブームから遅れること十数年。
『新世紀エヴァンゲリオン』というやつを、やっと全編観ました。
Youtubeでコツコツと、楽しい時間でしたねえ。

この有名な作品について、
今さらワタシが言うことなんてなんにもありません。

だから、「エヴァ」自体からはもう離れちゃった話なんですが。

物語の最初の方で登場する
(有名なセリフらしいですが)シンジのいう
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……」というのが、
ワタシには、よくわかんなかったんです。
「何で、逃げたらダメなの?」と。

何か深いわけがあるのかな、と思って先を観たけれど、
そうではないらしく、シンジをはじめ、大人も含めて、この世界では、
「逃げる」ことを皆、極端に恐れていて、また「過去に逃げた自分」を責めていて、
「逃げちゃダメ」というセリフは複数の回で登場します。

「いいじゃん、逃げても。」とお気楽イチバン♪なワタシは思っちゃうんですけど、
このセリフが名言として残るところをみると、多くの人が、
<このセリフに共感する>か、
<置かれている状況が違うから共感まではしなくても、そう言うことを「いいな」と思う>か、
してるのだと思います。

そりゃあ、何か困難を目の前にしたとき、逃げずに真っ向から立ち向かうことは、
その結果にかかわらず、素晴らしいことですよ。
だけど、自分の身を守るために「逃げる」という選択肢は、
決して忌み嫌って真っ先に消去するものではないとも思うのです。

自分には無理だから、失敗したらその後のダメージが辛いから、怖いから、そんなことやりたくないから。
逃げの理由はさまざまでしょうが、ある程度考えた結果なら、「逃げる」を選んだって、真っ向からやってみたのと同じくらい尊い選択だと思います。後にそれを悔やんだとしてもね。

特に、14歳15歳って年頃なら、逃げて逃げて逃げまくるのも手だと、ワタシは思うんですよね。
リアルの世界だろうと、物語やゲームの世界だろうと、その逃げた先で新しいモノを吸収してくることもあるし、
逃避行の中で成長することも(真っ向勝負にくらべて即効性は認められないかもしれませんが)、あると思うんですよ〜。

<とにかく最初に退路を断つ>ことを美徳とするほどに、
自分を追いつめなきゃならんことなんて、この世にそうそうないですよ。
そんなに辛いところにわざわざ自分を押し込めるこたぁ、ない。
甘ったれさんの理屈かもしれませんが、
お気楽イチバン♪に、お茶をすすりながらのエントリーでございました。

posted by chiyo at 23:08| 東京 雨| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月30日

No.222 4分間のピアニスト

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欧 州 映 画 紀 行
                 No.222   09.10.30配信
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★ 綿密に練り上げられる緊迫 ★

作品はこちら
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タイトル:『4分間のピアニスト』
製作:ドイツ/2006年
原題:Vier Minuten 英語題:4 Minutes

監督・脚本:クリス・クラウス(Chris Kraus)
出演:モニカ・ブライブトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング、
   スヴェン・ピッピッヒ
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■STORY&COMMENT
刑務所でピアノ教師として働くクリューガーは、ジェニーという札付きの受刑
者にピアノの才能を見出す。ジェニーは子どもの頃からピアニストとして将来
を期待されていたが、さまざまなことが原因で道を踏み外したのだった。クリュー
ガーが彼女をコンクールに出すよう周りを説得し特訓がはじまった。

ちょっと前の作品。最初は映画館で観たのだけれど、その時は確か、ピアノシー
ンの映像があまり好きになれなかった。最近、この作品の音だけをたまたま聴
いて、「お、実はいい感じ?」と、もう一度観てみることにした。

相変わらず、いちばん盛り上がるピアノ映像のところに、どうも乗れなかった
のだけれど(曲はいいんですよ!)、内容を知ってて観ていると、ピアノ教師
とすぐに暴力をふるいたがる受刑者という二人の女性の心理劇が綿密に作られ
ている様を堪能することができた。

幼い頃からコンクールでよい成績を残しながら、刑務所で札付きとなっている
ジェニーのかかえるもの、優れた演奏家でありながら孤独に過ごし、刑務所で
ピアノを教えるクリューガーがかかえる過去、クラシック以外を低俗なものと
一切受けつけないクリューガーと、誰にもじゃまされない「自分の音楽」を持っ
ているらしいジェニー。二人がぶつかりながら、思いがけず接近し、融和する
かと思えば突然また壊れる。

作り手がここで披露する綿密さというのは、決して二人の事情を明らかにする
のでなく、さらに互いのいだく感情をクリアに伝えるのではない。綿密に、わ
かりそうでわからず、想像するか諦めるしかないところに、観る者を追い込ん
でいく。
その追い込みは二人の間の緊張をよく伝え、さらに、クリューガーの興味が自
分からジェニーに移ってしまったと嫉妬するクラシックファンの看守、やっか
んでリンチを加えようとする他の受刑者が絡み、物語は緊迫を増す。

高度に緊迫を張りめぐらせて迎える最後のピアノシーンは、緊張した分を昇華
させる唯一のシーンと言ってもいい。だから、あまり難しく考えずに、用意さ
れたクライマックスには心をゆだねて観るのがおすすめ。
(音と動作が微妙にずれているとか、あの身体の位置と動きからその音出るか
なとか、重箱の隅はつついたらいかんと、ついつついちゃった私は思う)
容赦ない人間のぶつかり合いが、とにかく印象的な一作である。


■COLUMN
近頃、私の生活はなんだか複雑になってきている。
昔はシンプルだったのだ。
「好きなもの」と「嫌いなもの」がはっきりしていて、疲れたときや落ち込ん
だときにはたっぷり寝てゴロゴロして、好きな歌手の歌を一日中聴いて、好き
な映画をくり返し観れば生活は立て直った。
そのくり返しで生きていれば、つたないながらも生活は形になった。

しかし数年かけて事情は変化し、近頃になって、これはなんだかいろいろ難し
くなってきたな、と頭を抱えている。

基本的にしつこくのめり込む方なので、一度好きになったものは、その後ずーっ
と好き。だから好きな歌手も好きな映画も私の中で持続している。違うのは、
他にも好きなものがあるってことで、特に変化したのは、昔は身体を動かすこ
とが大嫌いだったけれど、今は割と好きってところだ。
晴れた休日は、だから、昼まで寝てゴロゴロするのか、起きてサイクリングに
行くのか迷わないといけなくなった。
身体を動かしたいなってときには、自転車にしようか泳ごうかクライミングジ
ムに行こうか、選択しないといけない。

少数の好きな作家をしつこくくり返し読んでいれば満足だったものを、「エン
タメ」と括られる作家も読んでみようと思い、実用書の類も視野に入れるよう
になって、読書生活は複雑化する。

すべてがそんな具合に、やりたいこと、見てみたいことが積み重なっていく。
その上、仕事までしなきゃいけないってんだから大変だ。この仕事だって、昔
は無条件に「嫌なもの」と位置づけてシンプルだったんだけれど、これが最近
そうでもない。遊んでるよりずっと楽しいとはいわないけれど、仕事に熱を傾
けることは心地よいと思う。

きっと昔よりも私の世界は広がっていて、それはきっと誰に話したって歓迎さ
れて祝福されることなんだろう。だけれど、広がった世界は同時に、やりきれ
なかった事柄ばかりを心に積み上げて、人生を少しずつ辛くする。
辛さが降り積もるとたまに、心が今よりも閉じていてシンプルだった頃に戻り
たい、と思うことがある。

だけど、一度開けちゃった世界の扉は、めったなことでは閉じないんだなあ。

ジェニーとクリューガーの二人が出会ってピアノをはじめるまでは、ある意味
で安定していたのだと思う。ジェニーは暴力的で看守たちにも他の受刑者にも
目を付けられる問題受刑者として。クリューガーは、悔恨をかかえこんで、静
かに孤独に、音楽(クラシック限定)だけに興味をいだいて暮らす老女として。
しかし、二人は出会ってぶつかり、新しい世界を開いてしまう。ジェニーは自
分の音楽を形にすることや、もう一度誰かを好きになったり信頼したりするこ
とに目覚め、クリューガーは、音楽だけでなく人に興味を持つこと、思い出の
外の人間関係に触れることに。

それで散々二人は傷つくけれど、この二人は開けてしまった世界の扉を閉じる
ことはないだろう。

シンプルだった頃も悪くはない。だけど、流れにまかせて自分が変わること、
そして、たとえ、長続きしなくても、中途半端で終わっても、やってみたこと
のなかった何かをやってみるのは、それよりずっといい。

昔よりもちょっと複雑な今に、戸惑いながらも、扉は閉ざさずきっとこのペー
スでえっちらおっちらやっていくんだろうと、引いて自分を眺めるこの頃の私
である。

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タグ:ドイツ
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2009年10月22日

No.221 ワン・デイ・イン・ヨーロッパ

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欧 州 映 画 紀 行
               No.221   09.10.22配信
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★ 旅の緊張感と楽しさと寂しさを ★

作品はこちら
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タイトル:『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』
製作:ドイツ・スペイン/2005年
原題:One Day in Europe 

監督・脚本:ハネス・シュテーア(Hannes Stöhr)
出演:ミーガン・ゲイ、ルドミラ・ツヴェートコヴァ、フロリアン・ルーカス、
   エルダル・イルディズ、ペーター・シェラー、ミゲル・デ・リラ、
   ラシダ・ブラクニ、ボリス・アルキエア
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■STORY&COMMENT
サッカーのチャンピオンズリーグ決勝戦「ガラタサライ対デポルティボ・ラ・
コルーニャ」が行われる1日を舞台にヨーロッパ4都市で繰り広げられる4つの
物語。
決勝戦が舞台のモスクワ、2チームの本拠地イスタンブール、サンティアゴ・デ・
コンポステーラ、それにベルリンがそれぞれの舞台。どのエピソードも、その
地を訪れる外国人の旅行者が主人公となり、強盗にまつわる物語が繰り広げら
れる。
ちなみにこの決勝戦は架空の試合(本物だったら、ヨーロッパの頂上クラブを
決める試合としてはちと地味すぎるかな)。

サッカーの大きな試合の日を舞台にしているけれど、サッカー自体は話にはそ
れほど関係ない。サポーターが闊歩している、テレビの前で皆が応援している、
など、「ふだんとは違う日」の演出と、ある1つのイベントを通じて遠いところ
の都市が結ばれるイメージの呼び覚ましのアイテムになっている。

旅行者の浮き足だった感覚と、所在ない感覚、お決まりの警察の不親切な態度、
そして、旅へと誘われる異国の景色(ただしモスクワはそれほどでも!)、大
きなドラマはないけれど、おかしさと哀しさの同居したかわいいオムニバスだ。
ロシアのイギリス人、トルコのドイツ人、スペインのハンガリー人、ドイツの
フランス人、どの話も気が利いているのだけれど、私はトルコで狂言強盗をす
るドイツの若者の話が好き。
狂言がいつばれてしまうんだろう、という適度なサスペンスと、最終的にサッ
カーが人をつなぐあったかさが心地よい。

もうひとつ、私がこの作品でとっても気に入ったところは、とても笑うような
場面ではないところで、思わず吹き出すようなセリフやシーンがあること。緊
張感と、それがほどけた落差で小さなことで笑ってしまう、旅での精神状態が
再現されるような気がして。
それも頻発するんではなくて、忘れた頃に、たまにそんなシーンがくるところ、
品がいい。
たとえば、強盗にあったイギリス女性が、モスクワのおばさんに電話を借りよ
うと「telephone、telephone」と言ってもなかなか通じないから、とりあえず、
「フォーン、スキー」て言ってみるシーン。言ってる本人は大真面目だから、
よぶんにおかしい。

旅先の緊張と、ちょっと心細い気持ち、異国で浮き立つ気持ちと、それらを併
せ持った旅人たちの少し笑える所業、とるに足らないといえばそんなもんだけ
れど、かわいく趣のある作品。疲れて異国に心を飛ばしたい夜にどうぞ。

■COLUMN
もう、ずーいぶん旅に行っていない。
もともとひどい出不精で、休みになればゆっくり寝て、本でも読んで映画でも
観て、とだらだらした日常を拡大して過ごすのが私のお決まりだから、日帰り
で別の町に遊びに行くことも滅多にない。

それでも以前は、1年に1回くらいは、どこか他の土地に物見遊山に出かけるこ
とはあったと思うけれど、ここ3年くらい、帰省と仕事を除くと本当にどこにも
旅行に行っていないのではないかと思う。

出不精に加えて、仕事の都合でまとまった時間のとれるタイミングが前もって
わからず、旅行の計画が立てにくいこともあって、どこか別の土地へ遊びに行
くことが、どうしても後回しになる。だけれど、1泊2泊の旅に思い立って出か
けることくらい、できないことじゃない。誰かのせいでも仕事の都合でもなく、
流行り言葉(?)で言えば「努力不足・自己責任」てやつかな。
そのくせ、誰かが旅行に行った話を聞けば「いいなあいいなあ、あたし最近ど
こにも行ってないよー、いいなあ」を連発するのだから世話はない。
でも、旅の土産話を聞かせてくれる人は、「いいなあ」と言われて気分は害さ
ないでしょ。だから持ちつ持たれつなの。

今年のはじめにパスポートが切れたときも、「いつでも旅に出られるようにし
ておきたい」なんて言いながら、どうせどこにも行かないままに有効期限ばか
りが消費されるのが悔しくて、そのままになっている。
でも、やっぱり、旅立ちのときって、ふと突然やってくることもあるから、パ
スポートくらいは作っておこうか、どうしようか、と、今年はずっと迷ったま
まに“ぐずぐず”だ。
試しに新しいパスポートにしたなら、どこにも行かずともせめて“ぐずぐず”
だけは治まるか、ほんのちょっとでも心が軽くなるか、なんて思っている。

こんなぐずぐず出不精には、パスポート取得のため電車で15分弱の都庁に行く
のも、一仕事であるんだけども。

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★DVD
『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』¥3,990
http://bit.ly/38kX4n
短いURLにしていますがAmazonの商品ページにリンクしています。

★コメントくださった方へお返事
・ポポンタ・パンチョス さま
おお!マイケル・ナイマン、お好きですかー。前回の作品をきっかけに、ナイ
マン参加の映画をもっとチェックしようかと思っています。「ゼッタイオスス
メ」があったら、ぜひ教えてくださいね!

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編集・発行:あんどうちよ
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2009年10月16日

ピアノの教則本て、30年経っても変わらないのね

イミもオチもなし、Twitter ででもつぶやいとけよって程度のことですが、
140字ではどうしても説明できなくて、というまったくもってどうでもいいお話。

先日、法事で実家に行ったら、いとこの子どもがうちのピアノを弾いてました。
「ねえねえ、chiyoちゃんの楽譜ある? チェルニーとかブルグミュラーとかやってるの」と言われて、探してみたら昔使った楽譜が案外簡単に出てくるもんです。
彼女は、「同じだ同じだ」と喜んで、私が子どもの頃にピアノの先生に書かれたらしい注意書きといっしょに、楽しんで使ってくれました。

今まで考えたこともなかったのだけれど、30年前に私がやったことと同じことを今の子どもがやってるって、すごいことじゃないでしょうか。
私には子どもがいないけれど、例えば、私が使っていた小学校の教科書を、私の子どもも使えるっていう事態ですよね。そんなこと、どんな教科でもありえないこと。
スポーツでも、よく聞く例を挙げれば、途中で水を飲まなきゃだめとか、ウサギ跳びは膝に負担がかかるとか、研究が進んでそれまでの常識が覆るってことがあります。
それを考えると、ピアノというのは教授法がもうすっかり確立しているのか、それとも教える方法が進化しなくなっちゃってるのか。

もちろん教則本=教授法とはならないわけで、内実は全然違うということも考えられます。
いろんな教則本があって、いろんな先生がいて、私が習った先生と彼女が習った先生が、たまたま同じような選択をしている、という可能性もあります。

一応、ちょっと調べてみたら、やっぱり30年前と比べて、そんなに教則本に種類があるわけでもないようです。
(調べてたら行き当たったこのサイト、面白かった。ツェルニーの特徴とか目的とか始めて知りました。 http://piano-advance.com/index.html )

ピアノのレッスンって、伝統芸みたいなもので、教える方法が進化するとかそういう問題でもないのかもしれないけれど、作曲家は世にたくさんいるのだし、新しいタイプの練習曲を作り出すことは難しくないでしょう。
大人になってピアノをやっていく人は少数派だろうし、クラシックの練習曲にこだわらないでも、ポップスを融合させたものとか、もっともっとバリエーション豊富に練習した方が楽しいんじゃないかしらん。大人が「え、今の子どもはこんな曲でレッスンしてるの?」て驚くようなのがあってもいいんじゃないかと思います。

私は、ピアノを弾かなくなって20年、つい2,3年前まで「ピアノに行かなきゃ、練習してない、どうしよう」と脂汗かいて目を覚ましていたほど、その後の人生で、ピアノとも音楽全般ともすっかり仲が悪くなってしまったから、こんな変な心配をしているのかもしれません。才能や適性もあるでしょうね。

いとこの子どもは、ずいぶん楽しそうにピアノを弾いていたから、こんな心配は無用なのかな。

posted by chiyo at 15:09| 東京 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月15日

No.220 僕がいない場所

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            No.220   09.10.15配信
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タイトル:『僕がいない場所』
製作:ポーランド/2005年
原題:Jestem 英語題:I Am

監督・脚本:ドロタ・ケンジェルザヴスカ(Dorota Kedzierzawska)
出演:ピョトル・ヤギェルスキ、アグニェシカ・ナゴジツカ、
   バジア・シュカルバ、エディタ・ユゴフスカ
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■STORY&COMMENT
孤児院にいるクンデルは、詩人を夢見る繊細な少年。友だちとも教師ともう
まくいかず、孤児院を抜け出し母のもとへと逃げ込む。しかし町中の男をベッ
ドにひきずりこむことに忙しい母は完全に育児放棄している。
置き去りにされた船に住み着き、くず鉄を集めて一人で生きることにしたク
ンデルだが、近所の裕福な家の少女と交流するようになり……

クンデルに興味を持って船に遊びにやってくる少女は、美人で成績のよい姉
に比べて自分は容姿も頭もイマイチ、だから家でも学校でも孤独で、同じよ
うに孤独を抱えるクンデルに親近感を覚えている。
現代の子どもの孤独を描いた秀作ということに、映画の宣伝文句ではなって
いるけれど、「子どもを描いた映画」という感じはあまりしなかった。
これは、私がそう感じたというだけで、他の人がどう感じるのかは、わから
ない。

大人からの愛に飢え、同年代の子どもからのいじめに怯え。それって、子ど
も特有のことではなくて、大人も同じだ。愛されたい人に愛されず、愛して
くれているはずの人の愛も保証されず、誰かにかまってほしいけれど、みん
な自分の生活がいそがしい。相手にしてくれる人は、悪意を持ってからかっ
てくる奴ばかり。

クンデルのように自他共に認める完全な孤独でなくとも、人間関係への不全
感や不安感、自分がひょっとしたら要らないんじゃないかという思いを抱え
る人は案外多い。私もその一人で、何かある度に首をもたげてくるそんな不
全感を、画面のクンデルにシンクロさせながら観て、ポロッと涙がこぼれる
ところもあった。
「人との関係」に敏感な人ほど、「子どもの物語」というより「自分の物語」
と捉える傾向が強いんじゃないかと思う。

「人との関係」にこの物語自体がとてもセンシティブになっていることは、
物語の展開のしかたにも現れている。
いわゆる「ヨーロッパ映画っぽい」淡々と少年の生活を映し出す起伏の少な
い物語だが、ここで少し話が動いてくな、というところに、必ず、誰かとの
コミュニケーションがある。
ずっと否定されることが日常だったところに、肯定や心配の言葉がかけられ
る、少年を覚えていて誰と認めてくれる、そんなところから前半のクンデル
の物語は動き、やがて一人の生活がなじんでくる頃、物語を動かすのは、信
頼や期待のあとにもたらされる他者からの拒否や否定だ。

信頼や期待のあとの孤独の方が、相対的には辛い。孤独を描こうとすると、
他者との関係や、関係を変化を捉えるようになる、てことだろうか。

ここに描かれている「孤独」、観る人によって感じ方は異なるだろう。どう
感じたか、観たらぜひ感想を教えてくださいね!

■COLUMN
この作品、世界的な知名度ではたぶん、監督より、監督の夫である撮影監督
兼プロデューサーより、音楽担当のマイケル・ナイマンがいちばんだろう。

私は今まで、マイケル・ナイマンの音楽を、特別好きだとも、特別気に入ら
ないとも、感じたことはなかったのだけれど、この作品の音楽は、とっても
面白いなと思う。
クンデルの心情を表すんであれば、もっと暗くどんよりとした曲がきそうな
ところ、田舎町のすさんだ風景を音楽にするんなら、もっとさびしくなりそ
うなところ、素朴で優しいピアノの音が響く。画面にくり広げられる物語か
らしたら、ちょっと脳天気に思えそうなほど。

でも、それは物語と合わないというのではなくて、物語へのひとつの解釈、
あるいは働きかけのように感じる。
以下はあくまでも私が感じたことだけれど、クンデルにあるいはあったかも
しれない輝く少年時代を連想させたり、クンデルが味わう現実のそばにある、
ふつうの生活を思わせたり、悲しい思いをそっと拾い上げるかのように音が
鳴ったり。ストーリーや映像で描ききれない世界を、音楽で描いているよう
に、私には思える。

音楽という要素を足すことで、作品の層が厚く、作品世界が深くなっている、
そんな印象を持った。マイケル・ナイマンの関わった作品を、もうちょっと
意識的に観てみようかな、なんてことも、今考えている。

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2009年10月08日

No.219 PARIS-パリ-

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欧 州 映 画 紀 行
               No.219   09.10.08配信
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すっかり間があいてしまいました。ごめんなさい。
一応週刊を目指しているのですが、急に時間がなくなると、
このようにパッタリ配信が滞ることも。
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/ では、
お休みのお知らせをしたり、身辺雑記を書くこともあります。
twitterもやってます。 http://twitter.com/chiyo_a

今後も週刊の「つもり」で書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。

★ もう、これが群像劇の決定版てことで ★

作品はこちら
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タイトル:『PARIS-パリ-』
製作:フランス/2008年
原題:Paris 

監督・脚本:セドリック・クラピッシュ(Cédric Klapisch)
出演:ジュリエット・ビノシュ、ロマン・デュリス、ファブリス・ルキーニ、
   アルベール・デュポンテル、フランソワ・クリュゼ

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■STORY&COMMENT
心臓病で余命わずかと診断されたダンサーのピエール。彼を案じて同居する姉
エリーズは子どもを3人抱えるシングルマザー、もう自分に恋なんかできない
と思っている。歴史学者のロランは、自分の講義を受ける美しい学生レティシ
アに一目惚れしてストーカーまがいのアプローチをしてしまう。
その他、商店の人、通りすがりの人、同僚、などなど。濃かったり薄かったり、
いろんな関わりをする人々の群像劇。

いろんな人にスポットが当たって、エピソードも数々あるから、自分に近い立
場、キャラクターの人、自分が好感を持てる人、など、感情移入する人を選べ
るし、ちょっと引いた位置から、おかしくて哀しくて愛しい人間の所作を眺め
るのもいい。

たくさんの人にスポットがあたるけれど、「主役」と呼んで差し支えないのが、
上記ストーリー説明で出した3人だ。いずれも現状に自己不全感を持ちながら、
何もできなかったり、知らず知らずのうちに諦めたりしている。みんなにとっ
ての「私たち」だ。

私が特に好きなのは、ファブリス・ルキーニが演ずる大学の歴史の先生ロラン。
彼が「パリという都市」の歴史を方々で講義するシーンがあって、このキャラ
クターがタイトルの『PARIS』の骨組みをつくる役割も担っている。
教養番組に出演するほど、仕事では順調に見えるロランだが、テレビ出演自体
が俗っぽいかと怯え、私生活は独身で孤独、家族の中で自分だけが失敗者だと
思いこむ。
そんなロランが講義中に教室にいた女学生に一目惚れ。盗み聞きした電話番号
に匿名でショートメッセージを送るのを日課にしてしまう。彼女からすれば気
持ちが悪い。話だけ聞いたら私もきっと嫌悪感を催すだろう。けれど、彼の側
から観れば、それにはある程度の必然がある。しょうがない、がんばれ、と、
観客たる私は思う。
こういう物語は、ふつうなら理解できないような、幾人もの他人の事情や気持
ちに気を向けることができるから楽しい。

孤独で人づきあいの悪いロランが、実はダンスがすごく上手いというシーンが
あるのだけれど、これによく似たシーンが前に取り上げた『親密すぎるうちあ
け話』
にもあった。ファブリス・ルキーニが、ダンスを披露するのが好きなん
だろうな。

話がそれた。ダンスといえば、ダンスパーティでは、無理無理、踊れない、と
引っ込み思案のエリーズが、好きな人の前で、すごくノリよくチャーミングに
踊るシーンも印象的だった。
何が印象的って、「できないできない」って言いつつ、「私なんか私なんか」っ
て言いつつ、実は、楽しい人、歌や踊りだってやってみたら上手、魅力的、なー
んてこと、現実世界でもよくあるな、と思って。私だってそんな「実は」なと
こ、あるかも、しれない……、んー、あるかな、何とは聞かないでね。

他人の事情を垣間見て、数々の他人がかわいい存在になる作品。
人を好きになりたい秋の夜に、おすすめですよ。

■COLUMN
私がなんかそんな気がする、と思うだけなので、勘違いかもしれないのだけれ
ど、ある時期、4、5年前から、複数の人にスポットをあてて、複数の主役が
いる、その登場人物は、家族同士のこともあれば単なる知り合いのこともあり、
知り合いですらなかったり、でも当人の知らないところでつながっていたり、
という「群像劇」と呼ばれるタイプの物語が増えてきたように思う。(「群像
劇」の定義はそれだけではないと思うけど)

私が思うに、それらは、2001年の9.11以降、より正確にいうと9.11をきっかけ
にアメリカがとった行動に対する反発のなかで、他者に対する「寛容」や文化
や歴史の違う人々の「存在」そういう人々との「つながり」に敏感になること
を大切だと考えた人が、群像劇を採用したからのことじゃないだろうか。
2001年から、さまざまな事件を経て、みんながいろいろ思考して、物語を作り
企画し、完成した作品として世に出てくるのが2004年、2005年くらい。で、少
し遅れて作品が日本に入ってくると。
役所広司や菊地凛子が出演して日本も舞台となった『バベル』なども、そんな
時代の雰囲気をよく表した作品じゃないかな。知らないところでグローバルに
人はつながっているんだよ、と。

その性質上、群像劇は、特定のすごいヒーローやヒロインを登場させるわけで
はなく、ふつうの人の内面を描き出すことになる。そんなタイプの物語が私は
もともと好きなんだけれど、ここのところあまりにも多いので、ちょっと食傷
気味でもあった。
群像劇の観てて楽しいところは、感情移入をさまざまにできるという点にもあ
るが、それより大きいのは、そこに登場する誰のことも、観客がいちばんよく
知っている、というところにあると思う。当人の微妙な感情もよく理解でき、
他の登場人物が、その事情や感情を知らないが故のすれ違いもわかり、そうなっ
たいきさつもすべて、その物語世界で起こったことは、観客だけが仔細に把握
できる。
その全能感が爽快なのだけれど、あんまりそういう作品が多くなると、全能感
は陳腐に感じられるのだ。

このクラピッシュ監督は、それ以前から、なんでもない普通の人たちを複数な
らべた群像劇を得意とする人で、『百貨店大百科』では「皆が主役」が映画の
テーマそのものでもあったし、同じく群像劇を得意とする映画作家アニエス・
ジャウイ+ジャン=ピエール・バクリと組んだ『家族の気分』も、ある親族に
スポットをあて、一人に固定せずに、登場人物それぞれの内面を仔細に描いた
作品だ。

そんなクラピッシュが、ずっと好きで舞台にしてきた「パリ」の名を冠して作っ
たこの作品、都会のちょっと孤独な人々の群像劇の決定版として、食傷気味だっ
た一連の群像劇ブームに一度終止符を打つってことでいいんじゃないのかな、
と思う。
それくらい、群像劇タイプのお手本であり、複数の人を描いても全然散漫にな
らない物語も魅力的だ。

ていっても、人の想像力なんて、誰かの創造力が簡単に超えてくれて「このあ
いだあんなこと言って、すいませんでした!」て作品が、きっとまだまだ出て
くるんだ。それを楽しみに待ってます。

■INFORMATION
★DVD
『PARIS-パリ- (通常版)』定価:3990円(10月8日現在のアマゾン価格:3192円)
http://bit.ly/2qrMut
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2009年09月22日

検索ワードに妄想を膨らます

このblogに、検索ワード「家族といるのにメールしてくる愛人」で、
たどりつかれた方、お求めの情報は見つかりましたでしょうか?

そもそもどんな情報を探していらっしゃったのかしら。
あたしは、いろいろ想像を膨らましちゃいましたよ。

【仮説1】
家族といる時間にわざわざメールをしてくる困った愛人を
どう扱ったらよいのか、その対処法を探していた。

確かにそんな愛人は困ります。
でも、愛人さんの方も、いつなら家族の視線から離れるときなのか、
わからなかったのかもしれませんでしょ。
いつならいいよと、教えてあげないから、ほらぁ、そんなことになっちゃう。

いやいや、愛人さんもしたたかなモノ。自分の都合のいいときだけ
誘ってくるあなたに意地悪したくなって、
ここぞ大事な家族サービスって時を狙ってメールしたやもしれません。
だとすると、このわざわざ狙ってメール作戦は、きっとまだまだ続きます。

こわいですね。

何となくあたしは、
「愛人」が女の人で、「家族といる」方が男の人だと思ってますけど、
逆ってこともあり得ます。
ご飯作って、子どもなだめすかして、寝ころんでる夫に「ちょっと手伝って〜」
て忙しくしていたら、ピロリロリンとあの人からメール……
まあ、このステレオタイプな想像もいかがなものかですが、
どうも絵にならない気がするんですなあ。

【仮説2】
これを検索していたのは「愛人」の方。
家族と一緒の時間にメールを送ってしまい自己嫌悪。
そんなことしてるとうとましがられるだろうかと、検索した。

恋する人は自分のすることにやたら意識過剰になりますもの。
自分の行動が一般的にどう思われるか、と情報を探すことも
あるんじゃないかしら。

世の中連休です。
愛しい人は、渋滞の道路上で、やれ動かん、着くのはいつだと、
渋滞さえもバカンスの思い出になるかのように、家族の時を過ごしています。
週末には会ってはいけない愛人にとって、
5連休なんて死ぬほど長い時間ですね。
Uターンラッシュのニュースを見るにつけ、行楽地の混雑を見るにつけ、
もうさみしくてさみしくて耐えられずにうっかりメールをしてしまいます。
「今何してるの? 今日観た映画面白かったよぉ。今度はいっしょに二度目を観たいな」

こんな鬱陶しいことしたら、嫌われるだろうか。
あ、でも家族サービスに疲れていたところ、逆に喜んでくれたかもしれない??
世間ではどうなのかしら、とgoogleで調べてみる、
なんてことかもしれません。

待ってる愛人さんの立場になると、ちょっとせつなくなります。
自分のしたことを、気にしてるところもハタから見るといじらしい、
え、そんなことありません?

こんな妄想を続けていたら、
ちょっとしたショートショートでも書けちゃうんじゃないかしらん!
創作意欲が湧いてきたとき、あたしの頭に浮かんできたのは

【仮説3】
「家族といるのにメールをしてくる愛人」が出てくるあの映画、
なんだっけ? と思いだすため検索した。

ここは映画を題材にしたblogです。
検索してわざわざここをクリックしたということは、考えてみれば、
映画のタイトル探しだった、なんて話がいちばん現実的ですよね。
あーあ。

急速に想像力の泉が萎んじゃいました。

そんな仮説に気づかず、もっともっといろんな妄想していたかった、
今宵はそんな気分のあたしです。

ちなみに、検索はこんな感じで、
『ソフィー・マルソーの愛人<ラマン>』が探しあてられました。
この映画は「家族といるところに愛人からのメールがくる」とかいう内容ではありませんよ。

ピクチャ 4.png


前回の記事で
メルマガ1回休みなんて言いましたが、
1回といわず、2回3回休んでしまいそう。
こんなくだらない妄想をしていましたが、9月中は、
じゅうぶん時間がとれなさそうなのです。
10月早々には「PARIS」で配信予定です。





posted by chiyo at 00:34| 東京 曇り| Comment(2) | TrackBack(0) | 身辺雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月11日

メルマガ1回お休みです。

全世界200人くらいの「欧州映画紀行」をご覧のみなさま、
いかがお過ごしでしょうか?
(もうちょっといるかな。いるといいな。
発行部数は900ちょっとだもんね)

今週、急にやることがパタパタンと増えてしまって、
ホントは昨日が発行日でしたが、発行がかないませんでした。

んなわけで、1週お休み。
せっかくだから、次回予告でも。

『ランジェ公爵夫人』を観て、
恋愛のシーソーゲームやら、フランス映画らしい会話の重ね合いやら、
とっても面白かったのですが、どうもこの作品について書く、となると、
面白いものが書けない気がして、断念。

でも、ジャック・リヴェット作品にしちゃ短い(137分)し、会話劇、コスチュームプレイの好きな方にはおすすめの作品ですよ。

どうしようかなー、と考えていたら、
セドリック・クラピッシュの『PARIS-パリ-』がDVD発売されていました。
フランス映画祭で観て以来。もう一度DVDで観直すのが、楽しみです。
来週は、『PARIS-パリ-』で書く予定です。

フランス映画祭で観たときの記事はこちら



posted by chiyo at 10:19| 東京 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月03日

No.218 愛おしき隣人

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欧 州 映 画 紀 行
                No.218   09.09.03配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 私たちはみな、外とつながるドアとともにいる ★

作品はこちら
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タイトル:『愛おしき隣人』
製作:スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク・ノルウェー/2007年
原題:Du levande 英語題:You, the Living

監督・脚本:ロイ・アンダーソン(Roy Andersson)
出演:ジェシカ・ルンドベリ、エリック・ベックマン、
   エリザベート・ヘランダー、ビヨルン・エングルンド
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■STORY&COMMENT
ストーリー……、といえるものはない。ある街の住人たちを映す短いスケッチ
の集合だ。
たとえば、夫とケンカしてちっとも仕事にならない学校の先生、誰も私を理解
してくれないとクダを巻く女、いかに虚しい仕事かを語る精神科医、ロックミュー
ジシャンを追っかけ恋する女の子、などなど。

以前に、同じ監督のデビュー作『スウェーディッシュ・ラブストーリー』の回
で私は、若い恋人たちの背景に、うまくいかない人生をひきずりながら、呪い
嘆いている多くの大人たちのことを書いた。
言ってみればそういう人たちが何人も何組も出てくるのが、この作品だ。違う
のは、『スウェーディッシュ…』のときには、そんな人たちが本当に悲しく見
えたけれど、この作品ではもっとユーモラスにかわいく映されることだ。

一つひとつのスケッチ、エピソードは、面白いなと思うもの、共感できるもの、
人それぞれ生まれてくるだろう。もちろんその土台はあるものとして、この作
品の肝は、そのスケッチを映し出す「画」にある。

いくつかの例外を除いて、ある部屋の人、風景が、固定されたカメラで長ーく
捉えられる。フレームに映し出されたシーンは絵画的。私は、エドワード・ホッ
パーの絵を思いだすところがいくつかあった。(短絡的かも?)
長く同じカットが続くから、それを眺めていると、そこで話し動く人だけでな
くて、奥にある無造作に積み上げられた物や、周りの装飾品、後ろにいる人に
も目がいく。単純にインテリアとして興味深かったり、小道具としての存在感
が心をかき立てられたり、ずいぶん凝って作っているなあ、と、気に入った画
は何度も何度も、いろんな<部分>を注目して観たくなる。

この一連の画のなかで、私が気に入っているのは、画面の奥の方にや、横っちょ
にある、「ドア」だ。
ドアじゃない場合もある。単なる通り道だったり、隣の部屋だったり、階段だっ
たり、ということもある。その向こうに人がいて声をかけてくる場合もあるし、
単に、その登場人物がいる空間とは別の空間として見えているだけの場合もあ
る。
そんなわけでいろんな場合があるけれど、私には、疲れてうまくいかない人生
の傍らには、別の世界と関わる可能性があることの象徴に見えたのだ。

その人の世界には、誰かが入ってくる、誰かの声が届く。その可能性がある。
観客たる私も、誰かの人生にコミットできるかもしれない。他の空間に出かけ
ていくこともできる。いかにやりきれない人生も、そこに、こもりっきりには
ならない。別の空間から風が吹き、別の流れが生まれる。そこから出かけて、
別の流れを作り出すこともできる。

奥の方に見えるドアや別の空間や、他人たちは、みんなが一人ぽっちじゃなく
生きていることを伝えている。
だから、ちょっとだけ不穏なものが示されるラストシーンのようなことになら
ないで、と、私は願ってる。

■COLUMN
映画の中でくり返し登場する場所にカウンターバーがある。入り口の方から映
した画、奥の方から入り口を見る角度、そのシーンによって映す角度が異なっ
て、バーの全体像がわかってくる趣向も楽しい。

バーのシーンは、いつもラストオーダーの時間帯だ。「ラストオーダーだよ」
とバーテンダーが鐘を鳴らすと、皆、最後の一杯を注文しにカウンターに集まっ
てくる。夜な夜な日常の憂さを晴らす者たちの、最後の小さなあがきのようで
微笑ましい描写だ。

「ラストオーダーを告げられる」。
地方で高校生をやっていた頃なんかには、それほど夜遊びもできず、そんなシ
チュエーションに憧れたものだったけれど、大人になって相当経った今、私は、
ラストオーダーに、「寂しい」とまではいかない、「きゅんっ」とくすぐった
い気分を覚える。

いっぱいおしゃべりしたけれど、まだ、何か肝心なことを言っていない気がす
る、けれどもうラスト・オーダーか。きゅんっ。
まだもうちょっと飲めそうなんだけど。そうかラストオーダーだし、もう帰ろっ
か。まだ飲めそうなくらいがちょうどいいよ(笑)。きゅんっ。
次の店行こうか、ねえねえ、みんなまだ飲んでいける? 明日早いの? きゅ
んっ。

肝心なことは、次に会ったらきっと思いだすよ、まだ飲めそうでも、健康な体
で日常に帰還しようね。
寂しいと言い切るほどではないけれど、確かに名残惜しく、
もっともっとと駄々をこねるほどではないけれど、別れのあいさつを切り出す
間が一瞬遅れる。
くすぐったい胸の内をのみこんで、帰路の人となり、そして、性懲りもなく次
に告げられるラストオーダーでも、やっぱりちょっとくすぐったいのだろう。

バーテンダーはラストオーダーを告げるとともに言う。
「また明日があるよ」。
そうだね、また明日がある。明日も人生はつづく。うんざりするほどの日常と、
ちょっとの驚きや楽しみものせて、明日もラストのオーダーをできるだろう。
くすぐったい「きゅんっ」も愛おしく、人生は明日もつづく。

■INFORMATION
☆DVD
『愛おしき隣人』定価:4,935円 アマゾン価格 3,909円(9月3日現在)
http://bit.ly/3UuZeQ
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにリンクしています。

☆Twitterやっています
ちょっとしたことをつぶやく<ミニブログ>Twitter。お気軽にフォロー下さい。
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☆コメントくださった方にお返事
melk さま
おっ、色鉛筆ファン仲間ですね!
購入はふみとどまっても、まだわくわくできるのが、色鉛筆のいいところ、で
すよねっ。(と自分に言い聞かせています)

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