2009年08月11日

totoの理念を伝えるには。あるいは「育てる」という言葉のオールマイティ

Jリーグ中継を見ていたら、
ピッチまわりの広告「スポーツは、育てるものだと思います」という文字が目に入った。
「聞き覚えあるけれど、なんだったけか?」
後で調べてみると、totoの広告だった。

こことかこことかに書いてあることをまとめてみると、
totoは、サッカーくじ、6億円といったイメージは定着したけれど、
収益金で学校のグラウンドの芝生化、地域のスポーツクラブの支援などを
行っていることは周知されていないから、
それを知ってもらうためのキャンペーンコピーのようだ。

そうしたいまいち知られていないtotoの事業理念を伝える人として
元サッカー日本代表監督のオシム氏を選び、彼からの「メッセージ」が、
「スポーツは、育てるものだと思います」なのだ。
その意味は、要約してみると、
「スポーツは、体力や精神力、社会で必要な忍耐力や協調性を育てる。
そして、そのスポーツは、人が育てる必要がある」

んー、totoのことは何にも言ってない。
理念自体は素晴らしいと思うけれど、
当初の目的である
「totoの収益金がスポーツを育てることに役立っていることのアピール」
にはなっていない。
そのメッセージコピーを見た私たちがどうしたらいいのか、
何を考えたらいいのか、もわからない。

スポーツは人を育て、人がスポーツを育てる、という
美しい理念のすべてを伝えたくなって、あれもこれも言いたくて、
つまりは、ああもとれる、こうもとれる、「含蓄」のある言葉を選び、
結局、ぼんやりした言いたいことのわからないフレーズだけが横断幕として宙に浮いている。

比較する必然性はまったくないのだけれど、
たまたま何となく似たコピーだったから引いてみる。

「観ることが、育てること」
これは、劇作家の平田オリザ氏が主催する「こまばアゴラ劇場」の
「劇場支援会員」
募集のためのコピーだ。
理念はわりに似ていて、このコピーで言いたいことがはっきりしている。
会員になって(年間1万円で7枚鑑賞チケットがもらえる)
演劇をたくさん観て育ててね、と言っているわけだ。

いい考えがあるときには、ついついいろんなことを詰め込みたくなるけれど、
そのメッセージを受け取る人は、概してそんなにヒマじゃない。
他人の考えを受け取る準備が常にできている人なんてほとんどいない。
だから、下品にならない程度にわかりやすく、メッセージは発信した方がよくて、
そのためには、素敵な考えや美しい理念や涙のサイドストーリーがどんなにあっても、
それらを伝える量が減ること覚悟で、言いたい内容は絞らなきゃならない。と、私は思う。
totoのメッセージを作った人は、そこまで考えなかったのかなぁ。
いろんな人が関わって、アピールの場所も機会もあって、ちょっともったいないな。


@@@@
この2つのコピーを見て、ふと思ったのは、
「育てる」て言葉はずいぶん「いい言葉」だな、ということ。
大きくなっていく、ポジティブのイメージが中心にあって、
だからといって「成長する」のように「企業の成長」というような場合の「計算高さ」がなく、
「無償の行為」の真面目さ・誠実さが感じられる。

意識を育てる、街を育てる、などなど、比喩的にも使いやすくて、
直接・間接にも「育てる」行為をまったくしない業界というのもないから、
「育てる」とは一見関係なさそうなところで、
PRコピーに使うと、よさそうな言葉じゃないかな。




posted by chiyo at 16:20| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 言葉について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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