2011年03月31日

No.241 17歳の肖像

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欧 州 映 画 紀 行
               No.241   11.03.31配信
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毎回このメルマガを読んでくださっている方の中には、
この度の大震災で被災された方、ご家族や近しい方が被災された方も
いらっしゃるかと存じます。
亡くなられた方のご冥福をお祈りし、行方不明になられている方、
今、日常の生活を奪われている方が一刻もはやく平穏な生活に戻られることを
お祈りしております。

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ ほんとの教育って? ★

作品はこちら
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タイトル:『17歳の肖像』
製作:イギリス/2009年
原題:An Education 

監督:ロネ・シェルフィグ(Lone Scherfig)
出演:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー、
   ロザムンド・パイク、オリヴィア・ウィリアムズ
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■STORY&COMMENT
1961年、ロンドンの郊外。もうすぐ17歳になるジェニーはオックスフォード大
学進学を目指す優等生だ。勉強のプレッシャーと退屈さに苛まれながら、自室
ではシャンソンを聴き、文化と自由のあふれるパリへの憧れを募らせていた。
そんなある日、倍以上年の離れたデイヴィッドに出会う。教養あふれ楽しい会
話のできるデイヴィッドにすっかり恋をしてしまい……

私は知らないが、リン・バーバーというジャーナリストが自分の若い頃を振り
返った手記が原作だという。正直にいうと「だから実話っておもしろくないん
だよ」が私の最初の感想。その部分的な「おもしろくなさ」は後で説明すると
して、せっかく美しくて頭のよい女の子が、危ないプレイボーイの手におちて
いく様子は、居たたまれなくてハラハラして、引き込まれた作品だった。

「オックスフォードに入るためのことなら、何でもやればよい。チェロもその
一つ。だがフランスの歌なんか聴くんじゃない。苦手なラテン語をもっと勉強
しろ」厳しい父親のもと、窮屈な毎日を送っていたジェニーは、デイヴィッド
と時を過ごすことに夢中になる。
クラシックやジャズへの造詣が深く、美術作品についても自説を語れ、何でも
ないおしゃべりも洗練されている。友人カップルの女性はおしゃれの手ほどき
をしてくれる。コンサートに出かけ、一流のレストランやバーで食事を楽しん
で。年齢を重ねて会話のうまいデイヴィッドは、両親ともすぐに打ち解けて、
彼らの警戒心を解いてジェニーをあれやこれやと連れ出す。

私の17歳の頃はもっともっと子どもっぽかっただろうと思うけれど、19か20歳
の頃だったら、と考えたら、ああ確かに夢中になってしまうかもなあ。こんな
ヨーロッパの映画を観て文章を書くメルマガを発行してる私。当然、若い頃は
特に文化的自意識が強くて「文化的に洗練されている」ことは絶対に必要なこ
とだった。そんな「洗練されている人」から認められ愛されることも、うれし
くてしかたのないことだっただろう。
多少アヤシイことには目をつぶり、背伸びを続けてソフィストケイトされた世
界の住人になることで頭の中はいっぱいになるジェニーの心はよくわかる。バ
カな女の子だな、という反応もあるだろうけれど、私は他人事と切って捨てら
れない。

もう何年かしたら自由へと拓いていく鬱屈した自体の雰囲気、ファッションも
あわせて楽しみながら、少女の皮肉な成長をドキドキしながら眺める。ジェニー
の行く末が怖くて、それを眺めている自分の視線がイジワルにも感じられる。
不思議な感覚で楽しめる作品だと思う。

■COLUMN
デイヴィッドと仲睦まじくなるにつれて、当然、成績もあやしくなり、学校で
はお金持ちの大人の男とアバンチュールを楽しんでいるとすっかりウワサの的
となり女生徒たちは大騒ぎ。目をかけていた教師は心配して忠告する。

すっかり大人になった気分のジェニーはぶ厚いレンズのメガネをかけた教師に
威張りくさった言葉を浴びせる。
「勉強勉強と努力を重ねた末にたどり着く人生は、つまらない勉強をまた教え
ることなのか。私はジャズを聞き美しい物を見て、勉強した。そんな洗練され
た物を味わう人生のがいい」まあ、全然言葉通りではないのだけれど、こんな
感じだ。
勉強して教養を身につけるよりも、現場でいい物美しい物良質な物を実際に味
わう方が教養になるだろう。勉強するよりも、容姿とふるまいを磨いて、それ
だけの洗練されたものに触れられる人(=金持ち)と結婚する方がどれだけ幸
せで教養高いことか、とも言いたいようだ。

校長にも啖呵を切る。「今後私のような疑問を持つ生徒は必ず出てくるだろう。
それに学校はきちんとした答えを出すべきだ」。

生意気な若者の失礼な物言いなのだが、私も、地味な勉強を続けることに、同
じように疑問を持つ生徒は確かに出てくるだろうと思うし、若者を育てる教育
者はそれに対して納得できることを答えようと努力して当然だと思う。
今現在の日本だって、どっちかと言ったら、女の子は「見る目」を養ってそれ
なりの男と出会うことを重視して、そうするようにいざなっているじゃないか。

ジェニーが生意気に教師に立ち向かったシーンはとても印象的だが、結局、こ
の作品は少女の疑問に答えていない。
結末を言わなくてはいけなくなるので、なぜ「答えていない」と思うのか、を
説明できなくて歯がゆいのだが、せっかく面白い視点があるのにそれを回収し
きれていなくてもったいないと、私は思う。

この作品の原題は『An Education』。
直接的には、男に夢中になった少女が、その経験から受けた教育という意味だ
ろう。副次的には、教養や美意識、センスが身についた、デイヴィッドから受
けた教育があり、ジェニーが疑問を持ちお高くとまって鼻で笑った学校の教育
がある。
せっかく多重的に「教育」を入れ込んでいるのだから「教育て何?」という裏
テーマもきっちり組み立てて欲しかった。完全にフィクションならば、テーマ
を優先してエピソードを作り出すこともできるけれど、実話なら仕方がない。

「だから実話っておもしろくないんだよ」という最初の感想の正体はこれだ。

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