2011年10月04日

No.244 エリックを探して

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欧 州 映 画 紀 行
               No.244   11.10.03配信
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タイトル:『エリックを探して』
製作:イギリス・フランス・イタリア・ベルギー・スペイン/2009年
原題:Looking for Eric

監督:ケン・ローチ(Ken Loach)
出演:スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、
   ステファニー・ビショップ、ジェラルド・カーンズ、
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■STORY&COMMENT
プレーはもちろん、その言動でもファンや敵を多く作ったサッカーの大スター
エリック・カントナとのコラボレーションによるコメディ。
イギリス・マンチェスター。郵便配達員のエリックは、二度の結婚に失敗し、
二度目の妻の連れ子である二人の息子にはバカにされきっている。彼の楽しみ
は職場の仲間たちとバーでひいきのマンチェスターユナイテッドの試合を観る
こと。部屋には往年のスター選手エリック・カントナのポスター。日頃のグチ
をカントナのポスターに向かってブツブツとなえるしょぼくれた中年だ。
そんなある日、まだこっそり愛している最初の妻と顔を合わせることになり、
悩む彼のもとに突然カントナが姿を現すようになったのだ。

細部にはこだわらないで、軽く軽く観られる楽しいコメディ。「しょぼくれて
るあなたも人生は変わるよ、変えられるよ、ただちょっとの勇気を持てば」と
いう、「よくある」と言っちゃあ身も蓋もないかもしれないが、安心して観ら
れる「人生好転コメディ」だ。
「労働者仲間」の絆が大活躍するというケン・ローチらしい希望の在り方も、
あり得ないと言えばそれまでだけれど、そういうことがあってもいいんじゃな
い?と笑顔で言えるすがすがしさがある。

このままでよくはないだろうとは思っているけれど、なんだかんだと言い訳を
しながら行動できないでいる多くの人にとって、主人公を応援する気持ちも、
主人公の気持ちを考えることもたやすく生まれてくる作品だろう。

ただ、変わりたいけど変われないでいる多くの人と、エリックが異なっている
のは「信心」のようなものだ。ここでいう信心とは宗教ではなくて、エリック・
カントナという絶対的に尊敬する人がいるということ。
夜な夜なポスターに話しかけているうちに、カントナが現れるのだが、そんな
カントナと会話できるのは、エリックが絶対的にカントナを敬愛しているから
だ。だから、おそらく、この作品をみて、「よし、自分もちょっと勇気をもっ
て踏みだそう」なんて思っても、実は何かへの「信心」がないと難しいってこ
となのかもしれない。
前述のケン・ローチにとっての「労働者仲間」への信心も似たようなものだ。

うんうん、そうだね、言い訳ばかりしていないで、ちょっとがんばって一歩踏
み出したら、何かが変わるかもしれないね、というさわやかな後味のなかでも、
「私にはそこまでの信心が何かあるだろうか」と考えないでもいいことを考え
てしまった。

カントナの現役時代のスーパープレイ集が随所に。サッカーファンはそれだけ
でも楽しめるだろう。同時に、サッカーをよく知らなくても物語を楽しむのに
はなんの支障もないですよ。

■COLUMN
何かをしようと思ってもなかなか実行できなくて、そんな自分を変えたいけれ
ど変えられない。それぞれ個人のなかで程度や目指すものは違うだろうけれど、
たいていの人がそんなことを考えているだろう。(そして自分以外の人は決意
を実行にうつせるすごい人に見えてたりする)
こういう映画が成り立つってことは同じ思いを皆が共有しているんだろう。

私も間違いなくそういう人の仲間なんだけれど、それがどこかで屈折してこじ
らせていていけないなあ、と最近思う。
私の問題というのは、「言い訳」を、自分で自分を非難して痛めつけて、「こ
ういう風にツラくあたってるんだから赦される」に見つけてるところだ。

的外れかもしれないので、「なんとなく想像できる」程度の話で、話半分に聞
いていただきたいのだけれども。
たとえば、そんなことで命を落とすわけではない傷を手首につける人がいて、
いっぱい食べちゃったことを後悔して後で食べた物を吐く人がいる。
そんな人たちは、そうやって自分を罰していれば、ダメな自分でもそこにいて
もいいような気がしちゃうんじゃないかな、と思う。手首を切って人の注目を
浴びたいのよ、なんて非難も受けるけど、本人はダメな自分を罰してるってと
ころもあるんじゃないかな。太りたくないから食べる物を減らしたい、て場合、
吐き気でいやな思いをすることが食べてしまった罪滅ぼしになってるんじゃな
いかなあ、と私は想像するのだ。
そうやって自分を罰することで赦されて、やっと何かのバランスを勝ち得て暮
らしていける。

私は現実に体は痛めつけないけれど、心の中で自分を罵倒して精神的に痛めつ
ける。
できないこと、実行ができないこと、を、ちゃんとこんなに責めたんだからOK。
「これでよし」て思ってないんだから、ちゃんと罰を与えているから大丈夫で
しょう、赦してもらえるでしょう。そうやって心の中で自分を自分で痛めつけ
て相殺しようとする。

いったい誰から赦してもらいたいんだか。

それはそれで私の身の守り方ではある。
身を守ることは大事だけど。
長い目で見ていいことないのね。自分自身の非難に奮起するんじゃなくてただ
ただ疲弊して、自信はどんどんなくなるし、卑屈になるし。自尊心もなくなっ
ていって、その割にはけちくさいプライドばかりが鼻につくようになる。

これをしたんだから相殺みたいな、足し算や引き算、もしくは自分との取り引
きめいた考えは、続けないほうがいいんだろう。
自分がどこまで変われるのか、「変わらなきゃ」より「変わっていくのが楽し
みだな」とのんびり構えるくらいがちょうどいいのかな。

ややこしいコラムを書いてしまったけれど、映画はほんとうに、さらりと軽く
あったかいハッピーエンドのお話ですよ。

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★コメントくださった方へご返信
・渋木 さま
ほんとにお久しぶりです。音沙汰なくてすみません。
「楽しみです」と声をかけてくださるのがとてもうれしくて、それに応えたい
なあといつも思ってはいるのですけど。
おっしゃる通り無理せずマイペースで配信していきますので、これからもよろ
しくお願いしますね!

・meik さま
素敵な感想をありがとうございました。読んでくださった方が、私の気持ちと
どこかで波長が合う瞬間があるんだなあと思うと、書くのがまた楽しくなりま
す。
気が向いたらぜひまた感想を送ってくださいね。波長が合うときばかりでもな
いでしょう、「今日のはなんか違うー」ていう感想でも、いろいろ聞きたいなー
と思っています。

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編集・発行:あんどうちよ
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