2012年03月29日

No.247 ソフィアの夜明け

================================================

欧 州 映 画 紀 行
               No.247   12.03.29配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ どこかで見たような、しかしどこにもなかったような ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『ソフィアの夜明け』
製作:ブルガリア/2009年
原題:Iztochni piesi 英語題:Eastern Plays

監督・脚本:カメン・カレフ(Kamen Kalev)
出演:フリスト・フリストフ、オヴァネス・ドゥロシャン、
   サーデット・ウシュル・アクソイ、ニコリナ・ヤンチェヴァ
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
ブルガリアのソフィア。38歳のイツォは木工技師。アーティストとしては挫折
中で薬物から抜け出すべく治療を受けている。ある日、トルコ人家族が若者グ
ループに集団で襲われているところを助けに入った。その一団には、しばらく
会っていなかった17歳の弟ゲオルギの姿が見えた。
閉塞感たっぷりの日常のなかでもがく人々が、そこに風穴をあける何かを見つ
け出せるのか。淡々と小さな変化を追う物語。

ブルガリアの映画というのは、ここで取り上げるのがはじめてだと思う。「ブ
ルガリア」らしい景色を観ようと思うならば、あまりおすすめはできないだろ
う。ローカルな特色よりも、とりあえず今日明日食べることには困っていない
けれど、自分の置かれた状況にも自分自身にも納得できずにいる「現代の都会
の閉塞感」が画面の大半を占めているからだ。グローバルに共通の景色だ。
ただし、それは、たとえばパリのエッフェル塔やロンドンのタワーブリッジな
ど、その都市といったらコレというような観光名所を知らないために、アイコ
ンとなるようなものが映りこんでいても「ソフィアだ」と認識できないだけか
もしれないけれど。

アートの世界でうまくいかない、薬物から抜け出すのが辛くてつい昼間からビー
ルを飲んで、恋人ともなんだかうまくいかないイツォ。家ではうるさくいわれ、
気が進まずとも仲間の集団に入らなくてはやっていけないゲオルギ。外国人を
襲う若者集団が裏では右寄りの政治家に操られているということなども含めて、
ストーリーや要素というのは、正直にいって、どことは定かでないけれどどこ
かで見たような気がするようなものでもあった。

そうは言ってもなんだか「ああ二番煎じ」と切って捨てられはしない魅力がこ
の作品にはあって、それは何だろうなあと考えていたんだけれど、「ああこれ
だ!」という答えには出会わない。
「こういうことなのかもしれないなあ」というものを言えば、
ひとつには、イツォが助けたトルコ人家族の娘ウシュルに惹かれていったり、
イツォとゲオルギが少しずつ家族らしく交わっていくなど、どうしようもない
閉塞感からに風穴があいていく希望がすがすがしいということ。ただ、閉塞感
に満ちた映画というのは、たいていそこから生まれゆく希望が描かれるもので、
決定的な理由ではないだろう。だから、より大きな要素は次のところにある。

描いている日常風景が、とても自然で、会話シーンもことさらに物語の展開を
進めるようなものではない。日常のごくありきたりのシーンが多い。ドキュメ
ンタリーを撮るかのように、たまたま切り取った日常の風景に、どこにでもい
る誰かがいるような印象を受ける。
その自然なシーンを度々目にして、登場人物の事情が少しずつわかっていくに
つれ、なんとなく映画のなかの彼らに話しかけたくなるんだな。家でのごちゃ
ごちゃに嫌気がさしている若いゲオルギにも、ついビールを飲んでるイツォに
も、異国での出会いに両親から理解を示してもらえないウシュルにも。「それ
はさー」なんておせっかいをして介入したくなってしまう。

そんな自分の日常に重ね合わせられる感覚、話しかけたくなるリアルさが、
「どこにでもある映画」にはならなかった理由かなー。

■COLUMN
自意識過剰といわれそうだけれど、自分の生活が映画のように(ここでいう映
画というのは、この作品に近いような、ドキュメンタリーのように何でもない
日常を切り取った映像)誰かに見られていたらどんな感想を持たれるんだろう、
と思う。

だいたい私も現代の閉塞感のなかで何かが違う、何とかしたいと思いながら何
もできずにいる脆弱な都会人で、私のような生活は誰にとってもろくなもんじゃ
ないだろうと思うけれど、人と話すと、私にとっては何でもないことが「いい
なあ」と言われることだったりする。
それは、全部を見ないでたまたまある部分を切り取って見るからでしょ。内情
もいっしょに見たらそんなことないでしょ。なんて当人は思うこともある。早
い話が、「あたしだってラクしてばっかりじゃないのよ、のほほんとしてるばっ
かりじゃないのよ」と小さく憤慨しているのだ。
だから、もうちょっとありのままの生活を人が見たなら、どう思うんだろう、
と考えるわけだ。

そう考えはじめると、不思議なもの。
「いいなあ」と無責任に(と当人は思うわけだ)言われるのがちょっぴり心外
だからこそ、映画みたいにもっと私の冴えない生活が他人にさらされたらその
つまらなさがわかってもらえるだろう、と発想していたのが、「つまらない」
と思われるより、ほんのちょっとでも、部分的でも「いいなあ」と思われると
ころがないかなあ、と考える。

そうすると、この生活を誰かがカメラを回して見ているとしたら、と考えるこ
とは悪いことじゃないように思える。ちょっぴりでも、ある一面でも「いいな
あ」と思ってもらえるような生活にしたいな、と上向きに考えられるから。

---------------
メルマガ版ではこの欄を入れないで配信してしまったっ……
★DVD
『ソフィアの夜明け』¥ 3,024
http://amzn.to/H2XuzK

価格は2012年3月29日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B247

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chiyo_a

全体の内容に変更を加えない「転送」は自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2012 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 20:01| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック