2012年07月27日

No.249 フランス、幸せのメソッド

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欧 州 映 画 紀 行
            No.249   12.07.26配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 無理解と不寛容と住む世界の壁の向こうに ★

作品はこちら
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タイトル:『フランス、幸せのメソッド』
製作:フランス/2011年
原題:Ma part du gâteau 英語題:My Piece of the Pie

監督・脚本:セドリック・クラピッシュ(Cédric Klapisch)
出演:カリン・ヴィアール、ジル・ルルーシュ、オドレイ・ラミー、
   ジャン=ピエール・マルタンス、ラファエル・ゴダン
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■STORY&COMMENT
長年働いていた工場が倒産し、失業してしまったシングルマザーのフランス。
ショックのあまり自殺未遂騒ぎを起こしてしまう。工場の仲間や家族に支えら
れ、奮起してパリで家政婦の仕事に就くことに。働く先は、羽振りの良い金融
トレーダー、ステファンの家。
大金持ちの金融屋で独身貴族のステファンと、工場労働者で3人の娘を一人で育
てるフランス。価値観も住む世界も違うけれど、しだいに妙にウマが合って……

いったい、誰だ。こんな脳天気な邦題つけたヤツは。

この映画では最終的に誰も幸せになんかならないし、むしろ世の中が無理解と
不寛容とでできていることを噛みしめるような作品だ。その噛みしめたところ
から、観客が心のなかで、無理解はほんとうに無理解で終わるしかないのか、
幸せには一筋縄ではいかないいろいろな形があるんでないのか、などと考える
ことは可能だし、たとえばフランスの達観したような笑顔でストップするラス
トの画から、希望を見出すことも、作り手の希望を受け取って欲しいとのメッ
セージを読み取ることもできる。
だがしかし、厚かましくもタイトルで表現することじゃあないだろう。

と、まあ文句はここまで。

ステファンというのは実に鼻持ちならないヤツで、お金は持っているから気前
はいいが、「人の心」ってものをさっぱりわかっていない。で、「わかりやす
い悪役」かと思いきや、そういうわけじゃなく、フランスのなんでも素直にぶ
つかっていく人柄に触れて、ステファンのキャラクターは、ちょっとずつ変化
していく。もしくは、観客には変化が訪れているように見える。
ステファンのように「人の心なんて知ったことか」な人も、金融界の上っ面の
人間関係に心を疲弊させてたりするわけで、出会うはずのなかった「住む世界
の違う」人が出会ったことによる素敵な化学変化が起きるのか……なんてワク
ワクとその後の進展を見守っていると。

そううまくはいかないんだ。

途中から事態は急展開。ああ、世界の両極端の住人はやっぱり理解し合えない
のか。世界で分ける大きなパイを、取り分多く持っていった者が全てを動かす
のか。

ネタバレせぬよう、皆までは言うまい。
「住む世界は違えていた方が平和だ」、「大金持ちと親しくなれるなんて浅は
かな夢を抱くフランスはバカだ」、「それでも連帯は美しい」
いろいろなメッセージを受け取る、もしくは自分のなかから呼び覚ますことが
できる作品だ。
各場面、細かい心の動きがよく伝わってくる、ていねいな描き方が終始心地よ
い。

誤解のないようにつけ加えておくと、決して重苦しい作品じゃない。コミカル
な場面がふんだんにあって、どの登場人物も人間くさくて、楽しめる一品。
私にとっては『しあわせの雨傘』『美しき運命の傷痕』なんかが印象的だけ
ど、カリン・ヴィアールという女優さんはずいぶん器用なんだなあ、とこれを
観てさらに印象を新たにした。

■COLUMN
セドリック・クラピッシュという監督さんは、かなり好きで、新しい作品がやっ
てくるとだいたい観ている。脚本も自分で書くことが多い映画作家で、どうし
ても物語の筋やら会話やらに重点を置いて観てしまう私としては、脚本のファ
ンなのかもしれない。

毎度毎度、コミカルに、でも人間心理を掘り下げるように描く作品群は、私の
好きなタイプの典型と言っていい。外国の作品だと、ヴィヴィッドにその風俗
や社会状況がわからないこともあって、こちらが気づけない細部があるだろう
と思うけれど、この人の作品は、ちょっとした喜劇を描いていながら、割と社
会状況を意識した内容が多いように思う。

『百貨店大百科』では傾いたデパートの再建をテーマに、『猫が行方不明』
はちょっと孤独で心を閉ざしがちな都会の「カタカナ職業」女性が、地域の人
たちとの交流やネットワークに楽しさを見出し『スパニッシュ・アパートメ
ント』
では、ひとつになるヨーロッパを描き出す。

どれも経済ニュースやひょっとしたら「白書」やらのネタになりそうなもので、
一人ひとりの身近な生活に影響を与える「社会」をつねに考えているのだろう。
その分、私などは、改めて考えるとずいぶん身につまされることも多い。『ス
パニッシュ・アパートメント』の続編『ロシアン・ドールズ』では、しがない
ライターになった主人公が、世の変化に合わせて英語で書かなくちゃならなく
なっていて、しがないライターで英語のできない私はビクビクするわけで。

仲間の手助け、人と人との力の合わせ方、なんかも、クラピッシュが「それで
も信じている」というものなんだろう。『猫が行方不明』でご近所のネットワー
クで主人公が変わることも、『百貨店大百科』でも、デパートの再建案の基本
は従業員が家族であり仲間でありして職場を活性化することだった。
この『フランス、幸せのメソッド』では、内容としては少ないけれど、要のと
ころで効くのは「フランスが勤めていた工場の仲間の力」だ。

みんなで力を合わせたり、人とうまいことつき合うのが下手だから、一人マイ
ペースの時間をつくりやすいフリーランスをやっている私は、こういうのもひ
じょうに身につまされる。ピンチのときに助けてくれる仲間、何はともあれ味
方になってくれる仲間……、私には未知の領域。

社会の閉塞がいろいろ言われているけれど、こんな社会を生き抜いていくには、
そうだね、ご近所、職場、など、物理的に近いところにいる人の力が、確かに
必要なのかもしれない。むむ、この先、どうする? 己を省みて己の明日を思
う私だ。


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Posted by 海外映画DVDマニア運営事務局 at 2012年08月31日 15:56
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