2012年12月28日

No.245 唇を閉ざせ

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欧 州 映 画 紀 行
                 No.254   12.12.28配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 信じて立ち向かう。悲劇の8年後のサスペンス ★

作品はこちら
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タイトル:『唇を閉ざせ』
製作:フランス/2006年
原題:Ne le dis à personne 英語題:Tell No One

監督・共同脚本:ギョーム・カネ(Guillaume Canet)
出演:フランソワ・クリュゼ、マリ=ジョゼ・クローズ、
   アンドレ・デュソリエ、クリスティン・スコット・トーマス、
   フランソワ・ベルレアン、ナタリー・バイ、ジャン・ロシュフォール
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■STORY&COMMENT
妻のマルゴと湖畔を訪れたアレックスは、突然何者かに殴られ、湖に沈められ
る。アレックスは奇跡的に助かるが、マルゴは惨殺死体で発見された。
その8年後、アレックスの元に、見知らぬ送信者からメールが届く。リンクには、
どこかの町の防犯カメラと思われる映像に映る少し年を重ねたマルゴの姿。ア
レックスは調査を開始するが、その頃マルゴの死体が発見された場所から新た
な死体が発見され、警察が疑いをかけたのはアレックス、そして、どうやら別
のグループもアレックスを狙っているようで……

「ふーん、ギョーム・カネの監督作品かー」と、録画をしておいたのがだいぶ
前。どんなストーリーなのか、サスペンスであることも何も予備知識なく観て、
予想外に夢中になった。サスペンスであることくらいはタイトルから気づいて
おけ、と振り返れば思うけれど。

妻が殺され、以来、孤独に過ごしてきた医師アレックス。謎のメールでもしや
マルゴは生きている? と8年の後にまた悪い思い出を引っかき回されて、それ
だけでなく、警察には疑われ、警察に疑われるように陥れる誰かもいる。
アレックスだけでなく、観客もさっぱり訳がわからず、アレックスといっしょ
に何が起きたのか知りたいと前にのめり、しだいに加速・加重していくチェイ
スからは、きゃんっ怖いと逃げたくなる。
寡黙なアレックスのキャラクターは、ひょっとしたら、本当はこの人は何かに
関わっていてミスリードしているんじゃ……なんて思わせる雰囲気もあって、
観応えに味をつける。
カーチェイスみたいな派手なものではなくて、高速道路や市場を走って走って
追っ手をまいて、という泥くさい逃げ回り方もいい。

なんでもない個人に起きた小さな(当人にしてみれば、まったく小さくはない
のだが)悲劇だと思っていたものが、大きな大きな社会の渦に絡め取られたも
のだったと、しだいに明らかになっていくスリリングなストーリーだ。予算を
かけた大作ドラマが盛んに放映され、華やかな映画の封切りも話題になる年末
年始だが、そんな時期に観ても壮大でドラマティックなサスペンスだと思う。

字幕で細かいセリフが反映されないこともあって、登場人物が誰が誰やら、人
物同士がどんな関係にあるのか、ちょっとわかりにくい。前半の方は、よく注
意して観ておくのがおすすめ。

■COLUMN
回想シーンが時折はさまれて、アレックスとマルゴのカップルは、子どもの頃
から仲が良くて、初恋(かどうかはわからないが)で結婚したらしい。

不鮮明な映像から「マルゴは生きている!」と思い、警察もなんだかわからな
い追っ手も的に回して、「マルゴを守るため秘密なら守らなくては」とばかり
に、一人逃げ戦うアレックス。
「8年の沈黙の後、何故にそんなに急展開を信じられるのだろう」と部屋でぬく
ぬくとリアリズムを弄ぶ私などは思ってしまうが(このあたりは、伏線もあっ
て後でわかるところもあるけれど)、小さい頃からずっとずっと一緒にいるか
らこそ、強く信じられるものがあるのだろう。

だから、サスペンスであると同時に、これは固く信じ合っている男女の愛の物
語でもある。昨今安易に使われるためになんだか使いづらくなってしまった
「絆」という言葉が、よく似合う関係だ。
そうしてこの作品をながめると、「いったい私はこんな風に人を信じ抜けるも
のだろうか。」なんて気持ちがわいてくるが、そこをどんどん考え出したら、
今度は己の心のサスペンスに入り込む。
よぶんなことは考えずに、作品の面白さに心をゆだねるのがよいのだろう。

……
頭を使わなくても面白い、自然と家族やパートナーのことを想う、年末年始に
ふさわしい一作。べつに12月〜1月の季節感ある物語ではないけれど、この時期
に滑り込みで取り上げることができてよかったかな、と思っています。
今年も、時間のできたときに「ちょろっと」ペースの配信しかできませんでし
たが、1年ありがとうございました。きっと来年もこんなペースだと思いますが、
よければおつきあいください。
それでは皆様、よいお年を!

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★コメントくださった方へご返信
渡辺 さま
大々的に宣伝されるハリウッドの大作と違って、ヨーロッパやその他の国の作
品には独特の味がありますよね。私もたまたま自分が観たもののことしかお届
けできないので、面白い作品がありましたら、どうぞこちらこそ、教えてくだ
さい!

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感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
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