2015年05月17日

No.264 100歳の華麗なる冒険

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欧 州 映 画 紀 行
               No.264   15.05.17配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
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フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 百年の荒唐無稽 ★

作品はこちら
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タイトル:『100歳の華麗なる冒険』
製作:スウェーデン/2013年
原題:Hundraåringen som klev ut genom fönstret och försvann
英語題:The Centenarian Who Climbed Out the Window and Vanished

監督・共同脚色:フェリックス・ハーングレン(Felix Herngren)
出演:ロバート・グスタフソン、イヴァル・ヴィクランデル、
   ダーヴィッド・ヴィーベリ、ミア・シャーリンゲル、
   イェンス・フルテン
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■STORY&COMMENT
スウェーデンの田舎町。アランは老人ホームで100歳を迎えた。ホームの職員たちが忙しく誕生日パーティーの準備をする中、一人部屋で考え事をするアランだったが、ふと思い立ち、部屋の窓から抜け出してあてのない旅をはじめる。
行き着いたバスターミナル。風体のよくない若者にスーツケースを持たされるが、発車ベルに急かされてアランはそのままバスに乗ってしまう。しかし、このスーツケース、どうも大変なシロモノらしく、ギャングに追われる身に……

いやいや、賛辞としての「荒唐無稽」がたっぷりつまった楽しい映画だった。何度も声を出して笑ってしまった。

消えたスーツケースを追って、少々頭の足らないギャングたちが、アランの行方を必死に探し回る、その展開と交互に、アランが生まれてからこれまでの人生を振り返るシーンが挟まれていく。
はじめは、「100歳になって認知や判断が遅くなったおじいちゃん」くらいに思っていたところが、その人生を振り返るや、スペイン内戦、第二次世界大戦、東西冷戦、現代史のあらゆる重要なシーンに、ひょんなことからひょこひょことひょうひょうと顔を出す仰天な人生なのだ。

ギャングとの追いかけっこにしろ、アランの生涯にしろ、そこで繰り広げられるユーモアは、かなりブラックだ。だから観客を選ぶ作品だとも思うが、私は、ここまで荒唐無稽にスケールを広げてくれるおかげで、散りばめられたブラックなシーンを楽しく笑い飛ばせた。

原作本はスウェーデンでミリオンセラー、40ヵ国以上で800万部売れた新人作家の小説だそうだ。日本でも売れ行きが好調で、翻訳しているのは、難解な作品の翻訳を好むという、あの柳瀬尚紀氏だというから、原作本も読んでみようかと思っている。
映画の中では、時間の進みがおかしくないかなと思われるところがあって、それが映画用に短縮した結果なのか、それとも、そのくらいのゆがみはユーモアの一部として描かれていたのか、気になるところもあるから。

■COLUMN

ブラックユーモアが満載と言ったが、スウェーデン語がわかったら、もっともっとブラック度はきついのではないかと想像する。

それが、ただの悪ふざけに終わっていないのは、アランが生まれてからの100年の歴史を振り返るという設定が、観る者の知的好奇心を刺激することが大きいだろう。
今ここにある時代とダイレクトにつながっている現代史は、無条件に人の行いの愚かさや哀しさに思いを馳せやすい。当のアランはまったくそんなものは纏っていないし、時の権力者の描かれ方は滑稽そのものなのだが、100年の歴史絵巻にはそこはかとないペーソスさえ感じられる。
観客は、繰り広げられる歴史に、自分の中にある知識や感情を何となく重ねて、そこに哀しみや皮肉を見て、時に教訓さえ引き出すことができるかもしれない。
うまく作られた物語装置だと思う。

テンポよく進む悪ふざけたっぷりのコメディにガハハと笑いつつ、知的好奇心をくすぐられながら、自分なりに思う歴史の哀感に浸れる、お得な一本だ。

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