2015年10月11日

No.264.48 ご無沙汰特別号

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欧 州 映 画 紀 行
               No.264.48   15.10.12配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

ご無沙汰しております。配信しなくっちゃ、しなくっちゃと思いながら、なかなか体勢が整わず、前回の配信から早5か月近く、ひょえーー。
半年配信しないと、「まぐまぐ」さんから休刊だったか廃刊だったかの扱いにされてしまうので、取り急ぎ、時間稼ぎ…じゃなくご挨拶がてら特別号の配信です。(「メルマ!」の規則はわからない)

私の近況といえば、最近引っ越しをいたしまして、ずいぶん長い間過ごしていた街を離れて、新しい生活がはじまりました。といっても同じ東京都内、電車で15分くらいの距離なので、生活ががらりと変わったというわけではありませんけど。

かつて配信した中で、引っ越しにまつわるお話はなかったかしらんと、考えてみましたが、ちょっと思いつかず。ただ、ラストが引っ越しシーンで、その引っ越しシーンが、キラキラとまだ見ぬ未来への期待に満ちていた映画を1本思いだしました。いきなりラストから語るというのも少々無粋ですが、このメルマガの記念すべき0号『猫が行方不明』の回です。

当時、「まぐまぐ」でメルマガを始める場合は、「ウェブサイト」を開設して、そこに、配信するメルマガのサンプルとなる原稿を掲載して、承認を受けるというシステムでした。2004年当時は、ブログなんてお手軽なものはありませんでしたから、「ゼロからできるホームページ」的な本を最初の10ページくらい読んで、サイトを作ってなんとか承認にこぎつけたのです。私のサイト作りの知識はそこで止まっています。

なので、この号はメルマガの最初の原稿ではありますが、一度も配信はしていないものです。
今読むと、ずいぶんとカタいというか、どう書いたらよいのか緊張して書いている感じがひしひしと伝わってきて、とても居心地が悪いですね。
あれやこれや、時が経つうちに、人生全体にずいぶん捨て鉢になってきたこの頃、愛する街を記憶にとどめたいなんて、もう言えないだろうな、そんな初々しさも。

小ネタとしては、今ではフランス映画の大スターとなったロマン・デュリスがまだ無名の頃、ちゃらいドラマーの役で登場しています。
そして、この映画ができた頃、この原稿を書いた頃には、想像もできないほどに、ITのサービスが進んだ現在、監督のセドリック・クラピッシュのInstagram(写真投稿のSNS)はおすすめですよ。
https://instagram.com/cedklap/


今週の作品はこちら
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タイトル:「猫が行方不明」
制作国:フランス/1995年
スタッフ
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:ギャランス・クラヴェル、ジヌディヌ・スレアム、ルネ・ル・カルム
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■STORY
パリ11区の古いアパルトマン。クロエはゲイの友達と部屋をシェアして暮らしている。メイクアップ・アーティストと肩書きはカッコイイけれど、仕事の内実は理不尽にこき使われる下働きだ。そんな彼女も今年は3年ぶりに夏のバカンスを楽しめる。目下の心配事は、旅立つ前に、飼い猫“グリグリ”を預かってくれる人を見つけなくてはならないこと。人づてに聞いて見つけた猫好きの老婦人マダム・ルネにグリグリを預け、いざ、海へ。楽しいバカンスを過ごしてパリへ戻ってみると…、グリグリが行方不明! 気っ風のいいマダム・ルネも、「猫に逃げられるなんてはじめてだ」とすっかり意気消沈してしまっている。マダム・ルネのお仲間の老婦人部隊、近所の若者衆が動員され、グリグリ探しがはじまる。

■COMMENT
「いなくなった猫を探す」。シンプルな物語だけれど、そこに表れる微妙な心理がおもしろい。

今まで何の交流もなかった近所の人々といっしょに行動をするうちに、クロエには見慣れた風景が少しずつ違って見えはじめる。周囲にいろんな人がいることや、自分が案外孤独を抱えていることに気づくのだ。職場でも、プライベートでも、何かが足りないような気がしている人、自分自身のちょっとしたことに気づけないでいる人は、自分自身を含めてまわりにたくさんいるのでは? だから、見ている側はクロエや彼女のまわりの人物にに感情移入もできるし、「こういう人いるいる」と楽しむのもいい。ユーモアあふれる会話には思わず吹き出すことも。

私はなぜだか、猫探し友だちとなった老婦人が、用事もなくクロエに電話してしまいクロエに煙たがられるシーンに、共感を覚えた。老婦人は新しい友人に何となく話したかっただけ。笑っちゃうような、笑い事では済まされないような、もどかしさを孕んだ共感。おばあさま方から見たら充分に今どきの若い人である私には、それをうるさがるクロエの気持ちも身にしみてわかってしまうのだ。

舞台となったパリ11区、下町風情のあった地区がファッショナブルに変貌していく途上の風景は、観光旅行とはまた違ったパリの街を垣間見られる。「地上げ」で次々と住民が追い出されたり、いつかの日本の都会の風景にも似ている。
原題“Chacun cherche son chat”(“シャカンシェルシュソンシャ”早口言葉っぽい)は「皆それぞれ自分の猫を探している」の意。見る人も自分の探しものに気づくことができるやもしれない。果たしてグリグリは見つかるのか、は見てのお楽しみ。


■COLUMN
「猫が行方不明」でも、「この店は、前は楽器店だったのよ」などと言いながら街を歩くシーンが登場するが、街はいつも姿を変えている。しょっちゅう歩いて見慣れた街なのに、ある日「あれれ、こんなとこにこんな店あったっけ」と思うことがしばしばだ。そしてその次に来るのは「前、何だっけ?」。
なくなった店が、何十年も続いていたおそば屋さんだったりしたら、「おじさん、やめちゃったのねー」と感慨にも浸れる。だが、その記憶もなじみつつある新しい風景に駆逐されてしまうかも知れない。ここ2年で4軒目だね、なんてところなら、間違いなく、前の店を覚えてはいない。
そんなことを繰り返しているうちに、感覚が鈍くなり、何ヶ月かで入れ替わる風景など、最初から記憶にとどめなくなる。忘れたのではなく、最初から目に入れてすらいない。よくも悪くも街は次々変化する。変化は止められなくても、自分が愛する街なら、記憶にくらいはきちんととどめておきたい、と思う。

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