2016年06月19日

No.266 パレードへようこそ

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欧 州 映 画 紀 行   No.266  16.06.20配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 闘い抗う人々に拍手を ★

作品はこちら
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タイトル:『パレードへようこそ』
製作:イギリス/2014年
原題:Pride 

監督:マシュー・ウォーチャス( Matthew Warchus)
出演:ベン・シュネッツァー、ジョセフ・ギルガン、フェイ・マーセイ、
   ジョージ・マッケイ、ドミニク・ウェスト、アンドリュー・スコット、
   ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、パディ・コンシダイン、
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■STORY&COMMENT
1984年サッチャー政権下のイギリス。
炭坑の閉鎖に抗議して、炭鉱夫のストライキが長期化していた。そのニュースを見ていたゲイのマークは、デモなどで警察・公権力と闘う自分達と重ね合わせ、敵が同じ者同士、支援しようと、ゲイ・パレードで募金活動を行った。
本格的に活動をスタートさせようと、支援組織LGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)を立ち上げて仲間の参加を募るが、集まったメンバーは9人だけ。さらに、寄付金を送ろうと全国炭坑労働組合に電話をしても、「レズビアン&ゲイ」と名乗ると相手にされない。
そこで、炭鉱に直接電話をしてみたところから、ロンドンのLGSMメンバーと、ウェールズの炭鉱町ディライスの人々との交流が始まり、事が動き出していく。

「男らしさ」が大事にされる炭鉱夫の集まる組合。はじめはLGSMの支援を受けるか否かで紛糾、混乱する。
このあたりの偏見を打ち破るのに難航するのかな、と思ったが、最初の障壁は、下世話な好奇心の助けも含めて、メンバー達が会って話をしているうちに案外すんなりと打ち解けて、数人だけがどうしても受け入れようとしない、という格好。こんなに早く仲良くなってしまって、物語としてはどうするんだ、と心配になったほど。
実話だというから、最初のとっかかりが実際にはもっと大変だったのかもしれないけれども。

物語としてどうしたかというと、ひとつには、LGSMと炭鉱組合という団体同士のメインストーリーの脇に、個人の事情とその解決・成長が描かれるサイドストーリーがちょろちょろと用意された群像劇的しかけをしたこと。

ゲイゆえに家族と仲が悪く、実家のあるウェールズをどうしても訪れられなかったゲシンや、保守的で過保護な家庭から自立できずにいたジョーの他、炭鉱町では概ね中年の女性たちがゲイやレズビアンに寛大で、LGSMのメンバーに感化されてどんどん活動的になってゆく。それに引きずられて、ダンスの得意なLGSMメンバーから習って女性にモテるようになる炭鉱夫も出てくる。
と、異世界の人が出会うことによる人の変化や成長が、そこかしこに見られて飽きが来ない。痛快と言ってもいい。

そしてもうひとつは、そうして個人の交流の中で育まれた友情も、外からの様々な圧力で、一筋縄ではいかない現実を見せること。社会現象として世の中で様々に取り沙汰されるストライキが大本にある以上、外からの好奇の目も、世の流れによる絡め取られも、避けられはしない。

炭鉱という産業がその後どうなったのか、2016年にいる私たちは悲しい事実をいくつも知っている。しかしそんな知識の気取りはどうでもよくなるほどに、逆境を生き抜き、行動を続ける人々のさわやかさに、拍手を送りたくなる作品だ。

■COLUMN
古いものも含めて、ここのところちょっとイギリスの映画を意識して観ていた。なぜかというと、「宣伝」のためである。

この春から、私の夫が「紅茶」の通信販売を始めたのだ。ティーブレンダーさんと組んで開発した、誰でも手軽においしく入れられるオリジナルブレンド紅茶を売る「犬猫紅茶店」。
なんで犬猫? と興味を持たれた方は、
http://dogcat-teahouse.shop-pro.jp/?mode=f2
この辺りをご参照いただければ幸いです。

私たち夫婦は、大学の「紅茶倶楽部」という紅茶をいろいろ飲み歩くだけというサークルで出会い、我が家の食卓にはつねに紅茶があった。そんな夫婦だ。
私の方はそれほど紅茶に詳しくもこだわってもいないが、そんなに高くなく、気取ることなく、おいしい紅茶が飲めたらいいな、とはいつも思っていて、犬猫紅茶店の紅茶は、まさにそんな紅茶だと思う。この事業が何とか続いて、私もこの紅茶を飲み続けられたらいいなと思っている。

というわけで、紅茶といえばイギリスの映画でしょう。と、何か紅茶の出てくるイギリス映画はないかな、なんて思っていたわけで。

この『パレードにようこそ』にも紅茶は出てこないにしろ、マークの部屋には、かわいいティーポットがちらりと写ったり、生活の中に紅茶が根づいていることはわかる。
しかし「イギリス映画=紅茶」というイメージは、いわゆるイギリスの上流階級が優雅に茶器をテーブルに広げて楽しむステレオタイプに支えられているもので、はたと気づくと、そんな古き良きブリティッシュの文化を見せるイギリス映画というものがあまりないのだなと思う。

じゃあ今のイギリス映画ってどんなものが描かれるんだろうというと、この作品に出てくるような、労働者から体制、階級への反発、マイノリティの闘いだろうか。最近観た『キングスマン』というスパイ映画、というかブラックユーモアとパロディ(オマージュ?)満載のおバカ映画で頭を空っぽにして楽しめるものだったが、この中でも、貴族趣味にいつまでもこだわるスノッブな貴族への、底辺から這い上がってくる者の逆襲がスパイスとして使われていた。

私の印象に残る「紅茶」が効果的に使われていた映画といえば、『シーズンチケット』(昔、このメルマガでも取り上げた。 http://oushueiga.net/back/film045.html )。
今回再見をしたかったがレンタルでも配信でも見つからなかったため、うろ覚えだが、この作品中の誰からも相手にされない不良少年が、自分の最高の思い出として語る言葉だ。
「スタジアムで父と一緒にサッカーを観てた。寒くて震えていると父がコートを掛けてくれて、ハーフタイムにはミルクたっぷりの温かい紅茶を買ってくれる。砂糖は二つ。あったかくておいしかった」

紅茶の象徴する物理的・精神的両面での温かさとおいしさをこんなに素直にわかりやすく表現している映画は他に知らない。ちなみに、父親にひたすら殴られて育った少年には、本当のところ家族の良き思い出など何もなく、友人から聞いて気に入っている話を自分の思い出として語ったのだ。少年が知ることのない「家族の温かさ」は、紅茶に託されて語られた。
そしてこれも、家は貧しく親からは暴力を振るわれ、学校からもドロップアウトした少年が好きなサッカーチームの試合を観たいと世の中と闘う物語だ。

イギリス映画で優雅に紅茶を飲むシーンなんかにかこつけて、紅茶の宣伝ができるかな、なんて私の浅ましい考えは打ち壊されたが、それは同時に、果たして私の好きな「紅茶」とはそういう「ハイソなブリティッシュネス」のイメージと同時にあるものなのか、というテーマにも突き当たることだった。

前述の通り、私はおいしい紅茶じゃなきゃ飲みたくないが、そんなに高いお金を出す気はないし、たまには優雅なティーパーティも素敵だけれど、やっぱり基本は気取らず気軽に気負わず紅茶をガブガブとやりたい。
だから、階級の格差に苦しめられる人々や、世間や体制と闘い抗う人の手に、紅茶がさりげなく持たれているような、そんなイギリス映画がもっともっと観られたらなあと、そしてそれをうちの紅茶片手に観たいもんだと、そんな風に思っている。

犬猫紅茶店 http://dogcat-teahouse.shop-pro.jp/
犬猫紅茶店広報室(blog) http://inunekotea.com/

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★DVDなど

『パレードへようこそ』DVD ¥2,963
http://amzn.to/1UhXFzs

『パレードへようこそ』amazonビデオでの配信 ¥432〜¥540 (画質による)
http://amzn.to/1UDyXrE
(iTunesストアでは標準画質で¥300でした)

価格は2016年6月19日現在のアマゾンでの価格です。
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編集・発行:あんどうちよ
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