2017年08月15日

No.267 偉大なるマルグリット

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欧 州 映 画 紀 行
             No.267   17.08.15配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、おうちで映画鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 人にはいろんな側面があるもので ★

作品はこちら
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タイトル:『偉大なるマルグリット』
製作:フランス/2015年
原題:Marguerite 

監督・共同脚本:グザヴィエ・ジャノリ( Xavier Giannoli )
出演:カトリーヌ・フロ、アンドレ・マルコン、ミシェル・フォー、
   クリスタ・テレ、ドゥニ・ムプンガ、シルヴァン・デュエード
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■STORY&COMMENT
1920年、フランス。パリ郊外にあるマルグリット・デュモン男爵夫人の邸宅では、貴族達が集まって、チャリティーのサロン音楽会が開かれていた。トリを務める主役のマルグリットは、衣装にもオリジナルで凝って堂々の登場をするが、実はひどい音痴だ。出席する貴族たちは真実を伏せて拍手喝采する。知らぬは本人ばかりなり。

ある日、このサロン音楽会に忍び込んでいた、辛辣な批評をすることで知られる新聞記者のボーモンは、この音痴に驚きながらも、大金持ちのマルグリットに近づくため、「心をわし掴みにする声」と大絶賛の評を寄せる。
この批評に喜び、自らボーモンに会いに行ったマルグリット。新しい友人ができたことをきっかけに世界が広がり、本格的に歌を学んで、パリでリサイタルを開きたいという希望を持つようになるが……

マルグリットの音痴はどこでバレるのか、ひょっとして音痴でもリサイタルは大成功してしまうのか。そんな風に先行きが気になり、単純に筋を追う楽しみがたっぷりある作品。そして同時に、マルグリットをはじめとする、登場人物たちに抱く印象が、ストーリーが進むにつれ少しずつ変わっていって、人のいろんな側面を観察できるところも面白い。

「お金持ちの貴族が音痴のくせに自分だけいい気分で歌っちゃって」とマルグリットを最初は意地悪な目で見てしまうのだが、マルグリットが純粋に歌を愛し、オペラを愛して、嬉々としてオペラの登場人物になりきった写真を撮っているところなど見ていると、ただただかわいらしく、応援する気持ちになってしまう。
そんな気持ちの変化は、はじめは利用したくて皮肉を込めた絶賛記事を書いたボーモンにも表れる。

マルグリットの夫ジョルジュは、妻の音痴を陰で皆が笑っているのが恥ずかしく、音楽会の日にはいつも車が故障したことにして歌の時間には遅れてくる。さらに、妻の歌やオペラごっこに辟易して、浮気中。事なかれ主義の貴族なのだろうと眺めていると、この人もだんだん変わってきて、最後には冒頭とはまったく異なった印象を残してくれる。

マルグリットに忠実な使用人マテルボスは、オペラ写真撮影、音楽会の準備と献身的につきあい、歌を学びたい、リサイタルを開きたいという彼女の夢の実現にも、影に日なたに精一杯協力する。しかしこの人も最後にはまったく別の側面が見えて、ちょっと苦い。

ラストは、「フランス映画」らしく、観客に「ああ、この後どうなったのだろう!」と思わせてその後を託す。それがいつまでも続く鑑賞後の余韻となっている。

■COLUMN
結末がわかっていることを前提に話したい、そうしたらもっと語れることがあるのに、と思う映画があるが、これはそんな映画のひとつだ。
上にも書いたように、最後まで観ると、登場人物の印象も変わるし、最後まで観た頭でもう一度最初から観たならきっと思うところも違ってくるかもしれない。「ネタバレ」できないのはちょっと不便だと思う。

結局、マルグリットが自分は歌が壊滅的に下手である、と気づくのか否か、は観てのお楽しみとして、ただひとつ言えることは、結末まで観ても、果たして真実を告げる方がよいのか、それとも自分が信じているように楽しんで歌を続ける方がよいのか、それは簡単に決めることができないということだ。
本人にとって、という意味でも、周りにとって、という意味でも、何がよいことなのか、断言することは難しい。この後どうなったのだろう。と同時に、どうするのがよいのだろう。と、ああでもない、こうでもない、と考え尽くせる映画だ。

歌が題材だけに、全編に散りばめられた音楽、そして1920年パリのアーティストたちの退廃的なムードなど、ストーリー以外の楽しみの面もしっかり用意されている映画だが、その中で、あれはどうやっていたのだろう、と特に思うのは、マルグリットの下手な歌だ。
演ずるカトリーヌ・フロ本人が本当にあれを歌っていたのか、耳をふさぎたくなるキャンキャンとした音痴っぷりは、誰がどうやってつくりこんだのか。歌を下手に歌うのって案外難しいもので、上手に下手さを出さなければなかなか表現できないものじゃないかと思う。
「どの辺でどう音を外しているからこの壊滅的な下手さが出てる」なんてところも含めて、いろいろに考えを巡らせたくなる要素だ。

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