2019年06月29日

No.271 おかえり、ブルゴーニュへ

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欧 州 映 画 紀 行
                 No.271   19.6.29配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★その後もずっと続く人生に ★

作品はこちら
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タイトル:『おかえり、ブルゴーニュへ』
製作:フランス/2017年
原題:Ce qui nous lie 英語題:Back to Burgundy

監督・共同脚本:セドリック・クラピッシュ(Cédric Klapisch)
出演:ピオ・マルマイ、アナ・ジラルド、フランソワ・シヴィル、
   ジャン=マルク・ルロ、マリア・バルベルデ
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■STORY&COMMENT
フランス・ブルゴーニュ。10年前に「世界を見たい」とワイン生産を行う実家を飛び出したジャンが帰ってきた。父が末期だと知らせを受けたのだ。
再会を喜ぶ妹のジュリエット、「母の葬儀にも来なかったじゃないか」と怒りながら屈折ぎみに迎える弟のジェレミー。各々の反応を見せながら久しぶりに3兄弟が揃うも、まもなく父は亡くなってしまう。
残されたワインの仕事、そして畑や在庫を売却しない限り払えない相続税。家族はどうなっていくのか……。

予告編を観て、「相続税をどう払うか」を中心に据えたコメディかと思っていた。しかし、この映画は、なにか「中心となる話」があっていろいろなエピソードが展開するという「円」の構成ではない。各々の抱える感情のひだが、次々と重なり、そこにさらに状況やエピソードがつくり出す思いが重なり、そんな風に、どこまでも重なり合っていく「層」の構成だった。相続税の問題は、物語の終わりまで、ずっとその底に流れ続けるエピソードのひとつだ。
ついでにいえば、くすっと笑うシーンは多々あるが、コメディではなく人間ドラマという方がイメージに近いだろう。

そんな訳で、「この映画は、こういう話」と紹介することが難しい。

オーストラリアでワインを生産するジャンは、妻との間に問題を抱えていた。父の抜けた実家を手伝いながら、このまま帰る場所がなくなるかもしれないと落ち着かない。
家業を継ぐジュリエットは、プレッシャーにつぶされそうになっている。
裕福な妻の実家から婿養子のように扱われるジェレミーは、その状態にイライラしっぱなし。

そんな一人ひとりが抱える問題が、ちょっとずつほぐれていく様子に観客が寄り添う群像劇ともいえるし、ワイン生産の1年を追うドキュメンタリーの要素も持つ。ブドウの熟れ具合を吟味しながら、収穫時期を日単位で決める様子、その収穫時期が大きくワインの質に影響すること、ブドウ摘みのアルバイトを大勢雇い、宿泊場所を提供して最終日には大々的に打ち上げをする収穫、熟成時のテイスティング。ゆっくり経過する時間とともに眺めるワインづくりの実際は、どの描写も興味深い。ワイン生産を映画の素材だけに終わらせず、その仕事に重いリスペクトを払って見せているところがなんだか嬉しくなる。

問題や悩みがほぐれ解決していく様子をみて、すっきりしようと思ったら、それはちょっと失望につながるかもしれない。
でもそれは、決して、観た後「もやもやする」ということではない。彼らの人生は、これからもずっと続いて、その先でも悩みや苦しみは出てきて、その都度悩んで解決して、泣いたり笑ったりして続いていくんだろう。そんなある種の確信に近い感情だ。
移りゆくブドウ畑の1年を観て、繰り返す季節のイメージに引きずられるのか、過去から未来へと、大地が人々を結ぶ様子が連想されるのか。
解決するからいい。うまくいったからいい。そういうことではなく、そこにあることがそれだけで素晴らしい。そんな気持ちになれる。


■COLUMN

セドリック・クラピッシュ監督の作品は好きで、このメルマガで取り上げるのも6作目だ。
観終わって、いつもの作品とちょっと感覚が違うなあと思った。
作風が違うというほどではない。何かがほんのちょっとだけ違うかなーー、というくらい。

何日か考えていて、こんなことかなー、と思ったのは、観た後に、今観たものより、その後のものに気持ちが向かうということだ。物語が終わって振り返ることより、この先の彼らに意識が向かう。
これまでの作品だったら、あのシーンがおかしかった、このシーンがかっこいい、と復習をしたくなるのだが、それよりもここまでに描かれなかった「この先」を想像したくなる。
上に書いた「彼らの人生は、これからもずっと続いて」の思いだ。

物語の「大団円」のすっきりさよりも「この先、その向こう側」、よくも悪くもずっと続いていく仕事、暮らし、そんなものに意識が向かう。
それは私が年をとって「人生」ってものにからめとられて受け止め方が変わったのか、監督が年をとって描写方法が少し変わったのか。
年齢の問題にするのは安易に過ぎるかもしれないが。

「相変わらず」なところは、音楽がイイというところ。
私はそんなにサウンドトラックを好んで聴くほうではないが、クラピッシュ作品のサントラはいくつか持っている。
この原稿もサントラをかけながら書いた。おすすめ。
(リンク等は下を参考に)


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