2013年02月03日

おうちでフランス映画祭

2月17日まで、ネット配信で最新フランス映画が観られる
「My French Film Festival」開催中。
日本語字幕もついてます。

出不精な私には嬉しい企画。という割にはまだ1本しか観ていないのだけど、
主演がカリン・ヴィヤールなら面白そう! と選んだ
『Parlez-moi de vous』(やさしい語りで)
とてもよかった。おすすめです。

素顔は謎につつまれたラジオの人気パーソナリティ・メリナは、
誰にもかかわらずにひっそりと暮らしている。潔癖症で人と握手をするときも手袋を外さない。
そんな彼女が、興信所に頼んで探し当てた生みの母に、素性を隠して近づいて、
リスナーの悩みには歯切れのよいアドバイスを送っておきながら、
素顔では自分の内にこもっていた彼女の身に、少しずつ変化が……

母娘再会の感動ドラマは期待したらダメですよ。
自分の内にこもりきって、自分をひたすら守ってる彼女には、
私は自然に感情移入してしまって、
結末は少し苦めだけれど、
苦めだからこそ、鑑賞後にしみじみと浸ったり、
今後に希望が持てるように思えたのでした。

「My French Film Festival」のサイトからだと、
長編のレンタルは1.99€(230円くらい)で、見始めてから72時間見られるのだけど、
「王政時代のネット回線でも使ってるのか!」てくらいにブチブチ切れてストレスがたまるので、
iTunesストアから長編1本300円(見始めてから48時間以内)で借りる方が快適です。
(iTunesのアカウントがあれば)映画祭の利用登録をする必要もありません。

今は、2本目の『De bon matin』(早朝に)を観ているところ。
これも、ジャン=ピエール・ダルッサン主演なら面白いかも。で選びました。



posted by chiyo at 13:04| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月22日

久々の映画館『さあ帰ろう、ペダルをこいで』

去年、耳の病気をして以来、
大きな音が苦手で、映画館からはすっかり足が遠ざかっていた私。

「大きな音」といっても音源との距離とか、いろんな要素が加わるもので、
スピーカーを使う頻度が低い演劇は観られても、
音はすべてスピーカーで聞こえるところは不快に感じる、なんてことがあって、
映画館で映画を観るのはちょっと怖かったのだ。

もともと、DVDで観られる映画は家で観ればいいや、という出不精でもあり、
「映画館で映画鑑賞再開に挑戦」とは思えないでいた。

のだけれど。

日常生活で耳栓が手放せなかったのが、最近はどこに行くのもわりに平気になったので、
ふと時間ができたから思い立って、
公開がアナウンスされたときから興味を持っていた映画を観てきた。

「音」の方は、シーンによっては、耳をかばわないと辛いところはあったけれど、基本的には大丈夫。
約1年ぶりの映画館、楽しめましたよ。

観てきた作品は『さあ帰ろう、ペダルをこいで』

『アンダーグラウンド』『ウェディング・ベルを鳴らせ!』などエミール・クストリッツァ作品、『美しき運命の傷痕』『やわらかい手』等、ヨーロッパ各国の映画に出演するミキ・マイノロヴィッチが、今度はブルガリアの映画、というのに興味を持って、さらに、ドイツから自転車で故郷に向かう、というプロットが気に入って、観たいと思った。

ブルガリアからの移民アレックスは自動車事故で父母を亡くしてしまう。
一報を聞いてブルガリアから祖父が駆けつけるが、
アレックスは記憶をなくしてしまっていて祖父のこともわからない。
やがて記憶は取り戻さずとも信頼関係ができてくると、
祖父はアレックスにタンデム自転車(二人前後でこぐ自転車)でブルガリアに帰ろうと誘う。
ペダルをこぎこぎ行く道は、自分の来た道を思い出す道でもある。
アレックスが記憶を取り戻していくと、観客は、いっしょにこの家族に起こったドラマを知ることになる。

共産主義、タンデム、ロードムービー、バックギャモン、地続きのヨーロッパ……、
いろんなアイテムが散りばめられて、ちょっとずつ考えさせられるところもありながら、
すっきり娯楽として楽しめる作品。
いろいろ八方ふさがりでもなーんだか何とかなるかもしれないな、と心を軽くもしてくれる。
ネガティブ思考全開の私でさえそう思えるんだから、お墨付きだ。

豪快で常人ばなれして、強くて優しい、って祖父の役がミキ・マイノロヴィッチにぴったりだった。
バックギャモンのルールがわかんないのが、残念だな。知ってて観たらもっと面白いだろうに。


『さあ帰ろう、ペダルをこいで』
2008年 ブルガリア/ドイツ/ハンガリー/スロヴェニア/セルビア
監督・共同脚本:ステファン・コマンダレフ
出演:ミキ・マノイロヴィッチ、カルロ・リューベック

公式ホームページ:http://www.kaerou.net/
上映中:シネマート新宿、シネマート心斎橋
6月2日から:元町映画館(兵庫)

posted by chiyo at 22:53| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月04日

メルマガではパス、と思った『リッキー』

昨日配信した『エリックを探して』のメルマガ(blogは今朝アップした1つ前の記事)、なんだか暗いコラムを書いて、少し後悔してる。
軽くて楽しいコメディだというのに、なんでこんな気分の沈むことというか、この人だいじょうぶ?と心配されちゃうようなことを書いてしまったのか。
書いているときには、自分のなかでは映画とコラムはつながっていたし、ごくふつうの日常のことを書いているつもりだったのだが、一夜明けてblog版としてアップしてみたら、あれ、ちょっと映画の雰囲気に合わないものを配信してしまったなあと。

なんて言ってても配信しちゃったものはしょうがない。
書いてあること自体は別にウソを書いたわけでもないしね。


最近観た映画で、おもしろかったけれど、紹介していないものを一つ。
フランソワ・オゾン監督の『リッキー』
赤ちゃん(リッキー)の背中にあざのようなものができて、どうしたのかと訝っていたら、どうやらそれは羽根のようで………
というお話。

この映画、どこまでストーリーを話していいのかわからない。どこまで話しても「ネタバレ」になる気がする。
そして、どこに着地点をもっていくんだろうと思って観ていると「え、そうなるの? それでいいの? え?」と戸惑うような結末で、最後まで観ることで、それまで展開されていたストーリーの見方や解釈も変わっちゃうような話だ。

だから、結末抜きに何かを言うのが難しくて、メルマガでとりあげるのには向かないだろうな、と感じた次第。

映画を観終わって、カフェでさっき観た映画についてあーだこーだと議論して楽しむ(古き佳き)フランス人のための映画(っぽくつくった映画?)ていう印象だ。


で、今は同じオゾンの『しあわせの雨傘』をみようかなと計画中。
カトリーヌ・ドヌーブはそれほど好きではないのだけれど、ファブリス・ルキーニは楽しみ。
ドヌーブと色とりどりの傘なんて、また、古き佳きフランス人観客に向けてるのかしらん。
posted by chiyo at 17:31| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月18日

女子サッカーの映画といえば

なでしこジャパン、優勝おめでとうございます。
女子サッカーの映画といえば、『ベッカムに恋して』。
て、まあ、ほかに知らないだけなのですが。

7年前にメルマガで書いた『ベッカムに恋して』のレビューを
お、タイムリー♪とばかりにひっぱり出してみました。
「なでしこジャパン」という愛称がつけられたちょうどその頃か、
その直前か、女子サッカーについてもちょっと触れています。

まだメルマガをはじめたばかりの第4回で、なんだかういういしいですね。
てことはないか。
(2004年6月3日配信の記事)

↓↓↓

========================================

*** 欧 州 映 画 紀 行 ***
           No.004
========================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★心にためる今週のマイレージ★
++ 人生を切り拓く ++


作品はこちら
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タイトル:「ベッカムに恋して」
制作国:イギリス・アメリカ・ドイツ/2002年
原題:Bend It Like Beckham
監督・製作・共同脚本:グリンダ・チャーダ
出演:パーミンダ・ナーグラ キーラ・ナイトレイ
    ジョナサン・リース=マイヤーズ
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■STORY
インド系イギリス人のジェスは、ベッカムとサッカーが大好き。彼のようにな
りたいと、男の子たちに混じって草サッカーに明け暮れる毎日だ。しかし彼女
の家庭はインドの伝統と風習を守る家。女の子がスポーツをするなんて、しか
も足をむき出しにしてサッカーなんて絶対に許してもらえない。

ある日地元の女子サッカーチームのエースストライカー、ジョールズが、公園
での彼女のサッカー姿を見て、ぜひチームにきてほしいとジェスに頼む。自分
が本当にチームでプレイできるのかと、なかなか信じられずにいる彼女だが、
練習に参加してみることに。コーチのジョーにも認められ、彼女は本格的にプ
レイヤーとしての道を歩むこととなった。アメリカではプロリーグもあるとい
う。

サッカー選手として生きていく夢を持ち始めたジェスだが、難しいのは両親の
反対だ。練習にも試合にも、何か口実をつくって出かけなければならない。バ
イトに行くことにしたり、仮病を使って一人家に残ったり、必死に隠してサッ
カーを続けるのだが、そんな隠蔽工作も長くは続かない。
彼女の夢ははたして叶えられるのか……

■COMMENT
注意:ベッカムに恋はしない。ジェスが恋するのはコーチのジョー。親友・
ジョールズとの三角関係に悩む場面もある。

厳格な家庭で、自分のやりたいことをやれない。よくある話である。はじめは
対岸の火事で眺めてしまうのだ。インドの風習ってのは大変だなー、短パンも
許してもらえないのか、気の毒にと。しかし、物語が進むと、ちっとも他人事
ではないことに気づく。サッカーを反対されているのは、白人ジョールズも同
じ。父親は理解があるものの、母親はもっと女らしくして欲しいと言い、女子
選手のポスターをぺたぺた貼って、もしやレズビアン? なんて思っている。

きっと世間では格闘技とか、トラックの運ちゃんとか、「えー、女の子なのに
?」と言われるものがたくさんある。男女の区別なく、好きなことやったらい
いじゃないか、と本気で思うけれど、親の反対にあったと言われれば、そうだ
ろうな、と納得してしまうだろう。納得する辺り、親御さんと世間体を共有し
ているのだ。
そういう世間体を持ちながら、インドの伝統は大変だー、とインドのせいにす
るのも十分偏見に満ちている、かもしれない。

差別や偏見は「女の子がサッカーをすること」だけじゃない。白人の移民に対
する偏見、逆にインド系住民のイギリス社会への偏見、ゲイへの偏見。ジェス
の父は、クリケットの選手だったけれど、インド系だからプロになれなかった。
ジョーはアイリッシュで肩身が狭いし、女子チームのコーチなんてまともな職
業と認められない。男子チームのコーチに「昇格」させてやるって、話も飛び
込んでくる。

差別・偏見について書いたけれど、別にそれがメインのテーマの重い映画では
ない。日常のどこにでもある偏見を、うまくスパイスにして、壁にぶつかった
主人公たちが、自分の人生を切り拓く様子を清々しく描いている。

ジョーはジェスに「自分の人生だろ」と両親のいいなりにならずにサッカーを
続けることを勧めるけれど、ジェスにとっては両親が喜んでくれたり、両親に
祝福されることも「自分の人生」なわけで。自分の願いだけを見つめても、自
分の人生を考えたことにはならない。まわりの幸せも考えてこその自分の人生。
そんな揺れる心がうまく表れていたと思う。

惜しむらくは、サッカーシーン。足下や、ピッチの選手の動作を多く映して、
サッカーっぽさを出していたことはわかる。シュートが入る映像を「網にボー
ルがつきささる」画で表現したところなんかとてもそれっぽい。女優たちもト
レーニングをかなり受けたのだろう。ただ、原題(“Bend it like Beckham”)
通り、「曲げてきたー(絶叫)」みたいなボールの軌道もきれいに見せて欲し
かった。映像としてのサッカーらしさというのは、激しい動きだけで表現され
るものじゃない、と思う。

でも、まあ、それは小さな事。スポーツする女性のきれいさ、さわやかさは試
合中の映像が伝えてくれる。少しはらはらして、あとはすっきり元気になりた
い人におすすめ。

■COLUMN
女子サッカーの日本代表が、北朝鮮を破ってアテネの出場を決めたとき、私は
その場にいた。女子サッカーを少しでもメジャーなものにすべく、サッカー協
会がPRにかなり力を入れているようで、「やべっちFC」というサッカー番
組に応募したら、観戦チケットをくれたのだ。
前に女子の代表を見たのは、男子の日本代表の試合の前座だった。昼前から女
子の試合を見に来ている人が、そうたくさんいるものでもなく、スタジアムは
閑散としていた。それから何年も経っているが、その女子の試合のため、夜の
国立競技場に次々と人が押し寄せてくる様子は、時代の流れを感じさせてくれ
て壮観だった。

サッカーをする小学生の女の子は相当数いるらしい。しかし、中学校にはいる
と、学校に女子サッカー部が少ないことなどが影響し、ガクンと競技人口が減
るのだという。そこのところの落ち込みをなんとかするのがサッカー協会の課
題。マスコミでの露出が増え、サッカーっていいな、と皆が思ってくれればサッ
カーを続ける子も、新たにやりたいという子も多く生まれるかもしれない。
中学校に部活がないことからも、今までの世の中で、女の子がサッカーをやる
ことは、あんまり期待されていなかったことがわかる。思春期の頃は人の評価
に敏感だから、泥だらけになってボールを追い回す自分を好きになれない娘た
ちも多いだろう。

現在の女子チームを率いる上田監督も、女子代表の監督を打診されたときには、
「女子なんかより男子の強化が先だろう」と思ったのだそうで、最初は女子の
監督就任が「降格」に映ったのかもしれない。その思いも初日ミーティングで
の選手たちの真剣なまなざしに、うち崩された、というが、こんな身近な人に
も世間の偏見がしのびこんでいた。
選手たち自身も、その中でサッカーをやり続けるのには、難しい場面にたくさ
ん出会ったのだと思う。今度のオリンピックで、強く美しい姿を見せつけて、
偏見を吹っ飛ばせればいいのだが。

ジェスたちが憧れたアメリカのプロリーグは解散してしまった。競技する人だ
けががんばっても続かない。女子サッカーを応援するなら「感動をありがとう!」
とたやすく感動だけもらわずに、感動をくれた人たちのその後にも注目していく
観客の覚悟も必要。自戒をこめて。


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転載には許可が必要です。

編集・発行:あんどうちよ

Copyright(C)2004 Chiyo ANDO

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posted by chiyo at 11:24| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月03日

シルヴァン・ショメ×ジャック・タチ『イリュージョニスト』

『ベルヴィル・ランデブー』というキュートなフレンチアニメーションをご存知だろうか。
『ベルヴィル・ランデブー』を作ったシルヴァン・ショメ監督の新作『イリュージョニスト』は、ジャック・タチの遺した脚本を、ショメがアニメ化したものだ。

年老いてそろそろ客にも飽きられたパリの手品師タチシェフが、イギリスに渡って興業先を探していく物語だ。途中で出会った少女アリスとの交流が、ちょっと変わった運命を導く。

『ベルヴィル・ランデブー』は、猥雑でかつかわいらしかったのが、今回はそこに洗練が加わって、とにかく映像が美しい。

私のメルマガで取り上げる作品は、一応「ヨーロッパの風景を観る映画」という縛りを作っているので(といっても例外はいくつかありますけどもね)、どこの国とも判別つかないものやアニメーションは取り上げないのだけれど、そういう意味で『イリュージョニスト』は、景色を堪能できて取り上げるにふさわしい作品と言ってもいい。

ロンドンのどんよりした空気、潮のにおいのただよう海辺の町、華やいだショーウインドウが誘うエジンバラ。どれもこれも自分の心にある「町」とどこかで符合してさらに美しく響く。

変わっていく世の中と老手品師、手品師を魔法使いと思い込む無邪気な少女。切なさとおかしみは、スクリーンから観た者の心に移ってじわじわと、長く心を揺らめかせ続けるだろう。

タチの『ぼくの伯父さん』がちらりと登場するサービスも粋だ。

苦言をひとつ。そもそもセリフが極端に少ない作品で、会話の中身がわからなくても一向に困ることはなし。字幕はせっかくの美しい画をじゃましてしかいなかった。字幕なくていいんじゃないかな。


ラベル:フランス
posted by chiyo at 13:30| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月22日

こんな今だから観たい映画

中東で連鎖している民衆の動きが報道されて、
されるものの本当の情報なのかどうか、なかなかわからなかったり、
みんながやきもきしている。

ここのところあまり時間もなく、
新聞の一面をさらっと眺めるくらいで、
ネットのニュースすら追っていない私。
そもそも中東という地域について知ってることもとても少ない。

流れにのって何か言うこともできないのだけど、
ふと思ったのは、こんなにみんなが注目するのは、
一つには、世の中が大きく動くその時をリアルタイムで見るのは、
ダイナミックな体験だからかなってこと。
映像としても、心に残すものは大きい。

で、考えた。
こんな時期に観るからこそ迫ってくるような
映画を今までにレビューで紹介しなかったかな。

探してみたんだけれども、民衆の蜂起や、体制が崩れるその時、が
映像として出てくるものは割と少なく、この3本をチョイス。
(昔の号は、ブログに反映されていないので、リンクはバックナンバーページ)


No.030 『コーリャ 愛のプラハ 』
民主化を求めて広場に集まった人々が、
それぞれ持っているキーホルダーをじゃらじゃら鳴らして、
「鳴り物」とするシーンが印象的。

No.047 『カフェ・ブダペスト 』
ベルリンの壁がこわれた後、西側と東側の人々が一気に交流をした。
その頃のブダペストの風景。

No.184 『君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』
ハンガリー動乱のさなか、オリンピックか革命か、迷う水球選手が主人公。
エンドクレジットで自由を勝ち取る闘いを讃える詩にぐっさりやられる。

体制への反抗とか内戦とかレジスタンスなんかに広げると
もっといろいろあるんだけどね、
そちらのチョイスも見たいって方はコメントを入れてください。


観る時間書く時間がないなら、二次利用って手があるんだな、
今まで書きためたものをある視点からグルーピングすると、
1つのコンテンツにできるんだ。
いいこと覚えた。へっへっへ。
posted by chiyo at 23:26| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

レアなホームズ、あったらいいなのホームズ

遅ればせながら、ガイ・リッチー監督、ホームズをロバート・ダウニー・Jr、ワトソンをジュード・ロウが演じた『シャーロック・ホームズ』を観ました。
小学校から中学校くらいにかけてシャーロキアンを気取っていた私、ホームズ物にはうるさい、てほどではないけれど、無視はできないのですなあ。公開当時、具体的にはあまりチェックしていないし、よく覚えていないけれど、原作と全然違うとか、そういった理由でわりと不評でしたよね。
昔シャーロキアンだった身として「えー、そうですかー?? 原作に照らし合わせてすごくいいキャラクター設定だと思うけどなー」が第一の感想。アクション映画としてどうとかは、そういうジャンル、あんまり観ないからわかんないから、「全然違う」て言われるキャラクターについてだけですが。

どこがいいかというと。
1.「だめなホームズ」を凝縮して見せてる
すばらしい頭脳と観察眼を持つホームズだけれど生活力はほとんどない。常識を持ち合わせているワトソンがフォローしてなんとかなってるところってのは原作でも随所に出てて、そういう場面を集めたら楽しいだろうと思う。だからオタクでだめなホームズを肥大化して凝縮したキャラクター作りは好き。
原作でも確か、ワトソンは結婚してるのに、ホームズの頼みでベーカー街に舞い戻ってるらしいよね。

2.「友情で結ばれた二人」を表に出す
映画にも出てくるホームズの「押し入り小道具セット」が登場する『チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン』で、万策尽きて悪党ミルヴァートンの家にホームズが押し入ることに決めるとき、『悪魔の足』で毒物の実験をして二人が死にそうになったとき、など。珍しくホームズが友情や熱い気持ちを表に出すシーンが大好きだった。めったにないシーンを何度も読み返したもので、「いいコンビ」なところを凝縮されると、そんなレアシーンを思いだしては私はニヤニヤしてしまう。

3.「二人のかけあい」ってそもそもコミカルで
ホームズシリーズでは、話の枕の部分で、ホームズが観察術を披露してワトソンをからかったりしてることがよくあるけれど、皮肉っぽいホームズとのやりとり、そもそもクールでコミカル。
だから映画の会話が現実離れしてコミカルなのも、エッセンスとしてむしろ原作に近いと思うんだな。話の枕に限らずいろんなシーンに散りばめられてるサービスはありがたい。

そんなわけで、原作の細かいところに潜んでるエッセンス(そのエッセンスの捉え方が私の好みに合ってるってことでしょうが)をうまく入れ込んで、現代的なアレンジをしている素敵なキャラクター設定だと思いましたよ。結果的によくイメージされるホームズ像からは離れてるんでしょうが、隠れた「ホームズのそんなところが実は好き」って要素がぎゅっとつまってて私は気に入りました。アイリーン・アドラーが峰不二子みたいになっちゃうところは、まあご愛敬で。

きっとホームズ物をとても愛している人の発想だろうと想像できて、観ている間とても楽しかった! 続編あったら劇場に行きますよ。
posted by chiyo at 01:58| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月12日

いつまでも饒舌に。ロメール死去に寄せて

私が最も敬愛する映画監督エリック・ロメールが亡くなりました

『我が至上の愛 アストラとセラドン』を最後に引退することは明言されていたので、
もう彼の新しい作品を観ることができないのか、
という点でのショックは、それほどありません。(その時の当blog記事
しかし、もう本当に、ロメールに関わる何かが二度と進むことがないのだと思うと、
悲しさはじわじわと沁みてゆきます。

ロメール作品を語るとき、「みずみずしい」という言葉は、
誰もが用い、もう手垢にまみれている気もします。でも、
映像と言い、物語と言い、「みずみずしい」という言葉を
もう他のものには使えないのではないかと思うほど、
本当に「みずみずしい」が似合う作品群です。

そのみずみずしい感性と、時に神経症的に、時に楽しげに、時にうんざりして、
ああでもないこうでもないと、おしゃべりする登場人物たち、
ありそうでなさそうな物語、と呼んだ瞬間、
いやいや、なさそうだけどありそうな物語、と言いたくなる、
絶妙なバランスで出来上がった物語。

私はあなたの作品に出会わなければ、
ここでこうして映画をテーマにしたメールマガジンを発行することは
なかったかもしれません。
ひょっとしたら、フランスという国への興味も、
そこまで長続きすることもなかったかもしれません。

あなたの新しい作品はもう観られません。
そもそも珍しかったあなたの声を聞き姿を見ることも、
新たなインタビュー記事を見ることもありません。

しかし私は、あなたの作り出した登場人物のように饒舌に、
あなたの作品のこと、人生のこと、恋のこと、友情のこと、
いつまでも語り続けたいと思います。

一ファンが言うのも、おこがましいような気がしますが、
本当にありがとう。
posted by chiyo at 20:23| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月11日

メルマガ1回お休みです。

全世界200人くらいの「欧州映画紀行」をご覧のみなさま、
いかがお過ごしでしょうか?
(もうちょっといるかな。いるといいな。
発行部数は900ちょっとだもんね)

今週、急にやることがパタパタンと増えてしまって、
ホントは昨日が発行日でしたが、発行がかないませんでした。

んなわけで、1週お休み。
せっかくだから、次回予告でも。

『ランジェ公爵夫人』を観て、
恋愛のシーソーゲームやら、フランス映画らしい会話の重ね合いやら、
とっても面白かったのですが、どうもこの作品について書く、となると、
面白いものが書けない気がして、断念。

でも、ジャック・リヴェット作品にしちゃ短い(137分)し、会話劇、コスチュームプレイの好きな方にはおすすめの作品ですよ。

どうしようかなー、と考えていたら、
セドリック・クラピッシュの『PARIS-パリ-』がDVD発売されていました。
フランス映画祭で観て以来。もう一度DVDで観直すのが、楽しみです。
来週は、『PARIS-パリ-』で書く予定です。

フランス映画祭で観たときの記事はこちら



posted by chiyo at 10:19| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月31日

秋の、勝手にロメール祭り

こんなメルマガ&blogをやりながら、実はそんなに映画マニアじゃない私。
誰かが映画談義をしようと近づいてこようもんなら、
キャンッと退散するか、ツルンッと気配を消すようにしてる。
観た映画のことは知ってるけれど、観てない映画のことは全然わからないのだよ。
映画好きの人の話を聞くのは大好きだけれど。

そんな私も、この話題なら、いくらでも深くしつこく語れましてよ、てのが、
エリック・ロメール監督である。

1920年生まれのエリック・ロメールは、
「体力の限界っ」を理由に引退を表明(脚色してます)、
そうして最後の作品となった『我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜』
が9月26日にDVD発売される。
それに関係あるのかないのか、
この秋には都内複数の場所でロメール映画の上映がされるようで、
「勝手にロメール祭り」として宣伝することにしてみる。
『アストレとセラドン 我が至上の愛』(DVDタイトル)は、
発売後にメルマガで取り上げることとして、
早稲田松竹アテネフランセ文化センターでの上映作品について。

10月3日(土)〜10月9日(金)
『冬物語』
『恋の秋』
四季の物語シリーズとして
春、冬、夏、秋の順に『〜物語』が製作されているうちの2作だ。

本当に好きな人と行き違ってしまった女の子と、
彼女を好きな男2人の『冬物語』は、独特の慌ただしさと、
キンと冷えた空気に、冬を感じる。

もう恋なんてあるはずがないとどこかでいじけた中年女に、
長年の友だちがおせっかいをはたらく『恋の秋』は、
ぶどうの収穫、ゆっくり寝かせて濃厚にワインになる豊穣に、
人生の豊穣と収穫が重ねられる、実りの秋を感じる作品。

どちらも、それぞれの理由で人(男)を振り回す女がいて、
チャーミングだ。
そしてどちらも最後にははじけるような笑顔が広がる。

以前に書いたレビューはこちら
『冬物語』
『恋の秋』

9月29日(火)〜10月8日(木)に
アテネフランセ文化センターで開催されるイベント
「フランス映画の秘宝」の中で、
以下の日程で『三重スパイ』が上映される。

10月1日(木)16:30〜
10月3日(土)14:10〜
10月6日(火)18:30〜
10月8日(木)18:30〜

この作品は、映画祭やこうしたイベントでは上映されたことがあるものの、
日本では未公開の作品であり、DVD化もされていないので、
(なかなか観られなかったので、私はフランスのDVDを購入した)
ここを逃すと観られないかもしれない。という意味では特におすすめ。

1936年、パリに暮らすギリシャ人の妻とロシア人の夫。
夫がどうやらスパイ活動をしているらしいが、
どの国のスパイなのか、何のために何をしているのか、
夫婦は話せば話すほど、真実が何かがわからなくなっていく。
「スパイ物」とくくれば異色だけれど、そこはそれ、
ロメール独特のテーマ「饒舌さ」「うそ」が絡み合う、
実はぶ厚い作品。

この作品で夫を演じるセルジュ・レンコは、
『パリのランデブー』の第2話、「パリのベンチ」で、
「いかにも」な文学好きフランス人である「男」を演じていた。
この役者さん、私にはちょっと気になる存在だ。

そんな訳で、ロメール好きな皆さん、
ファンってほどじゃないけれど、ちょっと気になってる皆さんは、
どうぞ、ロメール祭りにご参加を!
posted by chiyo at 23:38| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月06日

シャルロットとイヴァン

ローランギャロス(テニスの全仏オープン)を見ていたら、
観客席のシャルロット・ゲンズブールがアップで映されていた。
目と髪しか映ってなかったので定かではないけど、後ろにいたのが、
だんなさんのイヴァン・アタルだったんじゃないかな。
やっぱり夫婦ででかけても、
子供の頃から有名人のシャルロットばかりが注目されるのかなあ。
なんてどうでもいいことを考えてしまった。

シャルロットとイヴァンの映画
前に書いた物。

僕の妻はシャルロット・ゲンズブール
フレンチなしあわせのみつけ方
posted by chiyo at 14:15| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月11日

マリオンとギョームて言ったら

フランス映画を特集していたフィガロ ジャポン 2009年 5/5号 を読んで、
マリオン・コティヤールとギョーム・カネがつき合っているんだと知った。

へーーー。

有名人の私生活には、あんまり興味のない私だけど、
(そういえば、知り合いの恋愛話も、よほど親しい人じゃないと興味ないかも)
思わず反応したのは、1本の映画のせい。
このご両人と言って私が真っ先に思い浮かべるのは
『世界でいちばん不運で幸せな私』だ。
幼なじみの恋が、悪趣味なゲームでしかつながれないカップルとなった、
毒気たっぷりの(私に言わせれば)純愛物語。

「あの二人というとこんな恋?」てな想像は、
もちろん違うとはわかっているけれど、
なんだか、この映画の恋を思い浮かべて、にんまりしてしまう。
それだけ、『世界でいちばん不運で幸せな私』の演技が自然だったてことかなあ。そうかあ?

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2009年03月05日

フランス映画祭2009

今年は、時間がとれそうにないから、
フランス映画祭は残念ながら、不参加となりそう。

どんな作品がくるのかくらいは見ておこうと、
公式ホームページをのぞいたら、
あらら、最近は、六本木ヒルズ集中開催なんだ。
渋谷のユーロスペースやBunkamuraでの同時多発的なのはやめたのかー。

作品ラインナップを見たら、
この監督の作品が来たら、いち早く観たいよ〜、てなものはリストになくって、
残念なことにといおうか、幸いなことにといおうか(どうせ行けないから)。

会場が東京に移ってから、すでに配給が決まってる作品が多くなった気がする。
長編12作品中、6作品がすでに日本公開が決まってるんじゃあ、
有料の試写会みたいなものじゃないか。
もっと、ここじゃないと観られない公開未定作品をたくさん持ってきてほしいぞー。

横浜でやっていた頃は、
もうちょっとのんびりとした文化の祭典ぽかったような記憶がある。
「昔はよかった」みたいな郷愁かなあ。
(横浜の頃は行くのが面倒とぶつぶつ言っていたんですけどね)

きっと行けないんだから、虚しい作業ではあるのだけれど、
もし、私が観に行けるなら、なににしようかな、と考えてみる。

『顧客』(Client)
ジョジアーヌ・バラスコさんが、そこ意地悪く、おかしく、作ってそう。
いわゆる「フランス映画」ぽい人間模様を描いてくれるんじゃないかな。

The Internet Movie Databaceのレーティングはさほどでもないけれど。
ユーザーレビューには「悪くないけど、だから、なに?」てなことが。

そのIMDbでレーティングが高いのは(7以上だと「高い」って印象)
『西のエデン』(Eden à l'Ouest)
『ジョニー・マッド・ドッグ』(Johnny Mad Dog)
んー、今の私には、テーマが重い感じがする。
(IMDbは、社会派ドラマはだいたい高い点がつく)

ポストモダンを引きずる私は、いまだに重軽がいい!
て公言してはばからない。
コメディで、立ち止まってみると、
ちょっと考えさせられちゃったりもするなんて、
ストレートに私のタイプ。

もしくは、盛り上がりとは縁がないけれど、
んふって笑えて、その映画が目の前で展開されているだけで、
もう楽しいとか。あ、それってもう恋してますね。

あとは、公開が決まっているけれど、
動物モノにめっぽう弱い私は
「動物に助けられる」なんてシチュエーションにはキュンとくる。
『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』Survivre avec les loups
子供だましっぽくもあるけれど、ひかれる1本。

虚しき作品選びは終わり。
ぽんと時間があいて行けるといいなあ。





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2009年02月27日

映画が所属するところ

ここのところ、ニュースも新聞もあんまりきちんと見ていなくって、
あー、なるほど、あの騒ぎはルパンのしわざだったの、へー、
ってなくらいにしか、時事問題の知識のない私。

このあいだっから、おくりびと、おくりびと、って騒いでいるけれど、
ところで、フツーのアカデミー作品賞っていうのは、何がとったんだろうかい、と、
今になって調べてみたら、『スラムドッグ$ミリオネア』。
インドが舞台のイギリス映画だった。
ふうん。何となく、アカデミー賞ってアメリカ映画の賞の気がしていたけれど、
英語なら作品賞で、英語じゃなけりゃあ外国語映画賞なのか。
(正しくは前年1月1日から12月31日の間にロサンジェルスで公開された作品が
ノミネート対象だとか、wikipediaに書いてあった)

こういうところに、変に反応してしまうのは、
そもそもこの『欧州映画紀行』が、
ヨーロッパ映画に限定して作品をチョイスするというコンセプトにしているから。
こういう限定の仕方をしてると、映画に対しても、私自身のためにも、読んでくれる人のためにも、
何の益もないのではなかろーか、とか、定期的に反省する私にとって、
何となーく、「映画と国籍」には反応してしまい、
その度、胸がチクリとズシンとなるネタなのだ。

定期的に反省したところで、
でもでも、まあ、ヨーロッパ映画じゃなきゃ映画じゃないとか、思ってるわけじゃなし、
別に大丈夫でしょーよ、まあ、コンセプトとかは決めなきゃやってられないし、
まあまあ、国籍で決めるっつうと狭量に思えるけれど、文化圏といえば根拠ありそでしょ?
と、何度も出てくる「まあ」にありったけの後ろめたさと甘えと楽観とを込めて、
考えるのをやめにする。

100年後には国の区別はどんどんなくなるのか、
距離は縮まるけれど、
そのかわり、もっと小さな「集落」や「文化圏」が内に内に形成されるのか。
世界はどこへ行く?

ダニー・ボイル監督は、前にメルマガでも『ミリオンズ』という作品を取り上げた。
子どもと大金をめぐる、コミカルでスリリング(微笑)でハッピーな、
私もお気に入りの作品だ。このイギリスの子どもと、今度の映画のインドの子どもは、
ずいぶんに環境が違うけれど、
何となく、爽快でコミカルハッピーな作品の雰囲気は、
共通しているんじゃないかなと想像している。

インドでは今、主演の子どもたちが引っ張りだこらしい。
そりゃあそうだろうなあ。
日本でも山形が大賑わいハッピーカモーンって感じらしいし。
「舞台」てくくり方も、あんだよね。
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2008年03月19日

フランス映画祭:ロメールとクラピッシュ

なんだかんだで時間が経ってしまったけれど、フランス映画祭のご報告。
今年はエリック・ロメールの『アストレとセラドンの恋』、セドリック・クラピッシュの『パリ』の2作品を鑑賞してきた。

こちらの記事で、ロメール引退についてキャンキャン言ってた私。どうやらアルシネテランさんによって公開されるらしい。すばらしい。
一足早く観てきた「最後の」作品は、ロメールファンにはたまらない、昔ながらのロメールに帰ったような作品だった。

17世紀の小説が原作という、韻をふみふみなセリフ。
木々と芝生に陽の光がまぶしく、鳥がさえずり、そして画面はもちろん(?)スタンダードサイズ。思いこみと頑固さで互いを一途にただただ思う一組の恋人が、今が21世紀であることや、様々な事柄が入り組んだ現代社会のありようとか、世の細かいことは全部忘れさせてくれちゃう。


巨匠が巨匠でしかできない方法で楽しんで作ったことが感じられる作品だった。
ただ、どうなんだろう。「フランス映画が好き」なんて人を含めた、一般の人に受ける作品とは、言えない気もする。私も、誰かに勧めるかっていうと、自信ないな。
ロメール好きには、外さないと思うけれど。

舞台挨拶に出てきた主演お二人、特に、是非やってみたい役「セーラームーン」な女優さんが、妙に現代っ子なのも印象的でございました。

そしてクラピッシュの『パリ』。
監督が大好きなパリの街を舞台に、各登場人物が、ほとんど関わらなかったり、濃密に関わったりする群像劇。
ロマン・デュリス、ジュリエット・ビノシュ、ファブリス・ルキーニ、などなど俳優陣が豪華だ。いろんな人がいろんな風に暮らしてる、「パリ」という街の力と、人が抱いている孤独とが、悲喜こもごもに描かれる。

『猫が行方不明』などに出てくるマダム・ルネ(ルネ・ル・カルム)がご健在なのも嬉しかったな。

これもぜひ日本で公開してほしい1本。


本当はもう何作か観に行きたかったけれど、2作品で密度の濃い時間を過ごすことができたので、大成功の映画祭でした。
posted by chiyo at 17:13| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月22日

天才の映画、そしてサッカー

本日はメルマガお休み。
かわりに昨日観た映画のおはなし。

クラシックブームに乗って買い付けちゃった作品のうちの1本かなあと、
あまり期待しないで観た『僕のピアノコンチェルト』、思いがけずアタリだった。

幼いうちから、遊ぶより事典を読むのが好きな天才少年ヴィトスは、ピアノでも神童と呼ばれる才能を発揮する。
学校は次々飛び級、先生を小馬鹿にして、どこも通わせてくれなくなってしまう。
両親は必死に彼の才能を伸ばそうとするけれど、本人は天才をやっていくのがしだいに重くなってくる。

「天才少年」というキャラクターが、いい感じのバランスで楽しくハッピーな荒唐無稽さを生み出している、小気味よいコメディだ。
そして、ピアノの神童ぶりはホントなところが何よりいい。
ヴィトスを演ずるテオ・ゲオルギューは、撮影時12歳。すでにヨーロッパ各地で公演するピアニストとして活躍中だ(現在15歳でやっぱり活躍中)。
ピアノをメインにするのなら、ちょっと演技ができる俳優にピアノを弾くフリさせるより、ピアノを弾ける人に演技させる方が、ずっと早いと思う。

水曜(誰でも1000円デー)に行ったせいか、劇場(銀座テアトルシネマ)は満員。連休中に行くのなら、ちょっと早めの行動がおすすめ。

そして夜は、国立競技場でサッカーのU-22日本代表が、オリンピック出場権を獲得した試合を観戦。寒かった!
何度もうぎゃーっと悲鳴を上げたけれど、何とか守りきって、終わりよければすべてよし。
オリンピック出場が決まって、私自身もワイワイ喜んでいたから、あまり心を払わなかったけれど、サウジアラビアも本当にいいチームだった。彼らの健闘を讃える時間が用意されてもよかったなあ。
posted by chiyo at 22:26| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月04日

ロメール、引退しちゃうのか……

私の好きな映画監督、いろいろいるけれど、
その王様は、エリック・ロメール。
ロメールのことを語ったら、恐れ多く不遜にも
なんだか手前味噌な気さえしてしまう。
だってロメール、やっぱりロメール。

フランスのニュース記事で見かけた、「ロメール最新作を限りに引退」のニュースが、私の胸をチクチクと揺すっている。

http://afp.google.com/article/ALeqM5iYB9xdKQBHhvOncifwXR90RzByQw
(すぐにリンク切れになりそうな記事ですみません)

そりゃあ、87歳。
いつか引退するのだろう。
でも、なんか、この人は、90になっても100になっても、
若い娘を撮りつづけているような気がしていた。

もうあと1作しか、彼の作品が観られないということ。
ガツンとショックってわけじゃない。
自分でも不思議なほどに。
記事を読んだときは、「あ、そうなの」としか思わなかった。
ああ、でも、惜しさと寂しさが、じわじわときそうだわ。

最新作というのは、現在開催中のヴェネツィア映画祭の
コンペに出品している『アストレとセラドンの恋』。
17世紀の小説を脚色した作品だそうだ。

賞をとるとか、どうとうも思ってこなかったけれど、
(ご本人もまさか賞をとりたいと思ってるとは思われたくないらしい)
今回ばかりは、金獅子賞でもとってほしいなあ。
じゃなきゃ、この作品、日本で公開されないでしょう。
前作(長編のみでカウントすると)『三重スパイ』も
公開されなかったしさ。
(どこかの会社が買ったまんま塩漬けにしてるんじゃないかな)

んー、そうか。
彼の作品は、もうあと1作しか、観られないか。


posted by chiyo at 00:19| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月15日

人生は、奇跡の詩

ロベルト・ベニーニの新作。
東京では19日に終わってしまうからということで、あわてて土曜日に行ってきた。いまいちお客さん入っていないようで、つまんないのかなー、と不安になりながらの鑑賞だったけれど、楽しかったなあ、私は。

話の骨格は、『ライフ・イズ・ビューティフル』の前半部分や、『ロベルト・ベニーニの Mr.モンスター』なんかと同じ、ピュアピュアピュアな恋愛もの。ロマンチックに色づけしたファンタジー。ていねいに張った伏線で笑いを起こして、最後はきれいにつなげてちょっとサプライズもある。

いろんな掲示板やblogやら見ると、乗れる人は乗れるし、そうじゃない人はだめ。あいかわらずしゃべりまくって口八丁のベニーニにはやっぱりちょっと辟易かもね〜なんて意見が多い。

でも、今まで私が観た中では、いちばんあのしゃべりまくり、口八丁ぶりがストーリーの中で腑に落ちたのは今作。しゃべりまくりがあるから悲しいところも出てくる雰囲気がよく効いてたように思う。

乗れないね、って意見のなかには、戦争のなかで不謹慎だ、と言う人が多いようだった。確かに、理想の女性を追ってイラクに行くって、設定は、何もイラクじゃなくてもいい気がしたし、ジャン・レノ扮するイラク人詩人の話なんかちょっと中途半端だなあ、というのは否めない。でもだからといってイラクっていう設定は変だ、とか、戦争を軽く見ていて人の感情を逆撫でする、という理由もあんまり見あたらない。

そんな訳で、興味はあるけど、なんか評判悪いみたいだし、と観てない人には、おすすめしますよ。
posted by chiyo at 02:42| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月04日

BOW30周年のお祭り

日比谷のシャンテシネで、
フランス映画社のBOW(Best Of the World)シリーズ30周年を記念した
映画祭が開催されている。

http://www.bowjapan.com/bow30/index.php

「ミニシアター」なんてものがなかった時代に、
世界のちょっと小難しいかもしれないけど素敵な映画たちを
数多くつれてきてくれたこのシリーズの功績って大きいと思う。

地方に暮らしていた高校生時代、1ヶ月とか2ヶ月遅れでやってくる
バウ・シリーズを見てはちょっと大人な気分に浸ったもの。
シャンテのパンフにもなんだかあこがれたなあ。

これを機会に全部、は無理でも半分くらいは見てやるぞ、ていうような
もんのすごいシネフィルではない私だけれど、せっかくだから、
2、3作品をチョイスしてお祭りには参加したい。


『エル・スール』(よかったけれど、朝10時に観るにはちょっとなあ)
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(夫のマイフェイバリットだから2人で)
などをチョイス。
来週月曜(8月7日)にも2作品見に行ってきます。
あと1週間くらいになってしまったけれど、お近くの&時間のある方は
ぜひ日比谷に足を運んでみてください。

posted by chiyo at 23:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月23日

美しき運命の傷痕

キェシロフスキの遺稿を『ノー・マンズ・ランド』のダニス・タノヴィッチが監督した、と聞いて楽しみにしていた映画『美しき運命の傷痕』を渋谷で観てきた。

予想以上によかったー。DVD化されたらメルマガでも取り上げよう。
かつての心の傷を心の奥にずっしりと、じくじくとしまい込んでいる女性たちの心理描写が素晴らしいし、少しだけミステリアスに、この姉妹と母に何が起こったのか、最後まで明かされないストーリー展開も面白い。
ジャン・ロシュフォール、ジャック・ペラン、ジャック・ガンブラン、ミキ・マノイロヴィッチ、脇役までがびっくりするほど豪華。

でもなー、日曜日の午後にしては、空いてたな。
この映画、上に書いたようなミステリアスな展開のせいもあって、最後まで見終わった状態じゃないと、なかなか良さが説明できないんだな。いわゆるネタバレじゃないと、語りにくい。
きっと宣伝が難しいんだろうな。まだ観ていない人に見どころを伝えるのは大変だろう。
その上邦題がややこしくて覚えられない。

でも、私はとってもいい作品だ、と思ったから、これで「あの作品コケた」たことになったらもったいない。よって、見終わってきた人が口コミしなきゃ。と、今夜は使命感に燃えてみた。
観ようかな、どうしようかな、と迷っている人、何か、しっとりした映画を観たい人。おすすめ! テーマは少し重いけれど、観賞後に重苦しさは残らない。

私にとっては、前々から欲しかったのに手に入らなかった『ふたりのベロニカ』のサントラが手に入ったのも収穫でしたー。

posted by chiyo at 23:55| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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