2022年08月07日

No.274.27 番外編・エージェント物語

================================================

欧 州 映 画 紀 行
                No.274.27   22.8.7配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 華やかな荒唐無稽と、小さな人間が繰り出す悩み ★

「まぐまぐ!」より、前回の配信から1年を過ぎたら休刊にするよ!
と脅されて、いや、お知らせをいただき、急ぎご挨拶の号を発行します。
前回からもう1年も経ってしまったとはただただ驚きで、
そしてたぶん、この1年、ヨーロッパ映画を観てはいないのではないかと。

ということでこれ!と紹介できる作品の持ち合わせもないので、
番外編として、Netflixで配信しているフランスのドラマを紹介します。

『エージェント物語』(原題:Dix pour cent 英語題:Call My Agent!)
シーズン1〜4(以降続く予定)


舞台はパリの芸能エージェント事務所。駆け出しから大スターまで、たくさんの俳優たちが所属する。
毎回、スターのわがままやらこだわりやらいろんな巡り合わせやらで、撮影ができない、企画が頓挫する、高額な賠償が必要になる、などなどのトラブルが起きて、なんやかんやで丸く収まるコメディタッチの作品。そして、毎回のスターは、本人名義でゲスト出演するスターというのがシリーズの肝だ。

シリーズの最初の方は、フランスらしく誰もがあちらこちらで悪態をつき、華やかな芸能界の住人が右往左往する荒唐無稽な様子を、高みの見物のように笑って眺めていたけれど、回が進むにつれて、エージェントとそのアシスタントたちの人間模様や事務所の存続、そんなあれこれで、ちまちました等身大の悩みに感情移入も余儀なくされる。それが湿っぽくて残念なような、身近に感じられることが嬉しいような。

原題の「Dix Pour Cent」は、「10%」、俳優のギャラからエージェントが持っていく取り分のことだ。シーズン1ではプロデューサーとアートディレクターに映画監督のセドリック・クラピッシュの名前があり、その後のシーズンは作り手もいろいろ変わっているようだ。シーズン1では、ゲストスターといっても、よく知らない人も多かったが、シーズン2以降は、ファブリス・ルキーニ、イザベル・アジャーニ、ジュリエット・ビノシュ、ジャン・デュジャルダン、モニカ・ベルッチなど、これぞスターな面々が出演。だんだん人気が出たシリーズなのかもしれない。シーズン5も企画中らしい。

1回1時間程度と気軽に観やすい長さ。夏休みにぜひ。
https://www.netflix.com/jp/title/80133335

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

全体の内容に変更を加えない「転送」は自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2022 Chiyo ANDO

---------------


posted by chiyo at 15:28| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月09日

No.274 パリのどこかで、あなたと

================================================

欧 州 映 画 紀 行
                No.274   21.8.9配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 描かれなかった物語に思いを ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『パリのどこかで、あなたと』
製作:フランス/2019年
原題:DEUX MOI 英語題:Someone, Somewhere

監督・共同脚本:セドリック・クラピッシュ(Cédric Klapisch)
出演:フランソワ・シヴィル、アナ・ジラルド、カミーユ・コッタン、フランソワ・ベルレアン、シモン・アブカリアン
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
がんの免疫治療を研究する女性メラニー、ネット通販の物流倉庫で働く男性レミー。二人とも30歳くらい。隣同士の建物に住み、ちょうどベランダは隣り合っていて、近所や地下鉄で何度もすれ違っているが、お互いまったく認識していない。
メラニーは前の恋人と別れてから、いくら寝ても眠くてしかたがなく、仕事に支障をきたしている。レミーは「労働環境改善」のもとにロボットが導入されて同僚が解雇され、自分だけ昇進することへの罪悪感を抱えて不眠症に。地下鉄で急に倒れてしまう。
二人はそれぞれ心理セラピストのもとに通い始める。

地下鉄で隣同士に座っていたり、一方は眠気を抑える薬、一方は眠れる薬を求めて薬局のカウンターで隣同士で相談していたり、何本もの鉄道が見えるベランダから毎日同じ景色を眺めていたり、そんな二人を観客は「神の視点」で眺める。
そして、孤独の中でもがいたり諦めたりしながら、偶然にも同時期にセラピーを受けるようになった二人を、「友達になったらきっとわかり合えるだろう」「出会えたらきっといい関係になるんじゃないの?」「早く出会って!」「気づいて!」と、おせっかいな応援を始めることになる。
セラピーを続けるうちに明かされていく過去や事情や思いを知るにつけ「ああ、絶対出会うべきなのに」と観客はやきもきし、当事者二人はちっとも気づかない。

すでに恋人同士だったり、恋人になりそうなところまでいったけれど、離ればなれになってしまって、その後いろんな偶然やら誰かの意地悪やらですれ違いを重ねる物語は定番ではあるが、はなっから知り合ってもいない二人にやきもきする物語は、たぶんあまりない(私が知らないだけかも)。

何もことが起こっていないのだから、「やきもき」といっても、心拍数が上がったり下がったり、手に汗を握ったり、そんな振れの大きいものではない。
静かに、二人それぞれの人生での葛藤を見つめ、「ここで出会えたらどんな会話になるかな」「ここでお互いに挨拶したら?」無数の可能性を巡らせながら、また先を観る。

ひとつのストーリーを映し出すひとつの映画にも、そこに映し出されなかった物語が無限にある。ストーリーが終わった後にも、その続きが無数に連なる。当たり前といえば当たり前だが、改めてそんな思いを強くする。決してひとつきりではない、描かれなかった物語を思い起こさずにいられない作品だ。


■COLUMN
トンネルをくぐり、時には地上に出て、何本もの路線が交差する地下鉄。無言の乗客が大勢乗る車内。せわしなく人が行き交う駅。
大都会の慌ただしい乗り物から、主人公の二人はそれぞれのアパルトマンへ帰っていく。ベランダからは、郊外列車や国際列車が走るのが見える。そのベランダからカメラが遠ざかっていくと、建物の背後、小高い丘にはサクレ・クール寺院がずっしりと控えている。

冒頭の映像の数分で描かれるパリの景色だ。ルーブル美術館やオルセー美術館、ノートルダム寺院のあるセーヌ河畔のような観光と文化の共存する華やかさではなく、凱旋門やシャンゼリゼ通りのように豪奢な広がりではなく、サクレ・クールという観光名所がありつつ、だいぶん庶民的でだいぶんがやがやとしたあたり。庶民的な下町とはいえ、たくさんの隣人に囲まれながら、お互いに知ることはなくひしめき合って人が暮らしている。

クラピッシュ監督自身、『猫は行方不明』『PARIS-パリ-』に続く「パリについての3作目」と話している(https://fansvoice.jp/2020/12/10/someone-somewhere-interview/)。
2人の日常を眺めていると、本当にその街、そのあたりの空気を一緒に触れたかのような気になる。観光で訪れるようなパリとはちょっと違う、日常のパリに入りこんだかのようだ。

それは、風景をうまく映し出しているからだけでなく、スマホを使った手軽な出会いなど、仕事に人生に悩みながら生きる若い人たちの暮らしを丁寧に描いて見せる、ドキュメンタリー性も大きな要因だろう。

二人ともいきつけにしているアラブ食料品店(コンビニ的に夜遅くまでいろいろなものを売っている店)は、こだわりのある店主が、お客に合わせてどれを選んだらいいかアドバイスをしてくれて、近所にあったら面白そうだと思う。うまいこと高い物も買わされてしまいそうだけれど。(魚沼産の米を勧めたりしているから、相当マニアック?)
この店がどこまでリアリティがあるかは別として、人情味のある個人店と、レミーが働く無機質な物流センターと、その差が象徴的だ。二人の好みが合うことを示す符号でもある。

『猫は行方不明』との関連を思い起こさせる、二人をつないでくれそうな行方不明の猫が登場し、同作以来クラピッシュの常連となったマダム・ルネも、ちらりと登場している。マダム・ルネは、撮影後の2019年6月に100歳で亡くなった。クラピッシュ作品に彼女が映ることがもうないと思うととても寂しい。


---------------
★DVDなど

『パリのどこかで、あなたと』Amazonプライムビデオ(ネット配信)¥400円〜
https://amzn.to/2Wsndlg

価格は2021年8月8日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2021 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 18:08| 東京 ☀| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月31日

No.273 冬時間のパリ

================================================

欧 州 映 画 紀 行
                 No.273   21.7.31配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 変わりゆく姿を丁寧に ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『冬時間のパリ』
製作:フランス/2018年
原題:DOUBLES VIES 英語題:NON-FICTION

監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス(Olivier Assayas)
出演:ジュリエット・ビノシュ、ギヨーム・カネ、ヴァンサン・マケーニュ、
   クリスタ・テレ、ノラ・アムザウィ、パスカル・グレゴリー
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
編集者のアランは、本の売り上げが落ちる中、ブログやSNS、電子書籍など、デジタル化戦略に取り組む悩ましい日々。部下と不倫中。

女優のセレナは、アランの妻。人気テレビドラマのシーズン4を続けるかどうか考え中。アランの浮気を疑うが、実は自分も長く不倫している。

作家のレオナールは、旧知のアランに新作を見せるが、出版できないとの返事を聞きショックを受ける。実はセレナの不倫相手。

政治家秘書のヴァレリーは、社会貢献できる仕事に夢中。出版できないと落ち込む夫がなぐさめてほしがっていて鬱陶しい。

と、このようにストーリーを説明すると、なんだかとんでもないどろどろ不倫ストーリーに見えるだろう。原題を直訳すると、ダブルライフ(の複数)。別の生活を持ちながらお互い秘密を抱え込んでいる泥沼のイメージ。
いや、しかし、そんなことはないのだ。こっそり不倫しあっている状況は、まあ、フランスの大人の映画でよくあるところ。そのことで世界や友情や生活が崩壊したりはしない。

この作品の肝は、世の中の変化を丁寧に見つめて切り取っているところだと思う。渦中でもがく人とその周囲のかしましさを、静かに精緻に映し出す。
アランは老舗出版社の編集者だが、SNSの書籍化や既刊の電子化を迫られ、本をつくって生き残れる時代ではないという流れにさらされている。
フランス映画らしく、友人同士が集まって飲み食いしながら交わされる、読み物が本からネットにうつっていくこと、映画が配信になっていくこと、紙から電子媒体に替わっていくことetc. そんなあれやこれやの議論は、ちょっとややこしいこともあって、「今なんて言ったの?」とリモコン片手に戻しながら堪能した。私もちょっとひと言言いたいな、なんて思いながら。

問題がフランスも日本も共通で、同じ議論のネタを抱えているあたりも、今風の変化のひとつだろう。
登場人物が、出かける前にいくつものデバイスを充電ケーブルから取り外して忙しくカバンに詰め込んだり、パーティ中のスマホを嫌がられたり、なんて日本でもありがちなシーンには、デジタルで「地続き」になったグローバルな世相が見える。

レオナールをずっと担当してきたアランだが、彼の作品を古くさいと感じていて、女性の描き方も気にくわない。だから出版にも消極的なのだが、おそらくこれは、アランの好みだけでなく、世の中の流れや変化とも連動していることなのだ。
レオナールはいつも私小説的なものばかり書く作家だが、モデルにされた元妻がネットで怒りを表明し、野次馬たちがサイン会にやってきてそれを批判してみたり。古典的な小説を書くレオナールもネット社会が生み出す「創作のあり方」の変化にさらされている。
でも結局、彼の小説は話題になったりと、なにが流行るかわからないあたりも変化のひとつだろう。

複数のダブルライフの問題も、文化のデジタル化も、某かの決着がつくような、つかないような。
私たちは変化にさらされたり、自らが変わったり、変わるを余儀なくされたりして、そしてこれからも生きていくんだろうなあ、そんなことを思った。

■COLUMN
ずいぶん時間があいてしまったが、去年の大晦日に「なにかリクエストくださいねー」と投げかけたところ、「ジュリエット・ビノシュって最近はどんな感じ?」というのと、セドリック・クラピッシュの『パリのどこかで、あなたと』を挙げていただいた。
ジュリエット・ビノシュが出演している、気に入ったこちらを今回は取り上げた。クラピッシュの新作は、次回配信できるようただいま準備中。

彼女の日本での最新作品は、今年の5月に公開された『5月の花嫁学校』だろうか。私は未見だが、1967年のアルザスを舞台に、夫の死をきっかけに女性の自由な生き方を模索する「花嫁学校の校長」を演じているそうだ。これも今回の『冬時間のパリ』に通ずるような、時代と自分の変化を考えられる作品なのかな、と思う。

ビノシュは1964年生まれ、現在57歳。実年齢に比べて若い役をよくやる印象がある。この作品で演じたセレナには幼い子供がいる。30代か40代前半くらいの設定なのだろう。以前に取り上げた是枝裕和の『真実』でも、小さな娘がいる設定だった。

顔や雰囲気がやわらかくて、貫禄ある中高年に見えないということ、また幅広い年齢を演じるだけの力もあるということだろう。これからは老人役もやるようになるだろうか。それも楽しみだ。
『冬時間のパリ』に照らしてみれば、年齢をもとにああだこうだということも、いろいろと人の考えが変化した今の風潮には合わなくて、軽々しく口にすることではないかもな、と私はちょっと及び腰でこれを書いている。

最近の主演作『私の知らないわたしの素顔』は、若さを失って悩む中年女性の話だ。年下の恋人に振られたことをきっかけに、SNSで年齢とポートレートを偽り元恋人の友人に近づいたら、恋に落ちてしまって……。ロマンスかと思いきや、どんな結末に連れて行かれるかわからないサスペンスタッチのストーリーだった。ピンと張り詰める緊張感が好きな人におすすめ。

さて、最後にもうひとつ。
『冬時間のパリ』という邦題は、前項でもふれた通り原題には似ても似つかない。ことさら冬が関係するわけでもないのだが、おそらく、同監督の『夏時間の庭』からの連想だろう。この作品は原題が『夏時間』だから妥当だが、両作品が特に関係しているわけではないし、冬時間の方はちょっと無理矢理ではないかなと思う。共通点といえばジュリエット・ビノシュが出ていることくらい? 確かに今回のビノシュのカラフルなセーターやロシア風の帽子など、冬ファッションはとても素敵だけれど。

---------------
★作品を観るには

『冬時間のパリ』Amazonプライムビデオ(ネット配信)¥400円〜
https://amzn.to/379TWOo

『冬時間のパリ』DVD ¥3,489
https://amzn.to/3yfBcZV

『私の知らないわたしの素顔』Amazonプライムビデオ(ネット配信)¥330円〜
https://amzn.to/3j1z4OW

『私の知らないわたしの素顔』DVD  \3,227
https://amzn.to/3j3N8aQ

価格は2021年7月30日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2021 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 14:51| 東京 ☀| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月02日

No.272 真実

================================================

欧 州 映 画 紀 行
                No.272   20.10.02配信
================================================

お久しぶりでございます。前回の配信から1年以上、世の中はすっかり様変わりして、見通しが難しくなっています。読者の皆さまは、変わりなくお過ごしでしょうか。
久しぶりに配信しようとしたら、「まぐまぐ!」は休刊扱いとなっていて、
「メルマ!」はサービスそのものが終了していました。というわけで、メルマ!でお読みいただいていた方には、ご挨拶もせずじまいでしたし、まぐまぐ!でお読みの皆さまにも、どのくらいきちんと届くのやらわかりませんが、気が向いたのでまた配信してみます。次がいつになるかはわかりません(すみません、苦笑)。

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、レンタルや配信でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 周到に、重層に折り重ねられたテーマを、あくまでも軽く、軽やかに ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『真実』
製作:日本・フランス/2019年
原題:La Vérite 英語題:The Truth

監督・脚本:是枝裕和(Kore-eda Hirokazu)
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、
   リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、
   マノン・クラヴェル、アラン・リボル、
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
フランスの大女優ファビエンヌのもとに、アメリカで暮らす娘リュミールがやってくる。ファビエンヌが自伝『真実』を出版したお祝いというが、事前の原稿チェックができなかったことに不満を持っている様子。できあがった『真実』を読んだリュミールはファビエンヌに文句を言うが…。
自伝と家族の再会をきっかけに、それぞれが過去と向き合っていく物語。


映画の始まりは風に揺れる木々の映像。濃い緑の群れに色づいた葉を持つ樹木も混じる。枝のすきまからは車の行き交う道路が見える。そんな開放感のある映像に、インタビューを受けるファビエンヌの声がかぶり、カメラは室内へ。記者の質問に苛立ち気味で、お茶を口に入れ「ぬるい」とひと言。いかにも大御所といった姿だ。

この映画、ほとんど事前情報なしに観始めた。「是枝裕和監督が、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを使ってフランスで映画を撮った」くらいの知識しかなく、だからカトリーヌ・ドヌーヴが女優役であることも知らなかったのだが、そんな状態で観ても、インタビュアーの質問から「女優」であり、受け答えの雰囲気から「大女優」であることがわかる。
他の女優のことをきかれて「あの人、まだ生きてる? お葬式に出なかったかしら」などと発言しているのは、大女優の自由さなのか? 認知症の問題? などと、緊張感のある雰囲気から想像を膨らませてみる。

そこへ、「英語を話す」家族づれがやってきて、フランスの国民的大女優というどっしりした世界に、何かがかき混ぜられる風が入りこむ。その辺りで、「家族の物語なんだね」と理解しはじめる私。
美しい映像で目線をつかみ、情報をぐっと詰めて仕立てた状況を観客に伝えて、物語に引き込む冒頭。私の好きなタイプの作品! と身を乗り出す。

『真実』と題された自伝に、真実が書かれていないとリュミールは母を責める。しかし、物語が少しずつあばいていくのは、「真実」はこれと指させるものなのか、子どもの頃の記憶は本当に正しいのか、実はあやふやなものかもしれないという現実だ。
親子の葛藤や行き違い、家族のつながり、突き詰めて掘り探れば、いくらでも重く痛いものになりがちなテーマであり、現実世界で私たちの誰もが抱え込む類のやっかいなあれこれだ。しかし、ここでは、あくまでも軽く、軽やかに物語は進んでいく。
重く繊細なテーマが、軽やかに繰り広げられる空気が心地よく、ずっとここに浸っていたいと思わせてくれる。


■COLUMN

ファビエンヌの映画撮影現場のシーンが多く、映画製作の世界を垣間見られるのもこの作品の魅力だ。
ファビエンヌが目下取り組んでいるのは、どうもB級映画らしいSF作品『母の記憶に』。これが劇中劇として差し込まれ、母と娘の関係は二層構造で描かれる。調べてみると、SF作家ケン・リュウの短編『母の記憶に』がベースとなっているとわかった。ケン・リュウ自身も、『真実』にはアソシエイトプロデューサーとして参加している。

不治の病で余命2年となった母が、娘の成長を見守るために、宇宙船に乗って経過する時間を短縮し、7年ごとに娘に会いにくる、という設定だ。ファビエンヌは、73歳になった娘を演じている。この劇中劇においても、「嘘」と「真実」、そして母と娘の関係というテーマが挟まれ、何年も若いままの姿でいる母親役を担う新進気鋭の女優との共演には、リュミールがこだわる「真実」との関係もあるらしいことが示唆される。
決してややこしくはないのだが、物語の中の要素が重層的に絡み合い、感情も知的好奇心もくすぐってくれて楽しい。

原作を読んでみたが、ほんの数ページのショートショートだった。「劇中劇」だから、作品のほんの少しの部分しか触れられていないのだと思い込んで観ていたが、原作が劇中劇の中でむしろ膨らませられていると思うくらいに、元は短い作品。原作を読むと、劇中劇として描かれたこの映画作品も完成を観たいと、よけいに思った。(現実の世界では『Beautiful Dreamer』というタイトルで短編映画になっているらしいけれど)

そんなこんなで、一度観た後に、周辺の調べ物をした後に、もう一度通して観て、新しい何かを発見してみたいと思う作品だ。


---------------
★この作品を観るには

『真実』Amazonプライムビデオ(ネット配信)¥400〜
https://amzn.to/2GktrM6

『真実 コンプリート・エディション』 Blu-ray ¥6,166
https://amzn.to/3ir3jN7

『真実』DVD ¥3,227
https://amzn.to/3cMYbBA

価格は2020年10月1日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2020 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 11:37| 東京 ☀| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月29日

No.271 おかえり、ブルゴーニュへ

=============================================

欧 州 映 画 紀 行
                 No.271   19.6.29配信
=============================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★その後もずっと続く人生に ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『おかえり、ブルゴーニュへ』
製作:フランス/2017年
原題:Ce qui nous lie 英語題:Back to Burgundy

監督・共同脚本:セドリック・クラピッシュ(Cédric Klapisch)
出演:ピオ・マルマイ、アナ・ジラルド、フランソワ・シヴィル、
   ジャン=マルク・ルロ、マリア・バルベルデ
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
フランス・ブルゴーニュ。10年前に「世界を見たい」とワイン生産を行う実家を飛び出したジャンが帰ってきた。父が末期だと知らせを受けたのだ。
再会を喜ぶ妹のジュリエット、「母の葬儀にも来なかったじゃないか」と怒りながら屈折ぎみに迎える弟のジェレミー。各々の反応を見せながら久しぶりに3兄弟が揃うも、まもなく父は亡くなってしまう。
残されたワインの仕事、そして畑や在庫を売却しない限り払えない相続税。家族はどうなっていくのか……。

予告編を観て、「相続税をどう払うか」を中心に据えたコメディかと思っていた。しかし、この映画は、なにか「中心となる話」があっていろいろなエピソードが展開するという「円」の構成ではない。各々の抱える感情のひだが、次々と重なり、そこにさらに状況やエピソードがつくり出す思いが重なり、そんな風に、どこまでも重なり合っていく「層」の構成だった。相続税の問題は、物語の終わりまで、ずっとその底に流れ続けるエピソードのひとつだ。
ついでにいえば、くすっと笑うシーンは多々あるが、コメディではなく人間ドラマという方がイメージに近いだろう。

そんな訳で、「この映画は、こういう話」と紹介することが難しい。

オーストラリアでワインを生産するジャンは、妻との間に問題を抱えていた。父の抜けた実家を手伝いながら、このまま帰る場所がなくなるかもしれないと落ち着かない。
家業を継ぐジュリエットは、プレッシャーにつぶされそうになっている。
裕福な妻の実家から婿養子のように扱われるジェレミーは、その状態にイライラしっぱなし。

そんな一人ひとりが抱える問題が、ちょっとずつほぐれていく様子に観客が寄り添う群像劇ともいえるし、ワイン生産の1年を追うドキュメンタリーの要素も持つ。ブドウの熟れ具合を吟味しながら、収穫時期を日単位で決める様子、その収穫時期が大きくワインの質に影響すること、ブドウ摘みのアルバイトを大勢雇い、宿泊場所を提供して最終日には大々的に打ち上げをする収穫、熟成時のテイスティング。ゆっくり経過する時間とともに眺めるワインづくりの実際は、どの描写も興味深い。ワイン生産を映画の素材だけに終わらせず、その仕事に重いリスペクトを払って見せているところがなんだか嬉しくなる。

問題や悩みがほぐれ解決していく様子をみて、すっきりしようと思ったら、それはちょっと失望につながるかもしれない。
でもそれは、決して、観た後「もやもやする」ということではない。彼らの人生は、これからもずっと続いて、その先でも悩みや苦しみは出てきて、その都度悩んで解決して、泣いたり笑ったりして続いていくんだろう。そんなある種の確信に近い感情だ。
移りゆくブドウ畑の1年を観て、繰り返す季節のイメージに引きずられるのか、過去から未来へと、大地が人々を結ぶ様子が連想されるのか。
解決するからいい。うまくいったからいい。そういうことではなく、そこにあることがそれだけで素晴らしい。そんな気持ちになれる。


■COLUMN

セドリック・クラピッシュ監督の作品は好きで、このメルマガで取り上げるのも6作目だ。
観終わって、いつもの作品とちょっと感覚が違うなあと思った。
作風が違うというほどではない。何かがほんのちょっとだけ違うかなーー、というくらい。

何日か考えていて、こんなことかなー、と思ったのは、観た後に、今観たものより、その後のものに気持ちが向かうということだ。物語が終わって振り返ることより、この先の彼らに意識が向かう。
これまでの作品だったら、あのシーンがおかしかった、このシーンがかっこいい、と復習をしたくなるのだが、それよりもここまでに描かれなかった「この先」を想像したくなる。
上に書いた「彼らの人生は、これからもずっと続いて」の思いだ。

物語の「大団円」のすっきりさよりも「この先、その向こう側」、よくも悪くもずっと続いていく仕事、暮らし、そんなものに意識が向かう。
それは私が年をとって「人生」ってものにからめとられて受け止め方が変わったのか、監督が年をとって描写方法が少し変わったのか。
年齢の問題にするのは安易に過ぎるかもしれないが。

「相変わらず」なところは、音楽がイイというところ。
私はそんなにサウンドトラックを好んで聴くほうではないが、クラピッシュ作品のサントラはいくつか持っている。
この原稿もサントラをかけながら書いた。おすすめ。
(リンク等は下を参考に)


---------------
★DVDなど

『おかえり、ブルゴーニュへ』Amazonビデオ(ネット配信)¥400円〜
https://amzn.to/2NfHeGG

『おかえり、ブルゴーニュへ』DVD ¥2,972
https://amzn.to/2ZMWjB2

オリジナルサウンドトラック CD ¥1,629
https://amzn.to/2NjhVDG

(↓iTunes↓)
https://apple.co/2JeY5UO

価格は2019年6月27日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アマゾンはアフィリエイトリンクです。

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2019 Chiyo ANDO

---------------

posted by chiyo at 18:18| 東京 ☁| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月25日

No.270 アクトレス 〜女たちの舞台〜

================================================

欧 州 映 画 紀 行
               No.270   19.05.25配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 不安定な心持ちが心持ちそのままの形でやってくる ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『アクトレス 〜女たちの舞台〜』
製作:フランス・ドイツ・スイス/2014年
原題:Clouds of Sils Maria

監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス(Olivier Assayas)
出演:ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、
   クロエ・グレース・モレッツ、ラース・アイディンガー、
   ジョニー・フリン、ブラディ・コーベット
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
国際的に活躍するフランス人女優のマリア・エンダースは、列車でチューリッヒに向かっている。かつて無名だった自分を舞台『マローヤのヘビ』に抜擢してくれた、恩人である劇作家の代理で賞を受け取るためだ。
授賞式後、『マローヤのヘビ』のリメイクへの出演オファーがくる。マリアが若い頃に演じた役は、売り出し中のハリウッド女優に決まっており、マリアは、相手役の中年女役を打診される。


映画は、列車のシーンから始まる。マリアの個人秘書・ヴァレンティンが、揺れる車内で電話を受けている。列車の揺れで、画面も大きく揺れる。走行音がうるさく、電話での会話がうまく聞こえない。電波が不安定で、電話が切れる。1本切れば、次々と着信し、よく聞こえない通話が繰り返される。

私は、ストーリーを何も知らず、「オリヴィエ・アサイヤス監督でジュリエット・ビノシュ、Amazon prime で無料かー」という程度の動機でこの映画を選び、上記のシーンを観た。
そうしたら、この最初ですっかり引き込まれ、揺れる画面の落ち着かなさ、聞こえない、ぶちぶち切れる不安定さ、どこか不穏な空気が全体から伝わってきて、あらすじを何も知らないから、「何が起きるの? ひょっとしてこの秘書が何か企んでいるの?」とぞわぞわしながら観ていたのだ。

何かすごく不穏なことが起こるかも、という私のぞわぞわは的外れなのだが、冒頭のシーンの揺れから騒音からひしひしと伝わる不安定さが、この映画の全体のトーン、テーマといってもよいと思う。

列車内で、件の劇作家ヴィルヘルムの突然の訃報がもたらされ、授賞式もどこか落ち着かずに進む。

かつて若々しさを前面に出して出演した作品に、今度は追い詰められ破滅する中年女の役をと言われ、女優として老いや衰えの到来を予感し始めるマリア。セリフをさらえば、劇中の中年女の追い込まれ様に自分自身が重なる。

作品の解釈をぶつけたり、若い世代の役者やアーティストを紹介したりして、自分なりの感性で秘書の仕事をしようとするヴァレンティンとマリアのすれ違い。
「円熟」のマリアに対する、奇行や目立つ発言もあり注目を浴びてときめく、若い共演相手ジョアン。

自分が何をしたいのか、この先どうなるのか、これでいいのか、このままじゃだめなのか。
女優という華やかな職業とその周りの世界が描かれているが、世界の誰もが、それぞれが立つ場所で、迷い、悩み、不安に陥ることだ。
はっきりと言葉で説明できないもやもやも含め、いろんな不安定さを、そのままの形で作品から心にダイレクトで伝える。そこに、よい悪いの価値判断はない。繊細で上品な作品だと思う。

■COLUMN
揺れてうるさい列車から、落ち着かない授賞式とパーティの喧噪へ。そして第二部に移ると、画面に広がるのは、どこまでも広い山岳風景だ。

息の詰まる場面から思わず深呼吸したくなるこの場所は、ヴィルヘルムが執筆に使っていた山荘のあるスイスのシルス・マリアである。マリアは、役作りのためここを借りるのだ。

風にそよぐ木々、眼下に広がる湖、どの方角にも連なり構える山々。そんな雄大な景色に心洗われるようだが、この景色も、物語の展開によって、冷たく映ることもあれば、おどろおどろしく映ることもある。

山の天気のように変わりやすいこの印象は、ひょっとしたらこの作品自体の印象にも似ているのかもしれない。
私が受け取ったのは、迷いや不安満載の中で生きる人々の感情とその揺れだったが、今順風満帆で生きている人には、登場人物の迷いは滑稽な喜劇に映る可能性もある。年齢でも受け取るものは異なるだろう。

観終わったあと、作品について話すと、それが立場や状況の違う人なら、まるで印象が異なる。そんなことが起きるかもしれないと思う。
タイプの違う人、年齢の離れた人、バックボーンの異なる人と、話すネタにしてみたい作品でもある。


---------------
★DVDなど

『アクトレス 〜女たちの舞台〜』Amazonビデオ(ネット配信)¥300円〜
https://amzn.to/30kau1w
Amazon prrime 対象(2019年5月24日現在)

『アクトレス 〜女たちの舞台〜』ブルーレイ ¥ 3,694
https://amzn.to/2WNY5kg

『アクトレス 〜女たちの舞台〜』DVD ¥ 3,103
https://amzn.to/2YC9Drn

価格は2019年5月24日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2019 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 13:38| 東京 ☀| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月18日

No.269 好きにならずにいられない

================================================

欧 州 映 画 紀 行
                 No.269   18.7.18配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 外から見たイメージと、内実に目をこらして見える姿と ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『好きにならずにいられない』
製作:アイスランド・デンマーク/2015年
原題:Fúsi 英語題:Virgin Mountain

監督・脚本:ダーグル・カウリ(Dagur Kári)
出演:グンナル・ヨンソン、リムル・クリスチャンスドウティル、
   シグリオン・キャルタンソン
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
アイスランド、レイキャビク。43歳、太った独身男のフーシは母親と二人暮らし。空港で荷物係として働いているが、飛行機に乗ったことはない。趣味は第二次世界大戦のジオラマづくり。職場では同僚のイジメにあっている。
女っ気のないフーシを案じ、母とその恋人が誕生日にダンスレッスンのチケットを贈った。「少しは外に出た方がよい」と。嫌々会場に向かい、レッスンは受けずに車で好きな音楽を聴いて時間をつぶすフーシだったが、ダンス教室帰りの女性シェヴンに吹雪だから車で送ってほしいと頼まれる。シェヴンに勧められ、フーシは次のレッスンには参加するとうっかり約束してしまう。シェヴンとの出会いで動き出すフーシの人生は……

「単調な日々を送る純情な大男が初めて経験する恋の物語」
作品の公式サイトを見ると、ひと言でいえばそんなまとめになる。邦題のつけ方もそれっぽい。
でも、観ている間も、観終わってからも、「これって恋愛映画なの?」という疑問が、私の頭のなかでぽこぽこ湧いている。
そもそも、フーシの送る日々が、そんなにもモノトーンなのかというと、そうでもないと私には思える。職場でのイジメは問題だが、それ以外のところ、共通の趣味を持つ友人がいて、ヘビメタという好きな音楽があり、毎週通うエスニック料理の店がある。大きな変化はないかもしれないが、単調だなんだと他人からとやかく言われる筋合いはない。

おそらくこの違和感は、「つまらない日々」→「女性との出会い」というストーリーを聞いたときに、前者がモノトーンなら、後者が彩りあふれる世界、前者が陰なら後者が陽という、ついつい二つに分けてしまうイメージが、実際の作品と合わないせいなのだろうと思う。

初めて出会った日、快活で明るく見えたシェヴンは、実は不安定な心を抱えている。落ち込んでいるときと、気分が上向いているときの差が激しい。仕事も続かない。
フーシの恋愛は、二人で楽しく出かけるだけではない。いろいろ振り回されて、なんとか彼女の力になろうともがく期間の方がずっと多い。
でも、恋愛というか、人と深くつき合うということは、そんなものなのかもしれない。

外から見れば40を過ぎても恋人もなく寂しいだけに見える人生。外から見ればひょんなことからデートする相手ができて浮かれているように見える人生。どちらも、仔細に見れば、いろんな事情と感情がある。

寂しい一人の状態から、人生が躍動する世界へ。そんなわかりやすさは皆無。しかし、ひとつのできごとをきっかけに確実に少しずつ変わっていく人の暮らしを、ていねいに描いた作品なのだ。

■COLUMN
ここ東京は毎日暑い。ただただ暑い。
暑いものはこれ以上要らない。北国の映画を観てみよう。そういえばサッカーのワールドカップでも、「人口33万5,000人、新宿区と同程度の人口で代表チームが活躍するとは!」と話題になっていた。
という不真面目な理由で観たアイスランドの映画だが、上記のように思いがけず考え込むことになってしまった。暑い暑いと目の前(身の回り)の現実にしか意識がいかないところ、よい刺激になったと思う。

暑いから少しでもひんやりしそうなアイスランド映画という短絡的な発想だったが、吹雪のシーンや雪に包まれた屋外のシーンは、それを目にしたからといってちっとも涼しい気分にはならない。短絡はしょせん短絡であるという現実もつきつけられた。
吹雪は別の次元の世界に見えるし、外が吹雪くなか、家のなかのシーンにはむしろ温かさを感じる。

暑い国で涼しいと感じたいのなら、暑さのなかで涼しさを放っているものでなくてはリアリティのある涼しさは得られない。今ここでリアルに涼しいと思えるシーンを挙げるなら、夏の高原の涼しい風であり、うちわ片手に耳に入る風鈴の音であり、山深い土地の川のせせらぎ…、夏という現実のなかに、合間にするりと吹き込んでくる涼しさである。
遠い国の吹雪は遠い国の吹雪で、今この国の暑さと混ざり合うこともリンクすることもない。

なんてことも思う。要するに今ここは暑いのだ。

---------------
★DVDなど

『好きにならずにいられない』DVD  ¥ 3,268
https://amzn.to/2uJaCbU

『好きにならずにいられない』amazonビデオでの配信 ¥400〜
https://amzn.to/2uH7Gwp

価格は2018年7月19日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B269

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2018 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 17:56| 東京 ☀| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月21日

No.268 ロックンロール

================================================

欧 州 映 画 紀 行
             No.268   18.01.21配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ ありがちな教訓は期待しないこと ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『ロックンロール』
製作:フランス/2017年
原題:Rock'n Roll

監督・共同脚本:ギョーム・カネ(Guillaume Canet)
出演:ギョーム・カネ、マリオン・コティヤール、ジル・ルルーシュ、
   カミーユ・ロウ、イヴァン・アタル、ジョニー・アリディ
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
ギョーム・カネ、43 歳。有名俳優として順風満帆の人生だと思っていた。しかし、雑誌のインタビューでは「年齢を重ねてきたこと」を話題にされ、共演する若い女優からもすっかりおっさん扱いされていることに落胆し、変革を起こそうとする。
定時に家に直行していたのを、夜遊びを盛んにしてみたり、服装を「ロック」にしてみたり、まだまだ「イケてる」ことを示したいが、家族や事務所は困惑し、指示通り演技をしないギョームに、撮影現場は大混乱を起こし……

本人が本人役で出演し、パートナーの女優マリオン・コティヤールと息子、友人の俳優たちも本人役で出演する、ドキュメンタリー風に見せたフィクション。

オスカーもとったマリオン・コティヤールに置いていかれ気味に見えるところ、なんとなくお坊ちゃん的なところなんかは、実際にそういうイメージを抱かれがちなところを利用して、「ありそう」と思わせて、「さあどこまでほんとかな」と遊び心を押し出す映画だなあ、なんて観ていたのだ。

それも決して間違いではない。
乗馬好きなおとなしいおっさんと見られるのがいやで、革ジャンを着てみたり、クラブで遊び回ってドラッグをやってみたり。お約束ごとじゃない、型にはまらないタイプになってみようと、脚本無視の演技をしてみたり。
やっていることは小学生か中学生の反抗期のようで、微笑ましいやら、めんどくさいやら、なのだが、老けるのがいやでボトックスに手をそめてマリオンに心配されると、そこは子どもにはない悲哀があったり。
華やかな世界に身を置く俳優も、いろいろ悩むんだねえ、なんてありそうな、でもなさそうなリアリティを楽しんでいた。

奇行を続けに続け、なかなか「元の自分、そのままでいいじゃん」ということに気づかないギョーム、容姿もだんだん変わっていって、終盤に近づくにつれて、「いったいこの物語、どこにどう落とすんだろう」と、落ち着かなくなってくる。

ラストに向かい、ありがちな教訓やら、お約束やら、収束する着地点やら、そんなものはどこかにぷうと吹っ飛んでいく。ここでこうして語っている私もなんとなくバカっぽく見えてくるバカバカしさとくだらなさで、走り抜けていく。決してありがたい教訓なんか望めない展開を、ぜひ楽しんで!

■COLUMN
パートナーのマリオンと比べられて、劣等感と焦りを抱くギョーム・カネが本人役。自ら脚本・監督も、という内容を聞いて、イヴァン・アタルの『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』を思い出した。
シャルロット・ゲンズブールと、実際に彼女の夫であるイヴァン・アタル、それぞれ本人役を演じる作品だが、このときイヴァンは、ジャーナリストという設定だった。
(メルマガのバックナンバー:http://oushueiga.net/back/film015.html

そしたら、この『ロックンロール』には、イヴァン・アタルがちゃんとイヴァン・アタル役で出演し、兄弟のアラン・アタルとともに、ギョームが出演する映画のプロデューサーという設定になっていた。
実際の作品ポスターを背景に、『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』の話をするというシーンもあって、「あれのギョーム版をやろう」というところからはじまったのかもしれない。アラン・アタルは現実に、この『ロックンロール』のプロデューサーである。

昨年亡くなったときには、大統領もコメントを出したフランスのロックスター・ジョニー・アリディも出演し(ギョームがロックな生き方について教えを請いにいくのだ)、華やかな芸能界の内実を垣間見せる作品だが、日本だったら、業界の闇を探られかねない、ドラッグのシーンやらは、もっといろいろ慮った感じにつくられるのだはないかと思う。

もちろん、どちらの国でもフィクションだと受け取ってもらえるだろうが、日本であればもっと漠然としたイメージを気にするのではないかと。「冗談です。つくり話です」で、済まないことが出てきてしまうのではないかな。
そんな風に想像することも、「空気を読む」ことに加担しているといえば、そうなのだが、お国柄を考える作品でもあった。

---------------
★今回取り上げた『ロックンロール』は、開催中の「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」に参加している作品です。
1月19日(金)〜2月19日(月)まで、オンラインで長編12本、短編14本を観ることができます。短編の視聴は無料、長編は1本1.99ユーロ。長編を全部観られるパックは7.99ユーロ。

AmazonビデオやiTunesでも1本200円でレンタルできます。この作品1本を観るなら、その方が便利でお得です。購入しても500円だそうです。

Amazon
http://amzn.to/2Dwf97V

iTunes
https://apple.co/2rszVRc

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?268B

---------------

筆者へのメール
enaout@infoseek.jp
感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2018 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 19:10| 東京 ☀| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月15日

No.267 偉大なるマルグリット

================================================

欧 州 映 画 紀 行
             No.267   17.08.15配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、おうちで映画鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 人にはいろんな側面があるもので ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『偉大なるマルグリット』
製作:フランス/2015年
原題:Marguerite 

監督・共同脚本:グザヴィエ・ジャノリ( Xavier Giannoli )
出演:カトリーヌ・フロ、アンドレ・マルコン、ミシェル・フォー、
   クリスタ・テレ、ドゥニ・ムプンガ、シルヴァン・デュエード
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
1920年、フランス。パリ郊外にあるマルグリット・デュモン男爵夫人の邸宅では、貴族達が集まって、チャリティーのサロン音楽会が開かれていた。トリを務める主役のマルグリットは、衣装にもオリジナルで凝って堂々の登場をするが、実はひどい音痴だ。出席する貴族たちは真実を伏せて拍手喝采する。知らぬは本人ばかりなり。

ある日、このサロン音楽会に忍び込んでいた、辛辣な批評をすることで知られる新聞記者のボーモンは、この音痴に驚きながらも、大金持ちのマルグリットに近づくため、「心をわし掴みにする声」と大絶賛の評を寄せる。
この批評に喜び、自らボーモンに会いに行ったマルグリット。新しい友人ができたことをきっかけに世界が広がり、本格的に歌を学んで、パリでリサイタルを開きたいという希望を持つようになるが……

マルグリットの音痴はどこでバレるのか、ひょっとして音痴でもリサイタルは大成功してしまうのか。そんな風に先行きが気になり、単純に筋を追う楽しみがたっぷりある作品。そして同時に、マルグリットをはじめとする、登場人物たちに抱く印象が、ストーリーが進むにつれ少しずつ変わっていって、人のいろんな側面を観察できるところも面白い。

「お金持ちの貴族が音痴のくせに自分だけいい気分で歌っちゃって」とマルグリットを最初は意地悪な目で見てしまうのだが、マルグリットが純粋に歌を愛し、オペラを愛して、嬉々としてオペラの登場人物になりきった写真を撮っているところなど見ていると、ただただかわいらしく、応援する気持ちになってしまう。
そんな気持ちの変化は、はじめは利用したくて皮肉を込めた絶賛記事を書いたボーモンにも表れる。

マルグリットの夫ジョルジュは、妻の音痴を陰で皆が笑っているのが恥ずかしく、音楽会の日にはいつも車が故障したことにして歌の時間には遅れてくる。さらに、妻の歌やオペラごっこに辟易して、浮気中。事なかれ主義の貴族なのだろうと眺めていると、この人もだんだん変わってきて、最後には冒頭とはまったく異なった印象を残してくれる。

マルグリットに忠実な使用人マテルボスは、オペラ写真撮影、音楽会の準備と献身的につきあい、歌を学びたい、リサイタルを開きたいという彼女の夢の実現にも、影に日なたに精一杯協力する。しかしこの人も最後にはまったく別の側面が見えて、ちょっと苦い。

ラストは、「フランス映画」らしく、観客に「ああ、この後どうなったのだろう!」と思わせてその後を託す。それがいつまでも続く鑑賞後の余韻となっている。

■COLUMN
結末がわかっていることを前提に話したい、そうしたらもっと語れることがあるのに、と思う映画があるが、これはそんな映画のひとつだ。
上にも書いたように、最後まで観ると、登場人物の印象も変わるし、最後まで観た頭でもう一度最初から観たならきっと思うところも違ってくるかもしれない。「ネタバレ」できないのはちょっと不便だと思う。

結局、マルグリットが自分は歌が壊滅的に下手である、と気づくのか否か、は観てのお楽しみとして、ただひとつ言えることは、結末まで観ても、果たして真実を告げる方がよいのか、それとも自分が信じているように楽しんで歌を続ける方がよいのか、それは簡単に決めることができないということだ。
本人にとって、という意味でも、周りにとって、という意味でも、何がよいことなのか、断言することは難しい。この後どうなったのだろう。と同時に、どうするのがよいのだろう。と、ああでもない、こうでもない、と考え尽くせる映画だ。

歌が題材だけに、全編に散りばめられた音楽、そして1920年パリのアーティストたちの退廃的なムードなど、ストーリー以外の楽しみの面もしっかり用意されている映画だが、その中で、あれはどうやっていたのだろう、と特に思うのは、マルグリットの下手な歌だ。
演ずるカトリーヌ・フロ本人が本当にあれを歌っていたのか、耳をふさぎたくなるキャンキャンとした音痴っぷりは、誰がどうやってつくりこんだのか。歌を下手に歌うのって案外難しいもので、上手に下手さを出さなければなかなか表現できないものじゃないかと思う。
「どの辺でどう音を外しているからこの壊滅的な下手さが出てる」なんてところも含めて、いろいろに考えを巡らせたくなる要素だ。

---------------
★DVDなど

『偉大なるマルグリット』DVD ¥3,280
http://amzn.to/2uEQc6E

『偉大なるマルグリット』amazonビデオでの配信 ¥400〜
http://amzn.to/2vXOnli

価格は2017年8月15日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B267

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2017 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 20:06| 東京 ☔| Comment(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月25日

No.266.16 言い訳号

================================================

欧 州 映 画 紀 行
               No.266.16   16.12.25配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

と、はじめてみたものの、今回はなかなか配信できないことの言い訳をぎっしりつめた言い訳号。
映画作品の紹介もなし。ごめんなさい。

前回の配信から半年経ってしまって、2016年も暮れようとしてる。
こんなに配信できないなら潔くやめてしまったらいいんじゃないかとも、よく思うのだけれど、映画を観てああでもないこうでもないと書きつけられる場所を持っておけることは自分でもうれしく、何もわざわざやめることもないんじゃないかね、と思う。しかし配信はなかなかできない。時は過ぎていく。
本日は、なんでそんなことになってしまっているのか、言い訳をさせていただく回である。

2012年の秋頃から、なーんだか長距離を歩けないという事態になった。ちょっと歩くとすぐに足が棒になる。
病院では、筋肉がすぐに疲れる自己免疫疾患の可能性が高いと言われるが、検査をしても「そうだ」と言い切れる結果が出ず、今に至るまで結局診断には至らず、治療法もない。

四肢の筋肉がすぐに疲れてしまい、階段をのぼったり長距離を歩いたり急いで歩いたりすると、足を前に運べないような疲労感に襲われる。腕の調子が悪い日には、じゃがいもの皮をむくだけで腕立て伏せをしたかのように腕が疲れる。
そして、全身がとにかく疲れる。午前中は比較的よいのだが、時間が遅くなればなるほど体がだるくなって、夜にはほとんど起きていられないから、夜型だったのが、今やすっかり朝型に。たいしたことをしなくても毎日ギリギリまで体力を使ってしまうから、最低9時間くらいは眠れなくとも寝転んでいないと体がもたない。

さっぱり配信ができないことの主な理由はこの体の状態なのだが、脚や腕の筋肉がすぐ疲れる病気だからといって、家でDVDで映画を観て座ってパソコンでメルマガを出すことが、なんでできなくなるの? と、読者諸氏は思うかもしれない。思うよね。

発症直後の頃に比べると今はだいぶ歩けるようになっているが、依然困っているのが、「活動できる量がとにかく少ない」ということだ。「時間がない」とも言い換えられる。
たとえれば、病気になる前の活動できる量を100とすると、今は40くらいしかない状態。(活動する量なので睡眠と休息はすでに抜いて考えている)
日々のやることというのは、食い扶持を稼ぐ仕事、やらなきゃ生活が滞るような家事など、必要度Aクラスのもの、友人とお茶を飲むとか、日常的な趣味とか、仕事用の勉強とか、必要度Bクラスのもの、時間があればやりたいような旅行や大型レジャーのCクラスのもの、とまあ、その人なりにいろんな優先順位があると思う。
活動量が元気なときの4割くらししかない今、その中に必要度Aのもの(ほとんどは仕事)を詰め込むと、もう活動の余地は残らない。
だから、仕事と睡眠と休息だけを繰り返すのに必死で、たまに仕事がひまになって、40の中に仕事以外のものを入れられるようになったら、必要度Aの中でずっと積み残しているもの(たとえばたまには自分で料理をしようとか、部屋が荒れているから掃除をしようとか)をやって、だいたい休日は終わる。
もうちょっと余裕が出たら、友人とお茶を飲む時間と体力ができるかも。映画も観られるかも。だが、メルマガを書くところまでたどり着くには、相当なヒマが必要で、2016年の後半は特に、仕事だけでほとんど毎日40をフル稼働していて、映画を観るというところにもまるで至らなかった。

病気で映画が観られないわけではない。しかし、日々の生活の中で映画を観るということを取り入れることが極めて困難な場合、結局それは「できない」と同義だよ、と私はよくいじけてみる。

そうして仕事ばかりの生活を4年も続けていると、自分の幅がどんどん狭くなる。自分でもいろんな場面でそれを自覚する。映画はしばらく観ていないと、なんていう映画が世の中にあるのかもわからないし、知らない俳優、監督も増える。「どうせ観られない」といじけている身には、情報だけには触れておこう、なんていうのもわりと辛くて、映画にどんどん疎くなる。
読書も、サッカー観戦も(テレビ観戦含め)、芝居を観ることも「毎日の40」の中に入れられないものは、私からどんどん縁遠いものになる。

そんなこんなで、仕事しかしていなくて、好きな映画を語ることも、面白かった本を人に教えることもできなくなっていることは、自分でもさみしいし、ちょっとした劣等感にもつながっている。
病気を治す手立てがない以上、この状態はあと何年も何十年も続くだろう。つまらんことだなあ、と思う。つまらん人間のまま、ただ40の中に仕事を詰め込んでただただ暮らすんだろうと思う。
そんな中で、すっぱりメルマガをやめてしまうのもひとつの手だけれど、でもいつか、また、映画を観て、あることないこと、じゃない、あれやこれやと思うことを書いて配信することがたまーにでもできたら、いいよね、と思う。この場所を残しておくことは、私の小さな希望なのだ。


というわけで、長々書いたが、これでもだいぶん手短に説明した、私がさっぱりメルマガを書けないことと、そのくせしつこく廃刊や休刊にはしないことの、言い訳である。
読者の皆さま。もしも気が向いたら、映画を観てメルマガを書くということを、もーうちょっと定期的にやれるのを、待っていてくださればとてもうれしい、です。


---------------

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B266-16

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2016 Chiyo ANDO

---------------

posted by chiyo at 18:29| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

No.266 パレードへようこそ

===========================================
欧 州 映 画 紀 行   No.266  16.06.20配信
===========================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 闘い抗う人々に拍手を ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『パレードへようこそ』
製作:イギリス/2014年
原題:Pride 

監督:マシュー・ウォーチャス( Matthew Warchus)
出演:ベン・シュネッツァー、ジョセフ・ギルガン、フェイ・マーセイ、
   ジョージ・マッケイ、ドミニク・ウェスト、アンドリュー・スコット、
   ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、パディ・コンシダイン、
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
1984年サッチャー政権下のイギリス。
炭坑の閉鎖に抗議して、炭鉱夫のストライキが長期化していた。そのニュースを見ていたゲイのマークは、デモなどで警察・公権力と闘う自分達と重ね合わせ、敵が同じ者同士、支援しようと、ゲイ・パレードで募金活動を行った。
本格的に活動をスタートさせようと、支援組織LGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)を立ち上げて仲間の参加を募るが、集まったメンバーは9人だけ。さらに、寄付金を送ろうと全国炭坑労働組合に電話をしても、「レズビアン&ゲイ」と名乗ると相手にされない。
そこで、炭鉱に直接電話をしてみたところから、ロンドンのLGSMメンバーと、ウェールズの炭鉱町ディライスの人々との交流が始まり、事が動き出していく。

「男らしさ」が大事にされる炭鉱夫の集まる組合。はじめはLGSMの支援を受けるか否かで紛糾、混乱する。
このあたりの偏見を打ち破るのに難航するのかな、と思ったが、最初の障壁は、下世話な好奇心の助けも含めて、メンバー達が会って話をしているうちに案外すんなりと打ち解けて、数人だけがどうしても受け入れようとしない、という格好。こんなに早く仲良くなってしまって、物語としてはどうするんだ、と心配になったほど。
実話だというから、最初のとっかかりが実際にはもっと大変だったのかもしれないけれども。

物語としてどうしたかというと、ひとつには、LGSMと炭鉱組合という団体同士のメインストーリーの脇に、個人の事情とその解決・成長が描かれるサイドストーリーがちょろちょろと用意された群像劇的しかけをしたこと。

ゲイゆえに家族と仲が悪く、実家のあるウェールズをどうしても訪れられなかったゲシンや、保守的で過保護な家庭から自立できずにいたジョーの他、炭鉱町では概ね中年の女性たちがゲイやレズビアンに寛大で、LGSMのメンバーに感化されてどんどん活動的になってゆく。それに引きずられて、ダンスの得意なLGSMメンバーから習って女性にモテるようになる炭鉱夫も出てくる。
と、異世界の人が出会うことによる人の変化や成長が、そこかしこに見られて飽きが来ない。痛快と言ってもいい。

そしてもうひとつは、そうして個人の交流の中で育まれた友情も、外からの様々な圧力で、一筋縄ではいかない現実を見せること。社会現象として世の中で様々に取り沙汰されるストライキが大本にある以上、外からの好奇の目も、世の流れによる絡め取られも、避けられはしない。

炭鉱という産業がその後どうなったのか、2016年にいる私たちは悲しい事実をいくつも知っている。しかしそんな知識の気取りはどうでもよくなるほどに、逆境を生き抜き、行動を続ける人々のさわやかさに、拍手を送りたくなる作品だ。

■COLUMN
古いものも含めて、ここのところちょっとイギリスの映画を意識して観ていた。なぜかというと、「宣伝」のためである。

この春から、私の夫が「紅茶」の通信販売を始めたのだ。ティーブレンダーさんと組んで開発した、誰でも手軽においしく入れられるオリジナルブレンド紅茶を売る「犬猫紅茶店」。
なんで犬猫? と興味を持たれた方は、
http://dogcat-teahouse.shop-pro.jp/?mode=f2
この辺りをご参照いただければ幸いです。

私たち夫婦は、大学の「紅茶倶楽部」という紅茶をいろいろ飲み歩くだけというサークルで出会い、我が家の食卓にはつねに紅茶があった。そんな夫婦だ。
私の方はそれほど紅茶に詳しくもこだわってもいないが、そんなに高くなく、気取ることなく、おいしい紅茶が飲めたらいいな、とはいつも思っていて、犬猫紅茶店の紅茶は、まさにそんな紅茶だと思う。この事業が何とか続いて、私もこの紅茶を飲み続けられたらいいなと思っている。

というわけで、紅茶といえばイギリスの映画でしょう。と、何か紅茶の出てくるイギリス映画はないかな、なんて思っていたわけで。

この『パレードにようこそ』にも紅茶は出てこないにしろ、マークの部屋には、かわいいティーポットがちらりと写ったり、生活の中に紅茶が根づいていることはわかる。
しかし「イギリス映画=紅茶」というイメージは、いわゆるイギリスの上流階級が優雅に茶器をテーブルに広げて楽しむステレオタイプに支えられているもので、はたと気づくと、そんな古き良きブリティッシュの文化を見せるイギリス映画というものがあまりないのだなと思う。

じゃあ今のイギリス映画ってどんなものが描かれるんだろうというと、この作品に出てくるような、労働者から体制、階級への反発、マイノリティの闘いだろうか。最近観た『キングスマン』というスパイ映画、というかブラックユーモアとパロディ(オマージュ?)満載のおバカ映画で頭を空っぽにして楽しめるものだったが、この中でも、貴族趣味にいつまでもこだわるスノッブな貴族への、底辺から這い上がってくる者の逆襲がスパイスとして使われていた。

私の印象に残る「紅茶」が効果的に使われていた映画といえば、『シーズンチケット』(昔、このメルマガでも取り上げた。 http://oushueiga.net/back/film045.html )。
今回再見をしたかったがレンタルでも配信でも見つからなかったため、うろ覚えだが、この作品中の誰からも相手にされない不良少年が、自分の最高の思い出として語る言葉だ。
「スタジアムで父と一緒にサッカーを観てた。寒くて震えていると父がコートを掛けてくれて、ハーフタイムにはミルクたっぷりの温かい紅茶を買ってくれる。砂糖は二つ。あったかくておいしかった」

紅茶の象徴する物理的・精神的両面での温かさとおいしさをこんなに素直にわかりやすく表現している映画は他に知らない。ちなみに、父親にひたすら殴られて育った少年には、本当のところ家族の良き思い出など何もなく、友人から聞いて気に入っている話を自分の思い出として語ったのだ。少年が知ることのない「家族の温かさ」は、紅茶に託されて語られた。
そしてこれも、家は貧しく親からは暴力を振るわれ、学校からもドロップアウトした少年が好きなサッカーチームの試合を観たいと世の中と闘う物語だ。

イギリス映画で優雅に紅茶を飲むシーンなんかにかこつけて、紅茶の宣伝ができるかな、なんて私の浅ましい考えは打ち壊されたが、それは同時に、果たして私の好きな「紅茶」とはそういう「ハイソなブリティッシュネス」のイメージと同時にあるものなのか、というテーマにも突き当たることだった。

前述の通り、私はおいしい紅茶じゃなきゃ飲みたくないが、そんなに高いお金を出す気はないし、たまには優雅なティーパーティも素敵だけれど、やっぱり基本は気取らず気軽に気負わず紅茶をガブガブとやりたい。
だから、階級の格差に苦しめられる人々や、世間や体制と闘い抗う人の手に、紅茶がさりげなく持たれているような、そんなイギリス映画がもっともっと観られたらなあと、そしてそれをうちの紅茶片手に観たいもんだと、そんな風に思っている。

犬猫紅茶店 http://dogcat-teahouse.shop-pro.jp/
犬猫紅茶店広報室(blog) http://inunekotea.com/

---------------
★DVDなど

『パレードへようこそ』DVD ¥2,963
http://amzn.to/1UhXFzs

『パレードへようこそ』amazonビデオでの配信 ¥432〜¥540 (画質による)
http://amzn.to/1UDyXrE
(iTunesストアでは標準画質で¥300でした)

価格は2016年6月19日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?266B

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2016 Chiyo ANDO

---------------

posted by chiyo at 17:32| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月28日

No.265 彼は秘密の女ともだち

================================================

欧 州 映 画 紀 行
            No.265   16.01.28配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 女性とは。女性性とは。 ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『彼は秘密の女ともだち』
製作:フランス/2014年
原題:Une nouvelle amie 英語題:The New Girlfriend

監督・脚色:フランソワ・オゾン(François Ozon)
出演:ロマン・デュリス、アナイス・ドゥムースティエ、
   ラファエル・ペルソナーズ、イジルド・ル・ベスコ
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
クレールは、子供の頃からいっしょに過ごしてきた親友のローラを亡くして哀しみに暮れていた。残された夫のダヴィッドと生まれて間もない娘を護ると約束したクレールが、二人の様子を見に家を訪ねると、そこにはウィッグををつけ、ローラの服を着て赤ん坊をあやすダヴィッドの姿が。
「このことはローラも知っていたこと。女性の服を着たい」と打ち明けられ、戸惑うも、女装するダヴィッドを「ヴィルジニア」と名づけて、夫には内緒で「女同士の友情」を育んでいく。

ダヴィッドを演じるのは、現在のフランス映画には欠かせないロマン・デュリス。だんだん女装(特にメイク)がうまくなってはいくものの、ちょうどよい塩梅の「どうみても男性の女装姿」を、化けすぎずによく表現している。ダヴィッドとして普通の男性としてふるまうときと、ヴィルジニアになっているとき、その違いは、服装やメイクだけでなく、ちょっとしたしぐさにも表れる。眺めていて、女性っぽさというのは、そういうところから見えるのね、と改めて気づいたりも。

クレールは一度は理解して仲よく女友達として出かけたりするとはいえ、夫にダヴィッドと浮気しているのではないかと疑われて釈明することになれば、
「女装よりもゲイのがマシ!」とゲイだとごまかすことにして、結局女装のことは言い出せず、本当に受け入れることは、簡単には進まない。

「女装」をめぐるコミカルなドラマかとなんとなく思っていたが、後半から物語はだんだんと、男女のアイデンティティ、愛の形、重いテーマがずっしりと横たわるようになる。
どこに着地するのだろうと気を揉んで観ていたら、ラストは「ああそうなるんだ」と、宿題をつきつけられた気分だった。

■COLUMN
もう昨年のことになるが、近所の名画座で、この映画と『ボヴァリー夫人とパン屋』の二本立てが上映されていて観た作品だ。二本とも面白く気に入ったのだけれど、今回この作品の方を取り上げたのは、DVDリリースがもうすぐらしいから。

この二本立てを観に行ったのは、なんとなく「ファブリス・ルキーニが主演してるらしいボヴァリー夫人…」が目当てで、あまり事前に情報を仕入れていなかった。
その状態でこの作品を観ていたら、ふと、「これってペドロ・アルモドバル監督だっけ?」と錯覚しかけた。性別をめぐるテーマや、死から物語がはじまる展開、葬儀のシーンなどは『オール・アバウト・マイ・マザー』を彷彿とさせ、『トーク・トゥ・ハー』を連想させるシーンもある。

私は細かいところまではわからないけれど、オゾン監督はわりと他の映画の引用をわかりやすく入れ込んでくることがあり、両監督の作品をよく知っている人なら、もっといろいろと引用や目くばせを見つけることができるんじゃないだろうか。

そんな男/女、同性愛/異性愛、その固定観念を疑ったり、その境界を考えたり、なんてテーマの作品といっていいと思うが、いや、だからこそなのかもしれないが、「女性」の描き方が平板なんじゃないかなとも思う。

クレールとヴィルジニアの女同士の買い物は、あまりにもステレオタイプの女同士の買い物だし(もちろん、物語としてあそこにステレオタイプすぎる女同士の買い物が入ることが必要なのはわかる、が)、ヴィルジニアにつき合ううちに、だんだんと華やかな雰囲気になっていくクレールの描き方も、いい意味に普通でとっつきやすい姿のクレールの方が、友達になれそうな感じがするのに、きらびやかさが女性の「是」なのかと思う。(子供の頃から、ブロンドのローラの横で引き立て役のようにも見えたクレールの変貌というのが、物語として面白いことはわかる、が)

昔から洋服にあまり興味がなく、いわゆる「女同士の買い物」がいまいち得意ではない私は、それが「女性」なのかねえ、なんてちょっとすねてしまうのだ。
自分自身の女性性や男性性に、考えを向けざるを得なくなる、そんな作品。


---------------
★DVDとブルーレイ(2月17日発売予定)

『彼は秘密の女ともだち』DVD ¥3,459
http://amzn.to/1ResJ0v

『彼は秘密の女ともだち』Blu-ray ¥3,918
http://amzn.to/1OWglvI

価格は2016年1月28日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B265

---------------
感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2016 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 18:47| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月11日

No.264.48 ご無沙汰特別号

================================================

欧 州 映 画 紀 行
               No.264.48   15.10.12配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

ご無沙汰しております。配信しなくっちゃ、しなくっちゃと思いながら、なかなか体勢が整わず、前回の配信から早5か月近く、ひょえーー。
半年配信しないと、「まぐまぐ」さんから休刊だったか廃刊だったかの扱いにされてしまうので、取り急ぎ、時間稼ぎ…じゃなくご挨拶がてら特別号の配信です。(「メルマ!」の規則はわからない)

私の近況といえば、最近引っ越しをいたしまして、ずいぶん長い間過ごしていた街を離れて、新しい生活がはじまりました。といっても同じ東京都内、電車で15分くらいの距離なので、生活ががらりと変わったというわけではありませんけど。

かつて配信した中で、引っ越しにまつわるお話はなかったかしらんと、考えてみましたが、ちょっと思いつかず。ただ、ラストが引っ越しシーンで、その引っ越しシーンが、キラキラとまだ見ぬ未来への期待に満ちていた映画を1本思いだしました。いきなりラストから語るというのも少々無粋ですが、このメルマガの記念すべき0号『猫が行方不明』の回です。

当時、「まぐまぐ」でメルマガを始める場合は、「ウェブサイト」を開設して、そこに、配信するメルマガのサンプルとなる原稿を掲載して、承認を受けるというシステムでした。2004年当時は、ブログなんてお手軽なものはありませんでしたから、「ゼロからできるホームページ」的な本を最初の10ページくらい読んで、サイトを作ってなんとか承認にこぎつけたのです。私のサイト作りの知識はそこで止まっています。

なので、この号はメルマガの最初の原稿ではありますが、一度も配信はしていないものです。
今読むと、ずいぶんとカタいというか、どう書いたらよいのか緊張して書いている感じがひしひしと伝わってきて、とても居心地が悪いですね。
あれやこれや、時が経つうちに、人生全体にずいぶん捨て鉢になってきたこの頃、愛する街を記憶にとどめたいなんて、もう言えないだろうな、そんな初々しさも。

小ネタとしては、今ではフランス映画の大スターとなったロマン・デュリスがまだ無名の頃、ちゃらいドラマーの役で登場しています。
そして、この映画ができた頃、この原稿を書いた頃には、想像もできないほどに、ITのサービスが進んだ現在、監督のセドリック・クラピッシュのInstagram(写真投稿のSNS)はおすすめですよ。
https://instagram.com/cedklap/


今週の作品はこちら
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
タイトル:「猫が行方不明」
制作国:フランス/1995年
スタッフ
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:ギャランス・クラヴェル、ジヌディヌ・スレアム、ルネ・ル・カルム
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

■STORY
パリ11区の古いアパルトマン。クロエはゲイの友達と部屋をシェアして暮らしている。メイクアップ・アーティストと肩書きはカッコイイけれど、仕事の内実は理不尽にこき使われる下働きだ。そんな彼女も今年は3年ぶりに夏のバカンスを楽しめる。目下の心配事は、旅立つ前に、飼い猫“グリグリ”を預かってくれる人を見つけなくてはならないこと。人づてに聞いて見つけた猫好きの老婦人マダム・ルネにグリグリを預け、いざ、海へ。楽しいバカンスを過ごしてパリへ戻ってみると…、グリグリが行方不明! 気っ風のいいマダム・ルネも、「猫に逃げられるなんてはじめてだ」とすっかり意気消沈してしまっている。マダム・ルネのお仲間の老婦人部隊、近所の若者衆が動員され、グリグリ探しがはじまる。

■COMMENT
「いなくなった猫を探す」。シンプルな物語だけれど、そこに表れる微妙な心理がおもしろい。

今まで何の交流もなかった近所の人々といっしょに行動をするうちに、クロエには見慣れた風景が少しずつ違って見えはじめる。周囲にいろんな人がいることや、自分が案外孤独を抱えていることに気づくのだ。職場でも、プライベートでも、何かが足りないような気がしている人、自分自身のちょっとしたことに気づけないでいる人は、自分自身を含めてまわりにたくさんいるのでは? だから、見ている側はクロエや彼女のまわりの人物にに感情移入もできるし、「こういう人いるいる」と楽しむのもいい。ユーモアあふれる会話には思わず吹き出すことも。

私はなぜだか、猫探し友だちとなった老婦人が、用事もなくクロエに電話してしまいクロエに煙たがられるシーンに、共感を覚えた。老婦人は新しい友人に何となく話したかっただけ。笑っちゃうような、笑い事では済まされないような、もどかしさを孕んだ共感。おばあさま方から見たら充分に今どきの若い人である私には、それをうるさがるクロエの気持ちも身にしみてわかってしまうのだ。

舞台となったパリ11区、下町風情のあった地区がファッショナブルに変貌していく途上の風景は、観光旅行とはまた違ったパリの街を垣間見られる。「地上げ」で次々と住民が追い出されたり、いつかの日本の都会の風景にも似ている。
原題“Chacun cherche son chat”(“シャカンシェルシュソンシャ”早口言葉っぽい)は「皆それぞれ自分の猫を探している」の意。見る人も自分の探しものに気づくことができるやもしれない。果たしてグリグリは見つかるのか、は見てのお楽しみ。


■COLUMN
「猫が行方不明」でも、「この店は、前は楽器店だったのよ」などと言いながら街を歩くシーンが登場するが、街はいつも姿を変えている。しょっちゅう歩いて見慣れた街なのに、ある日「あれれ、こんなとこにこんな店あったっけ」と思うことがしばしばだ。そしてその次に来るのは「前、何だっけ?」。
なくなった店が、何十年も続いていたおそば屋さんだったりしたら、「おじさん、やめちゃったのねー」と感慨にも浸れる。だが、その記憶もなじみつつある新しい風景に駆逐されてしまうかも知れない。ここ2年で4軒目だね、なんてところなら、間違いなく、前の店を覚えてはいない。
そんなことを繰り返しているうちに、感覚が鈍くなり、何ヶ月かで入れ替わる風景など、最初から記憶にとどめなくなる。忘れたのではなく、最初から目に入れてすらいない。よくも悪くも街は次々変化する。変化は止められなくても、自分が愛する街なら、記憶にくらいはきちんととどめておきたい、と思う。

---------------
★DVDはどれも中古でプレミアムがついて高いですが、一応。

http://amzn.to/1Zq7bAk
http://amzn.to/1GCoORP (HDニューマスター版DVD)

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B264-48

---------------

筆者へのメール
enaout@infoseek.jp
感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2015 Chiyo ANDO

---------------
posted by chiyo at 19:45| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月17日

No.264 100歳の華麗なる冒険

================================================

欧 州 映 画 紀 行
               No.264   15.05.17配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 百年の荒唐無稽 ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『100歳の華麗なる冒険』
製作:スウェーデン/2013年
原題:Hundraåringen som klev ut genom fönstret och försvann
英語題:The Centenarian Who Climbed Out the Window and Vanished

監督・共同脚色:フェリックス・ハーングレン(Felix Herngren)
出演:ロバート・グスタフソン、イヴァル・ヴィクランデル、
   ダーヴィッド・ヴィーベリ、ミア・シャーリンゲル、
   イェンス・フルテン
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
スウェーデンの田舎町。アランは老人ホームで100歳を迎えた。ホームの職員たちが忙しく誕生日パーティーの準備をする中、一人部屋で考え事をするアランだったが、ふと思い立ち、部屋の窓から抜け出してあてのない旅をはじめる。
行き着いたバスターミナル。風体のよくない若者にスーツケースを持たされるが、発車ベルに急かされてアランはそのままバスに乗ってしまう。しかし、このスーツケース、どうも大変なシロモノらしく、ギャングに追われる身に……

いやいや、賛辞としての「荒唐無稽」がたっぷりつまった楽しい映画だった。何度も声を出して笑ってしまった。

消えたスーツケースを追って、少々頭の足らないギャングたちが、アランの行方を必死に探し回る、その展開と交互に、アランが生まれてからこれまでの人生を振り返るシーンが挟まれていく。
はじめは、「100歳になって認知や判断が遅くなったおじいちゃん」くらいに思っていたところが、その人生を振り返るや、スペイン内戦、第二次世界大戦、東西冷戦、現代史のあらゆる重要なシーンに、ひょんなことからひょこひょことひょうひょうと顔を出す仰天な人生なのだ。

ギャングとの追いかけっこにしろ、アランの生涯にしろ、そこで繰り広げられるユーモアは、かなりブラックだ。だから観客を選ぶ作品だとも思うが、私は、ここまで荒唐無稽にスケールを広げてくれるおかげで、散りばめられたブラックなシーンを楽しく笑い飛ばせた。

原作本はスウェーデンでミリオンセラー、40ヵ国以上で800万部売れた新人作家の小説だそうだ。日本でも売れ行きが好調で、翻訳しているのは、難解な作品の翻訳を好むという、あの柳瀬尚紀氏だというから、原作本も読んでみようかと思っている。
映画の中では、時間の進みがおかしくないかなと思われるところがあって、それが映画用に短縮した結果なのか、それとも、そのくらいのゆがみはユーモアの一部として描かれていたのか、気になるところもあるから。

■COLUMN

ブラックユーモアが満載と言ったが、スウェーデン語がわかったら、もっともっとブラック度はきついのではないかと想像する。

それが、ただの悪ふざけに終わっていないのは、アランが生まれてからの100年の歴史を振り返るという設定が、観る者の知的好奇心を刺激することが大きいだろう。
今ここにある時代とダイレクトにつながっている現代史は、無条件に人の行いの愚かさや哀しさに思いを馳せやすい。当のアランはまったくそんなものは纏っていないし、時の権力者の描かれ方は滑稽そのものなのだが、100年の歴史絵巻にはそこはかとないペーソスさえ感じられる。
観客は、繰り広げられる歴史に、自分の中にある知識や感情を何となく重ねて、そこに哀しみや皮肉を見て、時に教訓さえ引き出すことができるかもしれない。
うまく作られた物語装置だと思う。

テンポよく進む悪ふざけたっぷりのコメディにガハハと笑いつつ、知的好奇心をくすぐられながら、自分なりに思う歴史の哀感に浸れる、お得な一本だ。

---------------

★DVDとブルーレイ、原作本

『100歳の華麗なる冒険』DVD ¥3,051
http://amzn.to/1B307eq

『100歳の華麗なる冒険』Blu-ray ¥3,754
http://amzn.to/1GejOWT

原作本『窓から逃げた100歳老人』¥1,620
http://amzn.to/1Kcg2PY

価格は2015年5月16日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B264

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2015 Chiyo ANDO

---------------

posted by chiyo at 18:10| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月07日

No.263 ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区

================================================

欧 州 映 画 紀 行
             No.263   15.01.06配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 難しきヨーロッパ、楽しきヨーロッパ ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区』
製作:ポルトガル/2012年
原題:Centro Histórico 英語題:不明

監督:アキ・カウリスマキ(Aki Kaurismäki)
   ペドロ・コスタ(Pedro Costa)
   ビクトル・エリセ(Víctor Erice)
   マノエル・ド・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira)
出演:イルッカ・コイヴラ
   ヴェントゥーラ、アントニオ・サントス、
   リカルド・トレパ
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
ヨーロッパの名監督4人によるオムニバス作品。

EUには、指定された1年間、集中的に各種文化プログラムを展開する「欧州文化首都」という事業がある。2012年、ポルトガル北西部の小さな町「ギマランイス」が指定都市となり、この事業の一環として制作された映画である。
ギマランイスは、1143年にポルトガル王国が誕生した際の初代国王アフォンソ1世の生地で、最初の首都、ポルトガル発祥の地と呼ばれる。謎の邦題はここからつけられたらしい。

ギマランイスは、古都らしい趣きのある街並みが旧市街に残されていて、これは世界遺産にも登録されている。
この町の文化事業の一環で作られた映画であれば、雰囲気ある街並みをふんだんに使った作品となりそうなものだが、そうはいかない。それが「ヨーロッパ」らしさでもあるだろうか。

1話目は、フィンランドのアキ・カウリスマキ監督による『バーテンダー』。向かいのよく流行っているカフェが気になる、古くさいカフェの主人の物語。一言の台詞もないけれど、どことなくおかしさが漂う。この作品には、カフェのある古い街並みが見える。
私は知らなかったが、カウリスマキ監督は長年ポルトガルに住んでいるのだそうだ。

2話目は、ポルトガルのペドロ・コスタ監督の『スウィート・エクソシスト』。4つの中で最も不思議な作品。監督は、ギマランイスをテーマにいかにギマランイスで撮らないかにこだわったといい、シーンの大半は、精神(おそらく)病院のエレベーター。移民の男が、兵士(の亡霊)と語り合う会話劇だ。独裁体制を終わらせた1974年のカーネーション革命がテーマになり、ポルトガルと一人の貧しい男の歴史を振り返るような内容だ。ポルトガルの歴史をもう少し知っていたら、楽しめそうなのだけれど。

スペインのビクトル・エリセ監督の『割れたガラス』が3話目。かつてはヨーロッパ第2の紡績工場として発展したが今は「割れた窓ガラス工場」と呼ばれる工場跡地で、その工場で働いていた人々が自身の人生や工場での体験を語る。
4つの中では私はこれがいちばん好き。「ポルトガルでの映画のテスト」とされ、オーディションのように「普通の人々」が何でもない普通の人生の一コマを話す。人にはそれぞれ色んな人生があるという当たり前のことが、ズドンと響いて、この「オーディション(カメラテスト)」から、さらに新しい映画が作られたら、ぜひ観てみたいと思う。

4話目にはポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラが登場。『征服者、征服さる』は、ギマランイス地区への観光客へのガイド風景が描かれる。
町の一角にあるカフェから、狭苦しいエレベーターで内なる声を聞き、往時の人生を眺める旅から、明るい外の世界、しかも「観光」というわかりやすい風景に一気に連れ出される、きれいな4話構成だ。ただの観光風景にならないユーモアが「町を描く」作品としてうまく締められている。

■COLUMN
メルマガを書くことはもちろん、映画を観ることからもすっかり遠ざかってしまっているこの頃。
「メルマガもそろそろ新しいのを書きたいな、何かいい映画はあるだろうか」とレンタル店へ向かったが、棚を見ても、何を観たらよいのかさっぱりわからないのだ。頻繁に観ていたときなら、タイトルで「ああこれこれ」と内容やら出演者やら、どこか情報が頭に残っていてピンとくることもある。公開時に話題になっていたことを思いだすこともある。しかし最近は、映画公開の話題からも離れてしまっていて、ぼんやりとした情報も頭に残っていない。

とりあえず「ミニシアター」の棚で見つけたこの作品、観たことのある監督名が並んだ「オムニバス」(ペドロ・コスタ監督だけは初だったが)、EUの文化事業で撮られたという「欧州っぽさ」が、すっかりご無沙汰したメルマガ筆者の映画リハビリにはいいんじゃないかと選んでみた。

このチョイス、ギマランイスという未知の町を知ることになり、そしてだからといってその町の風景をふんだんに見せられるわけじゃない「ヨーロッパ映画」の非単純さ、そしてそれについてあれこれ考えることができたという点で当たりだった。
ただ、軽く流して楽しめる簡単な作品ではないことは事実。ああだこうだと考えすぎたところもあって、「リハビリ」のレベルには少しハードだったともいえる。ストーリーでぐいぐい引っぱって行かれる作品を観た方が、「リハビリ」にはふさわしかったかもとも思う。

ともあれ、この作品、そうそうたくさん町が映っているわけでもないのではあるが、やっぱりこの舞台(テーマ)の町を強く意識させる、そのギマランイスという町を知るのにもよし、オムニバスの楽しみ、4つの個性ある作品から、ウマの合う監督を探すのにもよし。
そして、この作品全体で、私が最も気に入ったのは、てんでバラバラに見える4作品が、最後の『征服者、征服さる』を観て、グレン・グールド演奏のなぜか知らないが『イタリア協奏曲』がかかるエンドロールに入ると、うまい流れを見せた4作品に思えて、心がスルッと開放される気になるところ。

理屈抜きで楽しみたいときには向かないけれど、小理屈をこねたいときには、ぜひ。

---------------

★DVD
『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区』
¥ 3,427
http://amzn.to/1BtSSPB

価格は2015年1月6日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B263

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/
blog版 http://mille-feuilles.seesaa.net/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2015 Chiyo ANDO

---------------
ラベル:ポルトガル
posted by chiyo at 16:39| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月06日

No.262 風にそよぐ草

================================================

欧 州 映 画 紀 行
               No.262   14.09.06配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ タイトルに込められた意志とは ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『風にそよぐ草』
製作:フランス・イタリア/2009年
原題:Les herbes folles 英語題:Wild grass

監督・脚本:アラン・レネ(Alain Resnais)
出演:サビーヌ・アゼマ、アンドレ・デュソリエ、アンヌ・コンシニ、
   エマニュエル・ドゥヴォス、マチュー・アマルリック
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
マルグリットは靴屋で楽しい買い物をした帰りに、バッグをひったくられた。その、お金が抜かれて捨てられていた財布を拾ったのは、初老の男性・ジョルジュだ。ジョルジュは、中にあった自家用機操縦免許証の写真を見て、その
「マルグリット・ミュイール」という女性に惹かれ、人となりを勝手に妄想しはじめる。
電話帳で調べて直接連絡しようか、警察に届けようか、いろいろ考えあぐねて警察に届け、マルグリットからは、お礼の電話がかかってくる。すっかりいろいろな妄想をしていたジョルジュは、「お礼だけ」の事務的な電話にがっかりして無礼に電話を切ってしまう。それを後悔して今度は手紙を届けることにして……

今年亡くなった、アラン・レネ監督の作品。そんなに多くの作品を観ているわけではないけれど、作品ごとにスタイルやトーンが変わって、面白い映画作家だと思っている。
それだけに、今度は何をやってきているんだろうと、身構えながら観てしまう作家でもある。
この『風にそよぐ草』も、真面目にやってんだか、人をからかってんだか、なんだろう、これは。という「なんだかちょっと変わった作品」というのが、第一印象。

まず、脇役が豪華すぎる。
ジョルジュが財布を届けたときに応対して、その後ジョルジュの行きすぎた行動を注意しにくる警官がマチュー・アマルリック。マルグリットの親友の同僚がエマニュエル・ドゥヴォス、物静かで美しいジョルジュの妻がアンヌ・コンシニ。こんな豪華な役者を使ってるんだから、重要な絡み方をするんじゃないかと、邪推してしまう。邪推する方が悪いんだけれど。

その上、この皆60年代の生まれである脇役が、マルグリット役のサビーヌ・アゼマとジョルジュ役のアンドレ・デュソリエ(二人とも40年代生まれ)と同じ世代のように描かれては、フランス映画をよく観る者にとっては人間関係の把握が難しい。どうもアラン・レネさんは、ご自分の奥様であるサビーヌ・アゼマがものすごく若い人だと思っているフシがある。

ジョルジュには、どうやら前科があるらしいことがほのめかされるが、詳しいことは明らかにされない。そんなジョルジュが、財布を拾った相手にストーカーじみた行動をしはじめるのだから、何か恐ろしいことになるのかと思いきや、はじめは困っていたマルグリットも何だか気になるようになってしまう、その物語展開も、人を食ったように思えて「真面目にやってんだろうか、いやそりゃあ真面目にやってるんだよね」と、気になるから原作の小説も読んでしまった。

そしたら、これが驚くほど原作に忠実。いくつか省かれているシーンはあるけれど、突き放されたような結末も、前科のほのめかし方も原作通りだった。

ちょっと変わった恋愛を、切なく描くというには、心理描写がわかりにくい。
日本のプロモーションでは、中年の男女にふいに訪れた素敵な恋愛のように宣伝されていたようだけれど、それもちょっと違う。
邦題にはさわやかな風が吹いているけれど、原題は(直訳すれば)「狂った草」。生い茂った雑草を意味する。映画の冒頭には、アスファルトの割れ目から生えている草が映し出され、本来なら生えない場所からどうしようもなく生えてくる様子は、どうしようもなくわき出してしまう感情や、正しい場所に収まって生きられない人生を、表しているようだ。

原作は、「できごと」くらいの平板なタイトルであり、かなり原作に忠実に作っているのに、このタイトルだけは大幅にトーンを変えた、そこには作り手の意志表明を感じる。

結末をどう解釈するのか、これはたぶん観る人によって違う。普通じゃない
「狂った」恋愛は、考え始めれば底なし沼に沈んでいくような悲劇性と、他人事だからなんだか笑ってしまう喜劇性が同居していて、「○○な映画を観た」とすっきり言えない落ちつかなさがある。
だけどその分、いつまでもいつまでも、ああでもないこうでもないと考えてしまう、尾を引く映画である。

■COLUMN
上の原稿が長くなったので、少しだけ。
アマチュア飛行家であるマルグリットの操縦する飛行機から眺める草原のグリーン、空のブルー、町の映画館のネオン、場面ごとにメインテーマが異なって見せているところも面白い。「美しい」映像というよりは「面白い」と私は感じた「映像美」である。

決して全体の統一感がないというのではなく、いろいろなスタイルとトーンで映画を作り続けたレネの「スタイル」らしく、舞台の背景やセットが変わって場面が転換するように、個々のシーンを、異なるトーンとスタイルで作り込んでいる。何度も観ればその度に発見がありそうだ。

---------------

★DVD
『風にそよぐ草』
¥ 4,213
http://amzn.to/WtkmE1

価格は2014年9月6日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B262

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2014 Chiyo ANDO

---------------

ラベル:フランス
posted by chiyo at 19:34| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月14日

No.261 危険なプロット

================================================

欧 州 映 画 紀 行
             No.261   14.6.14配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ あやしくミステリアスに、不遜に ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『危険なプロット』
製作:フランス/2012年
原題:Dans la maison 英語題:In the House

監督・脚色:フランソワ・オゾン(François Ozon)
出演:ファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマス、
   エマニュエル・セニエ、エルンスト・ウンハウアー
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
高校のフランス語教師のジェルマン。生徒達に作文の宿題を出すが、「ピザを食べてテレビをみた」「親に携帯を取り上げられた」……、真面目に取り組む気持ちもなく内容もくだらない作文の山に辟易としていた。しかし、クロードという生徒の作文だけは違う。しっかりとした文章構成、文末に「続く」とまで書かれ、先の気になる内容、ジェルマンはクロードの文才に惹かれ、個人授業をするようになる。
クラスメートの家庭に入り込み、生活を皮肉に観察し、やがて家庭の秘密まで暴き、家庭の中を少しずつ引っかき回していく様を書いていくクロード。ジェルマンは文才を伸ばしたいというだけでなく、続きが読みたい欲望にもかられて、クロードとの物語づくりにのめり込んでいく。


ジェルマンが初めて読んで驚くクロードの作文は、数学が苦手な同級生ラファエルの家に宿題を手伝いに行った日のことが書かれている。

夏のあいだ、彼の家を眺めていて一度入ってみたかった、数学の宿題はもちろん口実だ
入ってみたいと想像していた家の中を歩き回り、観察する
彼の母と顔を合わせて、「中産階級の女の香り」と皮肉る

同級生やその母親を皮肉な目線で見て、うそをついて入り込んだことを臆面もなく表明する。そんな不遜な内容だ。
しかし、不遜だからこそ、読む方はつい惹かれる。「続く」の一言に、楽しみにさえしてしまう。

そして、善良でごく普通の生徒であるラファエルと、ブロンドの美しいクロードという対照的な様子も、あやしさを醸し出し、眺める者に居心地の悪さや何かが起こるかもしれないという思いを起こさせる。美しい上に、人の心を見透かすかのようなクロードの目線も気持ちがざわつく。

「続く」の後に提出された二度目の作文では、

ラファエルに合わせて、いかにも若者の会話をしてみたこと
インテリアに熱中するラファエルの母の俗っぽさを描き、体型を「中産階級の曲線」と表現したり

と、皮肉な視線は続き、

続く作文では、バスケが好きでどことなく脳天気な父親が登場。仕事で関係しているために中国に詳しいことを会話のはしばしにはさむ、通俗性が描かれる。

どこにでもある普通の家庭、脳天気でこぢんまりとした通俗的な生活を、斜に構えた皮肉な目線で描いていく。
教師であるジェルマンも、観客も、そんな通俗的な普通の家庭を小バカににした目線に、どことなく共感し、その背徳からも、もっともっと読みたいと思ってしまう。だいたいこんなフランス映画を喜んで観る輩は、少なからずそんな意地悪な目線を持ってるんだと思う、うん。

そしてとある事情からラファエルの家に遊びに行けなくなって、「あの家に入らなければ書けない」と家に上がり込むことになぜか執着するクロード。その目的のわからない執着もあやしく感じられる。

どこまで深く入り込んでいくのか、どこまで辛辣に目線を向けるのか、そしてそんな風に他人の家に入り込んで、どうしても作文を書きたいクロードの目的は……と、不遜に背徳的に観客の目をそらさせない、あやしわがたまらなくおもしろい作品である。

■COLUMN
人間というのはなんと言葉に支配されて生きているのだろう。

この作品で、ずっしりきたのはそのことだ。

クロードが書いた作文の内容は、クロードによる朗読に合わせて映像化されて描かれるが、結局のところ、作文に書かれたことが真実なのか否かは、わからない。クロードとジェルマンが話し合い、作文を練り直す過程で、ああでもないこうでもないと、内容が変えられるシーンもあって、明らかにフィクションと知らされるところもあるが、実際のところ、クロードとラファエル家族に何があったのかは、ミステリアスに放置されるままだ。
ひょっとしたら最初から最後までフィクションかもしれないし、最初は本当のことが書かれていたけれど、だんだんフィクションが混じったのかもしれない。

うすうすそれを感じていながらも、ジェルマンはクロードの作文に書かれたことを本当のことと受け取り、ラファエルを見ていて、クロードの作文で表現された世界の中で、ラファエル一家を認識する。

実際に見たわけでないことも、言葉で聞かされてイメージを作り出し、それはやがて自分自身の現実の世界に影響を及ぼしていく。
この作品のラストの状況も、果たして、クロードの紡ぎ出す「言葉」がなかったら、こうなっていなかったのではないか。

実際に見ないことも言葉では表現できて、他者の経験を私たちは共有できる。形に見えないものも、言葉は表現できて、その言葉を使ってさらに私たちは形で表せないことを思考できる。
しかし、気づくと、言葉で紡ぎ出した、現実とは少しずつ違った世界を見て、世界をそれとして行動していることがあるかもしれない。

言葉の背徳とあやしさを考えたくなる作品でもある。

---------------

★DVDとブルーレイ
『危険なプロット』(初回限定版)筒スリーブケース仕様
¥ 3,036
http://amzn.to/1lknyGJ

価格は2014年6月14日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B261

---------------

筆者へのメール
enaout@infoseek.jp
感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chi_yo_an

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2014 Chiyo ANDO

---------------
ラベル:フランス
posted by chiyo at 22:05| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月20日

No.260 タイピスト!

=============================================

欧 州 映 画 紀 行
            No.260   14.4.20配信
=============================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ タイプ早打ちはスポ根で ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『タイピスト!』
製作:フランス/2012年
原題:Populaire 英語題:Populaire

監督・共同脚本:レジス・ロワンサル(Régis Roinsard)
出演:ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ、ベレニス・ベジョ、
   ショーン・ベンソン、ミュウ=ミュウ
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
1950年代フランス。田舎で親の勧める縁談を蹴って都会に出てきたローズは、時の花形職業“秘書”の面接を受ける。採用されたものの、ドジで不器用、決して秘書向きとは言えないローズは1週間でクビの危機に。雇い主のルイは、雇い続ける条件として、タイプの早打ち大会出場を提案する。ローズの唯一の長所・「1本指でタイプの早打ちができる」ことに注目し、ローズと組んでタイプの競技大会で優勝する野望を抱いたのだ。
初出場であっさり敗退したローズだったが、その後、ルイは“雇い主”兼“鬼コーチ”と化して、厳しいトレーニングが始まる……

ルイのローズへの特訓ぶりは、スポ根のそれ。そしてコーチと選手の間に恋が芽生えて、あんまり細かいこといっちゃあ野暮野暮、頭を空っぽにして笑って楽しもうよ、という正統派のスポ根&ラブコメディである。

レジス・ロワンサル監督は、たまたま観たタイプライターの歴史に関するドキュメンタリーで、早打ち大会の様子を見て、興味を持って調査をしたのだそうだ。大きな競技場で観客を集めて行われた大会の記録や、実際の出場者に聞いた、出場へのプレッシャー、ライバルに鋭い視線を向けて威嚇したことなどから、当時の興奮を再現したという。
そんな取材によって描かれた「タイピング大会とその出場者の生活」は、厳しいスポーツの訓練そのもの。皆がラジオにかじりついて地元の出場者の戦況を見守ることも、社会進出する女性のアイコンとして、優勝者がマスコミにもてはやされ人気者になって、なんて構造も、オリンピックで活躍したスポーツ選手のようだ。

原題「Populaire」は、タイプライターメーカーの名前であると同時に、熱しやすく冷めやすい大衆から受ける儚い人気の有り様への、皮肉が少々含まれているのかもしれない。

秘書の面接に行くのに、ばっちり可愛らしくおしゃれをしていって、「秘書っていうのは、髪をひっつめメガネをかけて地味な格好をしていないと採用されない」なんてウワサに慌てふためく(でも、一人だけ可愛らしいから、ルイはうっかり採用しちゃったわけだけど)、ローズが次々と繰り出す50年代ファッションも楽しい。

■COLUMN
2013年の夏に東京で公開された映画。最近は映画館に映画を観に行くこともめったになくなった私が、ちょっと時間ができたしと、友人を誘ってウキウキと観に行こうとした、思い出の(!?)作品だ。
当日、私は体調を悪くしてしまって行けなくなってしまったのだが、ネットで座席をすでに予約してしまっていたから、「お願いっ、私の分も楽しんできて!」と友人を送り出して観られずじまい。DVD化を待ち望んでいた因縁の(!?)作品でもある。

観てきた友人は、感想を詳しく話してくれて、「いい映画を紹介してくれてありがと〜」と言ってくれて一安心だった私だが、そうしていい感想も聞いたこととも相まって「観に行けなかった映画」の評価は、観ないうちにむくむくと膨れあがり、大作品になっていた。

今回、実際に観てみたら、予想以上に「おバカ」な映画だった。それはもちろんいい意味で、観に行けなかったから何となく「いい(つまり《良心的な》)作品」に膨れあがっていたイメージは、実際の作品のはちきれるポップさに壊された。可愛らしくシンプルにマンガチックに、ささやかな幸せと感情の機微がが散りばめられていた。

ほんとは、桜が咲いてぽわーんと暖かくなって、口元がゆるむ頃に観るのがぴったりの映画のように思う。ちょっと季節が遅れて、ゴールデンウィークももうすぐ、むしろ初夏に近いこの頃だけど、連休近きぽわわんとした空気の中で、ぜひ、ポップな正統派スポ根ラブコメを楽しんで!

---------------

★DVDとブルーレイ
『タイピスト!』Blu-rayコレクターズ・エディション (初回限定生産)
¥ 3,809
http://amzn.to/QwJMxD

『タイピスト!』DVDコレクターズ・エディション (初回限定生産)
¥ 3,082
http://amzn.to/1jVyMV0

価格は2014年4月20日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B260

---------------

筆者へのメール
enaout@infoseek.jp
感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chiyo_a

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2014 Chiyo ANDO

---------------
ラベル:フランス
posted by chiyo at 18:39| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月22日

No.259 クリスマス・ストーリー

================================================

欧 州 映 画 紀 行
            No.259   13.12.22配信
================================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ それぞれがそれぞれに抱えて生きているそれぞれ ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『クリスマス・ストーリー』
製作:フランス/2008年
原題:Un conte de Noël 英語題:A Christmas Tale

監督・共同脚本:アルノー・デプレシャン(Arnaud Desplechin)
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン=ポール・ルシヨン、アンヌ・コンシニ、
マチュー・アマルリック、メルヴィル・プポー、イポリット・ジラルド、
エマニュエル・ドゥヴォス、キアラ・マストロヤンニ、ロラン・カペリュート、
エミール・ベルリング、フランソワーズ・ベルタン
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
フランス北部、ベルギー国境に近い街ルーベ。子供たちは独立し、仲よく二人で暮らす夫アベルと妻ジュノン。子供は4人いたが、長男のジョゼフが白血病を患い、家族の誰も適合しなくて骨髄移植ができず、7歳で亡くなるという悲劇があった。40年ほど経ったいま、今度はジュノンが白血病を宣告される。子供や孫たちは、骨髄が適合するかの検査を続々と受けることに。そして、いろいろと折り合いが悪くバラバラだった家族は、クリスマスに、そして母の病に向けて、久しぶりに実家に集まってくる。

劇作家として成功する長女のエリザベート、ファミリーの問題児であるアンリ、繊細で優しい末っ子のイヴァン。アンリは昔から母ジュノンと折り合いが悪く、双方共に嫌いだと言ってはばからず、6年前の金銭トラブルから、エリザベートの頼みでアンリは一家から追放されている。エリザベートの息子ポールは、精神を病んでいて、昔から内気で繊細だったイヴァンは、自分にはポールの気持ちがわかると力になりたい様子。
ジョゼフが骨髄移植を受けられずに亡くなったことが影を落としているのか、各人の憎しみやわだかまりが家族に渦巻いている。そして今新たに、母の白血病と、骨髄移植の適合者はいるのか、という不安とプレッシャーがかかり……という状況。文字にするとずいぶん粘度の高いドロドロのように思えるけれど、それがそういうのとは違うのだ。

はじめは、こんな問題児が家族にいたらそりゃあ大変だろうなあとアンリを見て思うけれど、エリザベートの頑なさも、しばらく眺めていると、あれはあれで窮屈だし、ちょいと行き過ぎているんじゃないかい? と思えて、子供の好き嫌いをはっきり口にするジュノンもすごいが、それに普通に応じているアンリもそれはそれですごいと思う。
はじめて家族と顔を合わせて、「病気、悪いんですか?」とあっけらかんと尋ねる、アンリの恋人も肝がすわっているというかマイペースで、アンリの骨髄なんか移植したらよくないんでは?と本人に尋ねる父アベルも相当だ。

端から見ていれば、一人ひとりが、それぞれ少しずつ(大幅にと言ってもいいけれど)逸脱していて、それでうまくいっていないけれど、かといって壊滅状態ではない。
「皆が本心を隠して仲良しの振りをしている」のであれば、それは前述の粘度の高いドロドロになるのかもしれない。しかし、この作品では、受け止めたくないものは受け止めたくない頑固さで、それぞれ自分のスタイルと意志を貫いて、それぞれが抱え込むドロドロが、各自の中だけにあって他と混ざり合わないために、全体がドロドロにはならないのだ。

何度か、登場人物達が観客に向かって、自分の状況や考えていることを説明する演出シーンがあるけれど、それもこの作品世界を象徴している。それぞれちょっとずつ逸脱した頑固な個人が、孤独と負のあれやこれやを抱えながら、前を向いて生きていく。

果たしてこの家族が仲直りをするか、ジュノンの治療は成功するのか、そういうあれやこれやが解決することを期待して観てはいけない。大きな事件も小さな事件も、それぞれ個人の生きているうちに起こってそれぞれが抱えていく事柄。そしてそれが、ものによっては家族や知人で共有するものになるときもある。そんな一場面を切り取った作品だ。


■COLUMN
ちょっと前の作品。公開当時観たいなあと思いつつ、そのままになってしまっていたのを、レンタル店に行ったら見かけて思いだした。「クリスマス」などシーズン物の扱いをされる映画は、こんな形で後々にも再会できるからいい。

今年(にはじまったことではないけれど)は、メルマガからも、そもそも映画を観るということからも、すっかり遠ざかってしまった1年だった。その主な原因は健康に恵まれなかったことであり、それは今後もしばらく続きそうで、メルマガを続けて行こうか、一度区切りをつけて身軽(というか気軽の方が合っているかな)になろうか、迷った日々でもあった。
年の暮れも押し迫り、たまたま時間と体力に余裕ができて、「何とか今年のうちに1回くらいは出そう」「クリスマス物なんだからクリスマス前に出そう」と、こうして1本書いてみれば、やっぱり映画を観てああだこうだと何かを書くのは楽しくて、こういう場所があるのなら、わざわざそれを手放すこともないよなあとも思う。

健康に恵まれなかったといっても、あまりわかりやすい類の体調の崩し方ではないこともあり、体調そのものだけでなく、今の自分の状況を人に理解されないということに自分で勝手に悩んでいたりもした。
(たとえば、仕事で出張に出かけているくせに、誰かに誘われると「体調が悪くてあんまり外出ができない」と断ったり←意味わからないでしょー(笑))

この『クリスマス・ストーリー』には、それぞれ自分では重大で、苦しいことだけれど、端から見たら「そんな風にしなくてもいいのに」「もうちょっと歩み寄ればいいのに」と思えるようなことを、頑固に抱え続けている人々がたくさん出てくる。彼らを見ていると、理解されようとか考えることは要らないなあと思う。
自分の状況は自分のものであって、それを正確に把握される必要はないし、「意味わからない」と思われようが「なんじゃそりゃ」と思われようが、私は私でそれぞれ抱えているもののなかでできることをしていくしかないわけで、周りは、理解しなくってもいいから、ある程度受け止めて「ふーん」としておいてくれるならそれでいいや、なんてことを思ったのだ。

デプレシャン作品は、「フランス映画っぽいフランス映画」であって、ここに見られる人間関係はお国柄といってしまえばそれまでだけれど、心の持ちようとして、この作品からヒントをもらえてような気もしている。

あまりにも発行間隔が空いてしまって、廃刊措置を講じられない程度に、書けるときには書いていくつもりです。来年もよろしくお願いいたします!

---------------
★DVD
『クリスマス・ストーリー』(DVD)¥ 3,573
http://amzn.to/1cmC2HG

価格は2013年12月22日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B259
---------------

筆者へのメール
enaout@infoseek.jp
感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chiyo_a

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2013 Chiyo ANDO

---------------
ラベル:フランス
posted by chiyo at 16:51| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月23日

No.258 ブラック・ブレッド

=============================================

欧 州 映 画 紀 行
             No.258   13.8.23配信
=============================================

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ きゅうきゅうとした生活に苛立つ人に ★

作品はこちら
------------------------------------------------------------
タイトル:『ブラック・ブレッド』
製作:スペイン・フランス/2010年
原題:Pa negre 英語題:Black Bread

監督・脚色:アグスティー・ビジャロンガ(Agustí Villaronga)
出演:フランセスク・クルメ、ノラ・ナバス、ルジェ・カザマジョ、
   マリナ・コマス、セルジ・ロペス
-------------------------------------------------------------

■STORY&COMMENT
1940年代、内戦直後のスペイン・カタルーニャ。少年クレットとその父が荷馬車の事故で死に、クレットの友だちのアンドレウは、クレットが息絶えるのを目撃する。
警察の捜査では殺人事件とされ、左翼運動に関わっていて、以前から目をつけられていたアンドレウの父ファリオルが容疑者となる。
追及を逃れるため父は身を隠し、母は工場で働いて生活費を稼がねばならず、アンドレウは祖母の家に預けられることとなる。
貧しくも、大好きな父と母と、ささやかに夢を見ながら暮らしていたアンドレウだが、大人の事情や目論見に巻き込まれて……

WOWOWで放送されていたものを観たのだが、「スペイン内戦かー、かなり重い社会派ドラマなのかなー」と怖ごわ観てみた。

冒頭から、目をつぶりたくなるような殺人シーンがいきなり始まるけれど、クレットが息絶える前に、アンドレウに「ピトルリウア……」と謎の言葉を残して、さっそくミステリーに引き込まれるから、「これはテンポのいいサスペンスかな」と思って身を乗り出す私。
やがて、祖母の家に預けられ、葉っぱの間から陽の光がこぼれるような森の中、いとこたちと学校に通うアンドレウの姿は、親が窮状にありながらも、少年の夏休み映画のような雰囲気さえ醸し出す。いとこの一人、大人びた少女・ヌリアがアンドレウを気に入った様子には、少年と少女の出会いの夏休みみたいな印象もあった。

が、田舎の村が抱える秘密、大人たちが隠してきた事情、ヌリアの生きる術、そんなものが少しずつ少しずつ明らかになるにつれ、「かなり重い社会派ドラマ」よりさらに思いもしない方向に、重く重く、湿っぽく社会や人間の矛盾、業、辛さをつきつけられることとなった。

というわけで、前置きのような話ばかりが長くなってしまったが、わかりやすくて爽快な物語を欲している時、ドキドキハラハラを楽しみたい時におすすめできる作品ではない。
観終わったらずぶんと沈める時間と心のよゆうがあるときにどうぞ。

「スペイン内戦」ときけばその土地のその時代の特殊な物語と思ってしまう。もちろんそういう部分はたくさんあるし、時代状況への知識や感覚が十分でないために、いまひとつ理解ができていないのだろうなと残念に思うところも多い。
だが、この作品で胸に迫ってくるのは、どこの時代でもどんな境遇でも多かれ少なかれ共有できる大人のもがく姿だ。

社会をよりよくしようと理想を胸に抱き、同時に、医者になりたがる息子(アンドレウ)に将来を手に入れさせようと、貧困から何とか這い上がろうとする父の生き方は、貧乏なアカのバカなやり口と笑うこともできよう。しかし、何かしらやりたいことを持ちながら、何かしら理想とする生き方を持ちながら、生活するためにはその通りには動けぬきゅうきゅうとした気持ちを抱いた人なら、誰もが思い当たる葛藤の生き方だ。

きゅうきゅうとした思いを持ちながら日々を暮らす人には、その源は何か、理想とは何だったのか、思いを馳せるきっかけとなる作品だろう。

■COLUMN
原題の「Pa negre」は、黒パン、ブラック・ブレッドを意味するカタルーニャ語だそうだ。この作品は、内戦後、スペイン国内で長く弾圧されたカタルーニャ語でつくられた映画だ。さらに、国内の映画賞をとり、カタルーニャ語作品としてはじめて、アカデミー賞外国語部門スペイン代表に選ばれた作品だという。

スペイン語とカタルーニャ語の違いがわからないために、きっと作品の大事なポイントをたくさん見逃してしまっているだろうことも気になるところ。
カタルーニャ語の名前が多いせいか、キャストのカタカナ表記も、調べるところによって違っていて、何がより実際の音に近いのか、よくわからないので、このメルマガでは作品の日本語公式サイトの表記に合わせた。
カタルーニャ語であることが大切な作品ならば、そうした表記にはできる限り気に掛けたいと思う。が、普通の(といっていいのかさえわからないが)スペイン語の知識もないから、できる限りのことはほとんどないのだけれど。

というのは、横道にそれた話だが、その公式サイトの情報によれば、当時のスペインでは、パンの色が階級別に分かれていて、都市部か田舎かでも違っていたそうだ。大麦、トウモロコシ、キビ、ドングリなど、小麦以外に混ぜモノをした黒色のパンは、貧者の食べ物であり、精製された小麦粉を作った白パンは地主など富裕層しか食べられなかった。
本作のなかにも、アンドレウがおやつを食べさせてもらうのに、白パンを食べようとして怒られる場面がある。

黒パン=貧しい、田舎
白パン=お金持ち、都会
という図式は、子どもの頃に『アルプスの少女ハイジ』で覚えたように思う。都会からハイジがおばあさんのために白パンをお土産にするのだけれど硬くなってしまっていて、なんてエピソードはなかっただろうか。

そんな風に、パンの色を決められる人生は悔しい。
食べ物で目に見えぬ階級が露わになることは、「ルール化」されていないだけで現代にだってある。
興味深いのは、最近はむしろ、お金があって健康に気を遣う人は、そんなのっぺりと精製されたものを避けて、雑穀の入った田舎パンを好んで食べることだ。きっと技術の進歩によって、昔の黒パンと今の黒パンでは、食べやすさもおいしさもまったく違うのだろう。玄米や雑穀米を好んで食すことも同じだ。

昔のように、白は誰、黒は誰、と決められるのではなく、現代では、選択肢について、持つ者と持たざる者がいる。好みや気分や健康への気遣いに応じて、白でも黒でもおいしさや健康面で選択肢を持っている人と、経済的に、あるいは健康面やグルメ面での知識に乏しい選択肢を持たない人だ。

黒パンを食す層と白パンを食す層との間に対話を持つことは、以前は難しかった。アンドレウのように、黒パンの世界から白パンの世界へ向かう選択肢が目の前にやってくる人はほとんどいなかった。
その断絶は、今も変わらないのではないかと思う。
いろいろな色やタイプのパン・ご飯を好きに選べる世界と、画一的なひとつの穀物加工製品のイメージしかない世界と。

生きる世界ってなんだろう。そんなことも考える作品だった。

---------------

★DVD
『ブラック・ブレッド』(DVD)¥ 3,009
http://amzn.to/17880CZ

価格は2013年8月23日現在のアマゾンでの価格です。
短いURLにしていますが、アマゾンの商品ページにつながります。
アフィリエイトリンクです。

★本日のメルマガ、気に入ったらクリックを! コメントもぜひ。
http://clap.mag2.com/caemaeboup?B258

---------------

感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

ホームページ http://oushueiga.net/
バックナンバー http://oushueiga.net/back/

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://oushueiga.net/about.html
twitter: http://twitter.com/chiyo_a

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2013 Chiyo ANDO

---------------
ラベル:スペイン
posted by chiyo at 20:06| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする