2011年03月31日

No.241 17歳の肖像

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欧 州 映 画 紀 行
               No.241   11.03.31配信
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毎回このメルマガを読んでくださっている方の中には、
この度の大震災で被災された方、ご家族や近しい方が被災された方も
いらっしゃるかと存じます。
亡くなられた方のご冥福をお祈りし、行方不明になられている方、
今、日常の生活を奪われている方が一刻もはやく平穏な生活に戻られることを
お祈りしております。

「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ ほんとの教育って? ★

作品はこちら
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タイトル:『17歳の肖像』
製作:イギリス/2009年
原題:An Education 

監督:ロネ・シェルフィグ(Lone Scherfig)
出演:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー、
   ロザムンド・パイク、オリヴィア・ウィリアムズ
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■STORY&COMMENT
1961年、ロンドンの郊外。もうすぐ17歳になるジェニーはオックスフォード大
学進学を目指す優等生だ。勉強のプレッシャーと退屈さに苛まれながら、自室
ではシャンソンを聴き、文化と自由のあふれるパリへの憧れを募らせていた。
そんなある日、倍以上年の離れたデイヴィッドに出会う。教養あふれ楽しい会
話のできるデイヴィッドにすっかり恋をしてしまい……

私は知らないが、リン・バーバーというジャーナリストが自分の若い頃を振り
返った手記が原作だという。正直にいうと「だから実話っておもしろくないん
だよ」が私の最初の感想。その部分的な「おもしろくなさ」は後で説明すると
して、せっかく美しくて頭のよい女の子が、危ないプレイボーイの手におちて
いく様子は、居たたまれなくてハラハラして、引き込まれた作品だった。

「オックスフォードに入るためのことなら、何でもやればよい。チェロもその
一つ。だがフランスの歌なんか聴くんじゃない。苦手なラテン語をもっと勉強
しろ」厳しい父親のもと、窮屈な毎日を送っていたジェニーは、デイヴィッド
と時を過ごすことに夢中になる。
クラシックやジャズへの造詣が深く、美術作品についても自説を語れ、何でも
ないおしゃべりも洗練されている。友人カップルの女性はおしゃれの手ほどき
をしてくれる。コンサートに出かけ、一流のレストランやバーで食事を楽しん
で。年齢を重ねて会話のうまいデイヴィッドは、両親ともすぐに打ち解けて、
彼らの警戒心を解いてジェニーをあれやこれやと連れ出す。

私の17歳の頃はもっともっと子どもっぽかっただろうと思うけれど、19か20歳
の頃だったら、と考えたら、ああ確かに夢中になってしまうかもなあ。こんな
ヨーロッパの映画を観て文章を書くメルマガを発行してる私。当然、若い頃は
特に文化的自意識が強くて「文化的に洗練されている」ことは絶対に必要なこ
とだった。そんな「洗練されている人」から認められ愛されることも、うれし
くてしかたのないことだっただろう。
多少アヤシイことには目をつぶり、背伸びを続けてソフィストケイトされた世
界の住人になることで頭の中はいっぱいになるジェニーの心はよくわかる。バ
カな女の子だな、という反応もあるだろうけれど、私は他人事と切って捨てら
れない。

もう何年かしたら自由へと拓いていく鬱屈した自体の雰囲気、ファッションも
あわせて楽しみながら、少女の皮肉な成長をドキドキしながら眺める。ジェニー
の行く末が怖くて、それを眺めている自分の視線がイジワルにも感じられる。
不思議な感覚で楽しめる作品だと思う。

■COLUMN
デイヴィッドと仲睦まじくなるにつれて、当然、成績もあやしくなり、学校で
はお金持ちの大人の男とアバンチュールを楽しんでいるとすっかりウワサの的
となり女生徒たちは大騒ぎ。目をかけていた教師は心配して忠告する。

すっかり大人になった気分のジェニーはぶ厚いレンズのメガネをかけた教師に
威張りくさった言葉を浴びせる。
「勉強勉強と努力を重ねた末にたどり着く人生は、つまらない勉強をまた教え
ることなのか。私はジャズを聞き美しい物を見て、勉強した。そんな洗練され
た物を味わう人生のがいい」まあ、全然言葉通りではないのだけれど、こんな
感じだ。
勉強して教養を身につけるよりも、現場でいい物美しい物良質な物を実際に味
わう方が教養になるだろう。勉強するよりも、容姿とふるまいを磨いて、それ
だけの洗練されたものに触れられる人(=金持ち)と結婚する方がどれだけ幸
せで教養高いことか、とも言いたいようだ。

校長にも啖呵を切る。「今後私のような疑問を持つ生徒は必ず出てくるだろう。
それに学校はきちんとした答えを出すべきだ」。

生意気な若者の失礼な物言いなのだが、私も、地味な勉強を続けることに、同
じように疑問を持つ生徒は確かに出てくるだろうと思うし、若者を育てる教育
者はそれに対して納得できることを答えようと努力して当然だと思う。
今現在の日本だって、どっちかと言ったら、女の子は「見る目」を養ってそれ
なりの男と出会うことを重視して、そうするようにいざなっているじゃないか。

ジェニーが生意気に教師に立ち向かったシーンはとても印象的だが、結局、こ
の作品は少女の疑問に答えていない。
結末を言わなくてはいけなくなるので、なぜ「答えていない」と思うのか、を
説明できなくて歯がゆいのだが、せっかく面白い視点があるのにそれを回収し
きれていなくてもったいないと、私は思う。

この作品の原題は『An Education』。
直接的には、男に夢中になった少女が、その経験から受けた教育という意味だ
ろう。副次的には、教養や美意識、センスが身についた、デイヴィッドから受
けた教育があり、ジェニーが疑問を持ちお高くとまって鼻で笑った学校の教育
がある。
せっかく多重的に「教育」を入れ込んでいるのだから「教育て何?」という裏
テーマもきっちり組み立てて欲しかった。完全にフィクションならば、テーマ
を優先してエピソードを作り出すこともできるけれど、実話なら仕方がない。

「だから実話っておもしろくないんだよ」という最初の感想の正体はこれだ。

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ラベル:イギリス
posted by chiyo at 23:16| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月22日

「デマ」と「パクリ」

3月11日の震災から10日以上。おもにTwitterでの印象だが、「デマ」がずいぶん話題になった。ある情報がぐわりと押し寄せて、「リツイート」で拡散されて、しばらくすると先ほどのはデマでしたという「リツイート」がやってくる。
そのパターンに慣れた今、「デマでした」の前に「デマじゃないの?」の流れさえもやってくる。

江頭2:50さんがトラックを運転して被災地に行ったという話など、「デマじゃなかったんだ。東スポに出てる」という平常時なら信じられないような根拠さえ提示される。
「デマが横行」の次には、流量の大きかった情報の「デマや否や」を検証することが、圧力としてTwitter利用者の上にのしかかっているかのようだ。

ある情報が相当量で流通した後やってくる「○○はデマ!」の大きな流れを見ていて「パクリ」を指摘する大きな流れ(これも主にTwitterだが)を見たときの感じと似ていると思った。

以前に「あるものがパクリであると判明したとき、人はなぜこんなにも一生懸命告発するのだろうか」と思い、それでblogを書こうとしたがうまくまとまらなくて断念したことがある。
「ある曲とある曲が似ている」「ある写真の構図が他の作品と酷似している」「賞をとった作品が2chのコピぺだった」などなど。どこかで公表されている作品が、他の何かの借用だった場合、私が見るに、わりといつも冷静な態度をとっている人でも、必死にその事実を皆に広めようとすることがある。
確かに、オリジナルのフリをしてオリジナルではないこと、本来ならば賞賛されるのはまねをされたオリジナルの方なのに、それが忘れられること。それは許すべきことではない。だが、まねした方でもされた方でもないならば、必ずしもまわりが騒ぐことではないとも言える。
にもかかわらず、「パクリ」は、多くの傍観者に「許せない、放っておけない」という正義感を呼び起こすようで、「パクった方」というのはかなり叩かれることになる。それは、その「パクった方」が金銭的な見返りも社会的賞賛も特に受けていない場合でも同様だ。

「○○はデマ」を広めようとする流れのなかにも「許せない、放っておけない」正義感が見える。デマの場合は、自分がリツイートで拡散に手を貸してしまったから、デマであればそれを明らかにする責任も強いからだろうとは思う。その点は少し違うが、デマであったとしても誰も得も損もしていないのではないか(デマではなかったらしいが上述の江頭さんの話はそんなところ)というものでも「デマは許せない」という空気はある。

パクリを告発する心境とデマを告発する心境が似ているのなら、その共通点は「人が騙されている状態をそのままにできない」ということだろうか。ウソがまかり通ることは、損得なしに、許せない感情がわくものなのだろう。まだ騙されていない人に向けても、こんな風に騙している人がいます、と教えてウソの逃げ場をなくそうとする。

「パクリ」には、ものを創造する人やその行為自体への敬意がプラスされてパワーになっているだろうし、「デマの検証」には上にも書いた正しい情報を流そうとする責任感がプラスされてパワーになるだろう。
だから、完全に類似の現象と言うつもりはないが、根底には「ウソを許さない」「騙されている人がいることを放置しない」思いが共通して流れているように思う。

posted by chiyo at 22:43| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月15日

3月11日の私


東北地方で大規模な地震が起きて、
たくさんの人が被害に遭われました。
私のメルマガやblogを読んでくださっている方のなかにも、
今、苦しい状況にある方がいらっしゃるのではないかと思います。
どうか、一刻も早く平穏な毎日を迎えられますように。

東京杉並に住む私は、自宅で物が落下したりはしましたが、
フリーランスで通勤がなく(東京では停電の影響で電車の運行が限られています)、
運よく今のところ停電の対象地域でもなく、ふつうの日常生活を送れています。


当日は、東京でもかなり大きく揺れましたが、
そのときいた場所によってずいぶん印象が違うようです。

地震が起きたとき、私は電車に乗っていて、
駅についたところで大きな揺れがきました。
車内は空いていて、物が倒れたり落ちたりすることもなかったせいか、
ずいぶんひどく揺れたなあとは思いましたが、
車内アナウンスで震度5だといわれて、「え、そんなに?」とびっくりしたくらい。

そのときのTwitterでの私のpostがこれ。↓

2:49 PM
すごい揺れてる

2:51 PM
電車の中それなりのパニック状態。もっと大きかったら、もっと混雑してたら。冷静な対処なんて難しいね。

2:52 PM
酔った

2:52 PM
また揺れてるわー。


ここで「パニック状態」と言ったのは、
慌てて出口めがけて突進した人がいたからで、
あいた座席がたくさんある車内だったから特に何ともないけれど、
満員電車だったら危険なことも起こりかねないと思ったから。

ただ、その突進した人というのは、
私の隣でかなり大きな声でおしゃべりをしていてうるさかった女性3人組(だけではないですが)。
私の中に多少冷ややかな目線があったと思います。
だから、あまり客観的な観察ではないように、今となっては思います。

何にせよこの時点では「もっと大きかったら」
と言っているくらいの印象だったわけです。

その後の「酔った」というのは
乗り物酔いしやすい性質の私が、
いつまでもゆらーんゆらーんとしていて酔ったようになった、ということ。

この日は携帯のメールはずいぶん遅延していて、Twitterの方がずっとつながりやすかったように思います。
Twitterでは自宅にいた私の夫と連絡をとりましたが、こんなやりとり。

古いマンションの7階にある家の状態を尋ねると写真付きで返信が。
20110311heya.jpg3:00 PM
別に怪我とかはないから大丈夫だけど、こんな感じ。



それに対し、いろいろ物が落ちたんだなと思いながらも、
そもそも床にいろいろなものが散らかっていることが珍しくないため、
8割冗談2割本気くらいで、

3:04 PM
こりゃあまた。普段とそんなに変わらないな。帰るわ。東松原なので1時間半くらいかかるかなあ。

と返信。
たぶん、ここでも二人の地震の印象はちょっと食い違っていたのかもしれません。


私は、この日、近所の税務署に確定申告の書類を提出した後、電車に乗って渋谷方面に向かっていました。
ある美術館に行ってから、どこかのカフェで仕事の資料を読もうと思ってたのです。

3:07 PM
京王線は全線止まってます。運転再開見込みは16時を予定。←井の頭線のことなのか京王線全体のことなのか不明。

と、誰かの役に立つかもしれないと、
鉄道会社のアナウンスをそのままTwitterにpostしました。

まだ地震の規模や被害を低く見積もっていたものの、
こういうときに電車が最初に言った時間に動かないことは何度か経験しているし、
電車移動なら最終的にはJRに乗らなければいけないのだけれど、
一般論として私鉄よりJRの方が復旧が遅いので、そのまま自宅まで歩く方が早いと判断して歩きはじめました。

ふだんから気分転換に4〜5キロ歩くことはよくあって、
歩くこと自体はそんなに大変なことではないんです。
ただ、体調を悪くして治りかけだったために、寒いところに長時間いるのがちょっと辛くて、
「夕方までどこかのあったかいカフェで資料読みして電車動いたころに帰ればよかったかも」と、
途中で弱気にもなりましたが、結局夜通し交通は混乱。
早めに帰る判断が当たりました。

なんて言ってると、まるで自分の判断が的確だったと鼻にかけてるように思われるかもしれないけれど、
カフェで長時間本を読んだり、ということが、もともとそんなに好きではないのです。
無駄に外にいるよりとっとと帰るのが日常の私です。

歩く道すがら、ふだんはガスのメーターを点検しているのであろう方々が、
マイコンメーターが止まった状態の家を1軒1軒まわって、ガス復旧の手順を説明するなど、
東京ガスの制服の人を何人か見かけました。
地震で人員を動員したというには早すぎるから、たまたま検針の途中だった人が注意していたのかな、と想像しますが、当たり前だけれど世の中いろいろな人がいろいろな仕事をしているんだなと思ったり。

家に帰ると、割れ物などは夫がすでに片づけてくれていたので、
いちばん大変なところはやらないで済んでしまいました。
体が冷えたからお風呂に入りたいなーなんて思ったけれど、
お風呂の三角コーナーがぶっ倒れてお風呂中物が散乱していたため断念。

テレビをみてはじめて本当に大きい地震だったのだとびっくりして、
お風呂に入ってる場合じゃないんだと確認。
そして、ちょっとのんびりすぎて人を苛立たせかねないTwitterへのpostを削除しました。
飲みかけの紅茶を机の上に放置して出かけたため、
こぼれた紅茶に汚染されてしまったあれやこれやを片づけて
(パソコンに被害がなかったことが何より! 机にカップを放置するクセを直すいい機会です)
散らばった本はどれが地震のせいでどれが元から落ちていた物かわからないので、
まあいいやってことにして……
そんなこんなで、地震当日の午後は過ぎていきました。

ちょうど仕事が忙しくない時期にあたったので、
どうしても移動する必要もなく、停電の対象地域にもあたらず、
気はどこかで焦るけれど、日常生活を送っていて元気です。
元気に平穏でいられる人は、まずはその平穏を続けることが仕事でしょう。

ここにこんなダラダラと文章を書いたのは、記憶が残っているうちに書いておくと、
後日(自分の)記録として役立つかな、と思ってのことです。
他の人には、今も後日も役には立たないでしょうから、心苦しさは否めませんが、
私は元気です、どうぞ皆さん無事でいて、と伝えるくらいの役には立つかと思っています。



posted by chiyo at 16:04| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 身辺雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月22日

こんな今だから観たい映画

中東で連鎖している民衆の動きが報道されて、
されるものの本当の情報なのかどうか、なかなかわからなかったり、
みんながやきもきしている。

ここのところあまり時間もなく、
新聞の一面をさらっと眺めるくらいで、
ネットのニュースすら追っていない私。
そもそも中東という地域について知ってることもとても少ない。

流れにのって何か言うこともできないのだけど、
ふと思ったのは、こんなにみんなが注目するのは、
一つには、世の中が大きく動くその時をリアルタイムで見るのは、
ダイナミックな体験だからかなってこと。
映像としても、心に残すものは大きい。

で、考えた。
こんな時期に観るからこそ迫ってくるような
映画を今までにレビューで紹介しなかったかな。

探してみたんだけれども、民衆の蜂起や、体制が崩れるその時、が
映像として出てくるものは割と少なく、この3本をチョイス。
(昔の号は、ブログに反映されていないので、リンクはバックナンバーページ)


No.030 『コーリャ 愛のプラハ 』
民主化を求めて広場に集まった人々が、
それぞれ持っているキーホルダーをじゃらじゃら鳴らして、
「鳴り物」とするシーンが印象的。

No.047 『カフェ・ブダペスト 』
ベルリンの壁がこわれた後、西側と東側の人々が一気に交流をした。
その頃のブダペストの風景。

No.184 『君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』
ハンガリー動乱のさなか、オリンピックか革命か、迷う水球選手が主人公。
エンドクレジットで自由を勝ち取る闘いを讃える詩にぐっさりやられる。

体制への反抗とか内戦とかレジスタンスなんかに広げると
もっといろいろあるんだけどね、
そちらのチョイスも見たいって方はコメントを入れてください。


観る時間書く時間がないなら、二次利用って手があるんだな、
今まで書きためたものをある視点からグルーピングすると、
1つのコンテンツにできるんだ。
いいこと覚えた。へっへっへ。
posted by chiyo at 23:26| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月28日

No.240 オーケストラ!


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欧 州 映 画 紀 行
               No.240   10.01.28配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 私の忸怩たるエッセンスを載せ、願いよ、届け ★

作品はこちら
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タイトル:『オーケストラ!』
製作:フランス・イタリア・ルーマニア・ベルギー・ロシア/2009年
原題:Le concert 英語題:The Concert

監督・共同脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ(Radu Mihaileanu)
出演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、
   ミュウ=ミュウ、ドミトリー・ナザロフ
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■STORY&COMMENT
ロシアの名門オーケストラ・ボリショイ交響楽団で、かつて天才指揮者と言わ
れていたアンドレイは、今や楽団の掃除係。30年前、共産主義政権がユダヤ人
演奏者を排斥する決定をしたことに反対して、職を追われてしまったのだ。
ある日、掃除中に、2週間後の演奏会に急遽ボリショイ交響楽団を招きたいとい
うパリからのFAXを見つけたアンドレイは、楽団を追われた仲間を集めて、「ボ
リショイ交響楽団」をよそおってパリへ演奏しにいく計画を立てる……

軽ーく軽ーく笑えるネタが連続して流れるその底に、がつんと重い「事情」が
横たわる、重さと軽さを両方を観客にプレゼントしながら、最後はすーっと昇
華して感涙を誘う。由緒正しいヨーロッパスタイルの映画だ。

ユダヤ人の大追放が、音楽家として職場を奪われることになったことは、映画
の最初には明かされない。そのせいもあって、悲壮感とは無縁に、どうもうだ
つの上がらない人たちが、偽楽団をしたててるよ、というスピード感のあるコ
メディとしてすんなり物語の世界に入れる。

救急車の運転手、のみの市の商売人、音楽の仕事を追われて行き着いた先の仕
事には、さしてまじめに取り組めなくて落ちぶれている昔の仲間達。彼らを探
し出して、説得するところから始まり、その都度降りかかってくる困難を何と
かはねのけはねのけ、いや、それが苦労話ではなく、全部笑い話で何とかして
いく。
シチュエーションコメディというのとは少し違うのだろうけれど、その都度は
まり込む困難、難題のシチュエーションそれ自体を観客は笑い、それを何とか
する(または何とかなっちゃう)様子を見て吹き出す。

最終的にパリに行くことができて、演奏も成功することは、言ったところでネ
タバレとはならないだろう。そのための過程を楽しむ作品だから。
人が集まったら今度は出国できるか怪しく、パリまでたどり着いたら、急ごし
らえ楽団員たちは遊びやら商売やらでリハーサルに現れない、などなど、次か
ら次へと難題が現れ、笑いながらもハラハラがやまない。
アンドレイがぜひ共演したいと願うヴァイオリンのソリスト、アンヌ=マリー・
ジャケが、いったい何者なのか、という謎解き要素も途中くわわって、最後ま
で、落ちないスピード感で引っぱって行かれる。

ハラハラした分も、バカ騒ぎに笑った分も、全部最後のチャイコフスキーに凝
縮されて、「ああよかったね、よかったよ」と、無意味に隣の観客と笑い合い
たい気分になる。たとえ、一人で鑑賞していてもね。

■COLUMN
いっちばん最初の印象は、正直言って、
「楽しくていい映画、でも真剣に感動するにはリアリティがないよねー」
だった。
だって30年も音楽から離れていた人たちが急ごしらえで集まっても実際はさー、
(その他、出国方法などあり得ないことはいろいろ!)と思ったのだ。

だけれど、DVDの特権をフル活用し、クライマックスの演奏シーンをもう一度再
生していて考えが変わっていった。

確かに、この映画で起きたことが実現可能かという意味では、そうじゃないだ
ろう。
でも映画のリアリティには、その事が本当に起こるらしいリアリティもあれば、
その結末を本気で喜べるか、とか、共感できるか、とか、自分のこととして入
り込めるか、など物語としてのリアリティもある。その作品の持つパワーといっ
てもいいだろうか。
そういう意味で、「楽しくていい映画、そして真剣に感動するだけのリアリティ
がある」。

30年もの間、政府によって仕事を奪われる重く苦しい事態を下敷きにするこの
作品は、「願いのかたまり」だと思う。自身もルーマニアからの亡命者である
監督は、むくわれない多くの人の過去と現在と未来が、少しでもよい方向へ向
くようにと、願いをこめているんじゃないか。

笑いとユーモアで吹き飛ばしたかのように見えても、決して吹き飛ぶことはな
いやるせなさを、ほんの少しでも揮発させようという願い、祈り。

「自分がこうしたい、こうなりますように」ではなく、他者に向ける願いや祈
りは、ともすると無私のものと思われやすい。だが、災害や事故、戦争など、
遠くの見知らぬ誰かに向けるものにしろ、近しい誰かに向けるものにしろ、そ
こには必ず、自分の思いや自分の事情が載せられるものだ。
自分の境遇との重ね合わせ、共感、仲間意識、傍観者でしかいられないことへ
の焦り、あの日うまく話せなかった後悔、贖罪、償い、心配、期待……etc.

自分のエッセンスを載せた願いや祈りは、現実にはあり得ないような、夢のよ
うな話にこそ、託しやすい。そうあったらいいなと信じたい気持ちと、願い祈
る気持ちが相乗効果で膨らむからだ。
ユーモアも笑いも、それ自体として楽しく面白く、夢のような展開と結果もそ
れ自体として楽しくうれしく、だが同時に、そんな展開だから自然に願いと祈
りをぶつけ信頼できる装置でもある。

あり得ない夢のように、みんな楽しく笑えますように。願いと祈りを託せるリ
アリティをもった映画は、作り手の願いにさらに観た人皆の願いを載せて、大
きな願いのかたまりになる。
おぞましい過去から続いた今と未来が、よい方へ向きますよう、忘れてはいけ
ないことが忘れ去られることのないよう。

人の思いを載せられる映画は、他愛ない笑い話の連続でも、実現不可能なあり
得ない展開でも、人の心のリアリティが、ある。

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筆者について http://mille-feuilles.hp.infoseek.co.jp/cinema/about.html
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2011年01月14日

ろくでなし啄木

前回の記事で「昼間に時間があく」とそわそわしていた私ですが、
昼の打ち合わせで急遽取材をすることになるなど、予定が変わって、
結局、「どの映画を…」なんて迷う必要もなくなってしまいました。
まあそんなもんですね。待ち時間が長いのに、本を持っていなかったのが残念。

夜に観たのは三谷幸喜の新作芝居『ろくでなし啄木』@池袋は東京芸術劇場。
女にも金にもだらしがなく、子どもがそのまま大人になったような石川啄木を藤原竜也が演じ、
カフェで働く恋人「トミさん」を吹石一恵、
トミさんにフラれた過去があり二人を何かと世話するテキヤの「テツさん」を中村勘太郎が演ずるという芝居。
啄木が死んで10年。トミさんとテツさんが久しぶりに再会し、3人で過ごした温泉宿での一夜のことを回想する。
その夜に起こった事の真相とは……

物をつくる人間の苦悩と、イメージとギャップのある<器の小ささ>が、
哀しくおかしく描かれて心をつかれます。
あの夜の真相は? というミステリー仕立ても楽しい作りです。

ただ。
他の三谷の芝居と比べると、ミステリーに徹するにはクールさが足りないし、
できればもう少し笑いが多い方がいいかな、それに、
「物をつくる人間の苦悩」や「信頼と友情」ならば、
映画やドラマも含めて三谷が度々取り上げているテーマで、他の作品でのが肝が据わっているかなー、
というのも正直なところです。

値段分は楽しみましたけどね。

3人のなかで芸達者だな、と思わせるのは勘太郎です。声がお父さんにそっくり。
ミステリー仕立てのところもそれを連想させたのかもしれませんが、
藤原竜也演ずる啄木の、勘違いした全能感を抱えて周りの人間を操れると思う子供っぽさは
古畑任三郎シリーズで藤原竜也がやった犯人役のキャラクターによく似ていて、
それが三谷氏の俳優・藤原竜也のイメージなんでしょう。
吹石一恵は凛とした<美しさ>というより<かわいさ>がありました。
舞台で見る宮沢りえを思いだしました。どこが似ている、というわけでもないのですが。

今年は量産体制らしい三谷芝居。
次は1940年代のドイツを舞台にした『国民の映画』を観に行く予定です。



posted by chiyo at 00:04| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月11日

魔法のような時間使い

なかなかメルマガを発行する時間がとれなかったり、
そもそも映画を観る時間がとれなかったりするもので、
そのほか、本が読めない、身体を動かしてない、などなど、いろいろあって、
「上手に時間を使いたい」ってのが、
最近の私のテーマというか懸念事項というか、
“いいネタあったら何か教えてくださいよ〜クイクイ”
みたいなものになっているわけです。

明日、昼過ぎの打ち合わせを終えると、
夜に予約してる芝居までに時間があくから、
水曜日でもあるし(1000円のとこが多い)、
午後から休みってことで映画でも観ちゃおうかと
『白いリボン』『クリスマス・ストーリー』など、
気になっている作品の上映時間を調べたのだけれど、
これがいまいち合わない。
4時間くらい時間はあくのですがねえ、むずかしいもんです。

そもそも、明日映画を観るためには、
今、時間を上手に使って仕事を進めないといけないわけで、
こんな計画を練ったところで、絵に描いた餅、机上の空論。

まあ、こんなところで、餅を描いて机上の空を切ってるより、
その場のいきおいで、目についた映画を観ちゃうとか、
もうちょっと行き当たりばったり、出たとこ勝負、臨機応変
の心がけがないと、上手な時間使いにはなれないのかもね、と
ため息をつく午後です。

素敵な時間使いへの道は厳し。


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2011年01月10日

レアなホームズ、あったらいいなのホームズ

遅ればせながら、ガイ・リッチー監督、ホームズをロバート・ダウニー・Jr、ワトソンをジュード・ロウが演じた『シャーロック・ホームズ』を観ました。
小学校から中学校くらいにかけてシャーロキアンを気取っていた私、ホームズ物にはうるさい、てほどではないけれど、無視はできないのですなあ。公開当時、具体的にはあまりチェックしていないし、よく覚えていないけれど、原作と全然違うとか、そういった理由でわりと不評でしたよね。
昔シャーロキアンだった身として「えー、そうですかー?? 原作に照らし合わせてすごくいいキャラクター設定だと思うけどなー」が第一の感想。アクション映画としてどうとかは、そういうジャンル、あんまり観ないからわかんないから、「全然違う」て言われるキャラクターについてだけですが。

どこがいいかというと。
1.「だめなホームズ」を凝縮して見せてる
すばらしい頭脳と観察眼を持つホームズだけれど生活力はほとんどない。常識を持ち合わせているワトソンがフォローしてなんとかなってるところってのは原作でも随所に出てて、そういう場面を集めたら楽しいだろうと思う。だからオタクでだめなホームズを肥大化して凝縮したキャラクター作りは好き。
原作でも確か、ワトソンは結婚してるのに、ホームズの頼みでベーカー街に舞い戻ってるらしいよね。

2.「友情で結ばれた二人」を表に出す
映画にも出てくるホームズの「押し入り小道具セット」が登場する『チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン』で、万策尽きて悪党ミルヴァートンの家にホームズが押し入ることに決めるとき、『悪魔の足』で毒物の実験をして二人が死にそうになったとき、など。珍しくホームズが友情や熱い気持ちを表に出すシーンが大好きだった。めったにないシーンを何度も読み返したもので、「いいコンビ」なところを凝縮されると、そんなレアシーンを思いだしては私はニヤニヤしてしまう。

3.「二人のかけあい」ってそもそもコミカルで
ホームズシリーズでは、話の枕の部分で、ホームズが観察術を披露してワトソンをからかったりしてることがよくあるけれど、皮肉っぽいホームズとのやりとり、そもそもクールでコミカル。
だから映画の会話が現実離れしてコミカルなのも、エッセンスとしてむしろ原作に近いと思うんだな。話の枕に限らずいろんなシーンに散りばめられてるサービスはありがたい。

そんなわけで、原作の細かいところに潜んでるエッセンス(そのエッセンスの捉え方が私の好みに合ってるってことでしょうが)をうまく入れ込んで、現代的なアレンジをしている素敵なキャラクター設定だと思いましたよ。結果的によくイメージされるホームズ像からは離れてるんでしょうが、隠れた「ホームズのそんなところが実は好き」って要素がぎゅっとつまってて私は気に入りました。アイリーン・アドラーが峰不二子みたいになっちゃうところは、まあご愛敬で。

きっとホームズ物をとても愛している人の発想だろうと想像できて、観ている間とても楽しかった! 続編あったら劇場に行きますよ。
posted by chiyo at 01:58| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月30日

No.239 ウディ・アレンの 夢と犯罪

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欧 州 映 画 紀 行
             No.239   10.12.30配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ 夢と欲望 堅実と強欲 紙一重のこわさ ★

作品はこちら
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タイトル:『ウディ・アレンの 夢と犯罪』
(レンタルソフトタイトル:カサンドラズ・ドリーム 夢と犯罪)
製作:イギリス/2007年
原題:Cassandra's Dream  

監督:ウディ・アレン(Woody Allen)
出演:ユアン・マクレガー、コリン・ファレル、ヘイリー・アトウェル、
   サリー・ホーキンス、トム・ウィルキンソン
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■STORY&COMMENT
ウディ・アレン監督がロンドンを舞台につくった第三弾。ロンドン南部に暮ら
す労働者階級のイアンとテリーの兄弟。兄イアンは、父のレストランを手伝い
ながら投資家を目指している。自動車修理工の弟テリーは恋人とマイホームで
暮らすことを夢見ている。
テリーがドッグレースで大穴を当て、兄弟はかねてから欲しかった小型クルー
ザーを共同購入する。イアンは舞台女優アンジェラと恋をし、人生を共にした
いと思う。そんな矢先、テリーがポーカーで大負けをして多額の借金をしてし
まい……

ちょっと頭のよい兄、頭はそれほどでもないけれど優しい弟、仲の良い兄弟だ。
兄は投資でなんとかエグゼクティブ層に入り込むことに憧れていて、弟はつつ
ましやかな幸せを望んでいるように見えながら、ギャンブルで熱くなる癖に周
りは少し心配している。
そんな兄弟がちょっとした歯車が狂って、犯罪に加担していく心理サスペンス
だ。

こわい。

何がこわいって、多額の借金を背負って、人殺しを頼まれる羽目になる、どん
どん追い詰められる様子。
そして、そもそも、兄も弟も望んだことは、よくありがちな陳腐な幸せだ。し
かし、ちょっとしたことで、こんなに追い詰められた状況ができあがる。そん
な人生の皮肉もこわい。
観てる側の心理をいえば、明らかに悪い方に向かっていく兄弟に、気持ち的に
は肩入れしたいが、すれば自分がもろともに悪い奴になる。道徳や倫理観をど
こかで試されている気もする。
だからといってクールに誰にも肩入れせずに観ればいかにも孤独に取り残され、
映画を観るということそのものが苦痛にさえなる。

観客の心理をあやつるという面で、あー、うまいよなあと思ったのは、テリー
のギャンブルシーン。負けが込んで熱くなってその場で借金しながら賭けを続
けるテリーの姿を見て、こっち(観客)は、「おいおい、それはやめないと、
だめだめ」と良識持って心配する。で、次のシーンは翌日。「いい流れがきて
最終的に大勝ちした」という報告をしているシーンがやってくる。
テリーのギャンブルの結末はすべてそうで、負けるところをさんざん見せられ
てハラハラさせておいて、それでも結局はなんとかどうもうまく治まってるら
しい、という形で語られる。そういうシーンがいくつか続くと「ああそんなも
んなのかな、大丈夫なんだな」と傍観している側も思っちゃう。その安心が伏
線のようになって、後の窮地の怖さを増してると思う。

年末年始、はでじゃないけれどしめつけられるような緊張を味わいたい方はぜ
ひ。ただ、心理劇として、しくしくと迫ってくる怖さは一級品だけれど、ミス
テリーとしては、まあ、穴だらけ。だから、そっちに重きを置いて観たらだめ
ですよ。

■COLUMN
このあいだ美容院で話していたら、なんの話からか、お金にガツガツすること
なさそうだもんねー、人を蹴落としてなんて考えないでしょ。なんてことを言
われた。
個人的な話をするわけじゃないので、よく知っているわけではないけれど、長
く通っている美容院で、なんとなく気心が知れてる美容師さん。そういう人か
ら見るとそう映るらしい。
「だけど、人を蹴落としてでもお金もうけるタイプですよね、て言われて肯定
する人もいないと思うけどね」と答えながら「人を蹴落としてお金をもうけら
れるってどんな状況だろう」と考えた。

私だってお金欲しいし、フリーランスだから安定とはほど遠くって、とれると
きにはとっておかなきゃ、な気持ちや、無駄なお金は絶対払わないぞって気持
ちは強いから、決して他の人と比べてがめつくないってことはないと思う。

金に執着しそうに見えるか否かは、性質よりも環境に左右されるんじゃないか。

私はたまたま、誰かを押しのければお金持ちの道が開けるような環境にいない
し(そういう人がどれくらいいるのかわからないけど)、ちょいと頭を使えば
上手に富を手に入れられるような方法も知らないから、そうはならない。
でも、そんな機会があれば、案外わからないんじゃないかな。
ギリギリ食っていけるだけあれば平気、と言えるほど強くないもの。

労働者階級のレストランなんかから抜け出してスマートなビジネスマンになり
たいイアンも、つい賭け事に熱くなるテリーも、高価なアクセサリーが大好き
なイアンの恋人、贅沢でなくても庭のある家で子どもを育てたいと願うテリー
の恋人、お金持ちの兄が自慢でいつも夫と比べている兄弟の母。
この作品に出てくる人は、みんなちょっとずつ「お金が要ること」に無意識に
執着していて、そこがちょっと大げさに映るように描かれる。

でも、この人たちがことさらにお金好きというわけでもない。現代に生きる人
なら誰でも持つささいで他愛のない欲望だと思う。

「がめつい」「お金好き」「拝金主義」「贅沢」「足るを知らない」どう他人
が評価するかは、欲望の源よりも、それを実現するために何を為すかで決まる
だろうか。

「お金にこだわること」はどこまでが「堅実」でどこからが「品がない」なの
か。基準は人にも状況にもよるだろう。きっと考えても答えが出ないんだろう
けれど、そんなことをついついいつまでも考えちゃうもんだよなと、思う年の
暮れ。お金で神経をすり減らさない年を迎えられますように。

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★すっかり配信をさぼった1年でしたが、(今数えたら今日が14回目でした)お
世話になりました。以前のように週1回は無理かも知れませんが、来年はもう少
したくさん観て書こうと思います。
2011年もどうぞよろしくお願いいたします。皆さまよいお年をお迎えください!
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編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://mille-feuilles.hp.infoseek.co.jp/cinema/about.html
日々のつぶやき・twitter: http://twitter.com/chiyo_a

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-20010 Chiyo ANDO

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2010年12月20日

No.238 シャネル&ストラヴィンスキー

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欧 州 映 画 紀 行
              No.238   10.12.20配信
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たーーいへーーんに、ご無沙汰しております。
ヨーロッパの映画を紹介いたしますメールマガジン「欧州映画紀行」です。
みなさん、お元気でいらっしゃいましたか? 
前の配信から時間が経ったので、「まぐまぐ」さんからは、
最近、発行してないけどどうしたんですか? てなメールもいただいてしまい。
だからってわけではないのですが、久しぶりの配信です。

★ 流れから読むでなく、ただそこにある感情を凝縮して ★

作品はこちら
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タイトル:『シャネル&ストラヴィンスキー』
製作:フランス/2009年
原題:Coco Chanel & Igor Stravinsky 

監督・共同脚本:ヤン・クーネン(Jan Kounen)
出演:アナ・ムグラリス、マッツ・ミケルセン、
   アナトール・トーブマン、エレーナ・モロゾーワ
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■STORY&COMMENT
1913年パリ。ストラヴィンスキー「春の祭典」の初演は、あまりにも革新的で
受け入れられずヤジが飛び交った。観客の中にいた、ココ・シャネルはその新
しいスタイルに共鳴していた。
それから7年。有名デザイナーとなったシャネルは、家族と共にパリで亡命生活
を送るストラヴィンスキーと出会う。彼の才能に惚れ込んでいたシャネルは、
住まいの提供と経済的援助を申し出る。同じ屋敷に暮らすうち、二人は恋に落
ちて……。

シャネルが主人公となる映画がトントンと同時期に作られた。どういう事情な
のか、調べ損ねたのだけれど、そんな「シャネル物」のひとつ。作曲家ストラ
ヴィンスキーとの情事を題材にした作品だ。
ココ・シャネルとストラヴィンスキーが恋愛関係にあったことは事実だが、そ
う何度もくり返し関係を続けたわけではなく、その点はフィクションらしい。

切り口はいろいろあると思うのだけど、私がこの作品でいちばん心に残ったの
は、物語の「流れのなさ」だ。
これは、私がそう感じた、というだけで、作り手の意図とは全く違うかもしれ
ない。

ココ・シャネルとストラヴィンスキーは、惹かれ合って一度寝た後、逢瀬を重
ねていくのだが、その重ね方に、時の流れを感じないのだ。たとえば、一度目
よりも二度目が親密に、三度目には軽口を叩くこともあるとか、そんな流れ、
二人の心の移り変わりを今ひとつ感じられない。
そうした描き方に、はじめは違和感があったのだが、だんだんと、こうして、
流れや組み立てとは関係なく、<その場>、<その時>の感情をクローズアッ
プするのが面白いところだと思うようになった。

もちろん、破局に近い頃には、シャネルの冷たい拒否があり、二人の恋愛のは
じまりから終わりに向かう流れはある。しかし、二人のシーンは刹那的に捉え
られ、過去も未来もなく、<その時>をぎゅっと凝縮して捉えられている。前
のできごと、周りのできごとから必然的にもたらされる何かではなく、その瞬
間に存在する感情をぐっと差し出している。
前に伏線があって、次にこのシーンで誰かの気持ちを理解するということが、
ない、とは言わないけれど、ほとんどない。

誤解を恐れずにいえば、なんなら、ひとつひとつのできごとをシャッフルして
ランダムに並べたって、作品としてまとまるんじゃないか。
二人の情事だけじゃない。たとえば、ストラヴィンスキーの妻が、二人の関係
に気づきながら、考え事をするとき、ひたすらその時の不快な気持ちを、表情
のアップでぎゅっと凝縮して伝えられる。それは、心の移り変わりや、経緯の
流れを汲んで伝わるものじゃなく、<今その人が抱えるもの>として、ぎゅっ
と提示されるもの。

いわゆる「感情移入」をしたがる観客には、ちょっとドライな印象を与えるん
じゃないかと思う。感情移入は、物語の組み立てで、一つ一つの台詞に意味が
のって、なされるものだから。
でも、こんな描き方も面白い。感情を、移り変わりでなく、そのもの「生」で
捉えると、こんな風になるのかいね、というのが、私が見るところの、作品の
大きな魅力だ。

■COLUMN
こうした実在の人物を扱う作品に出会うと、残念なのが己の知識のなさである。

モードに詳しければ、シャネルの逸話やシャネル役のアナ・ムグラリスの衣装
について、作品を重厚に見られるような豆知識をプレゼントできるし、クラシッ
ク音楽に詳しければ、「春の祭典」初演の逸話、初演以外での「春の祭典」、
現代における「春の祭典」についてや、ストラヴィンスキーのここには出てこ
ないエピソードを語ることもできるだろう。

いや、しかし悲しいことに、私はどっちにも造詣深くあらず。

特に、「春の祭典」初演の再現シーンは、この作品のもう一つのテーマといっ
てもいいくらいに力を入れたものだろう。ニジンスキーの斬新なバレエ振り付
け、アースカラーの地味な衣装、不協和音と観客の野次と足踏みの合わさった
音。
作品の冒頭、まだ観る側のテンションがじゅうぶんに上がりきらないうちにやっ
てくる、スケールの大きな「春の祭典」初演シーン。ちょっと心して気持ちを
高ぶらせて集中して観るといいと思う。

うんちく、雑学、感想、解釈……もっと語れたらかっこいいのにねえ。

「欧州映画紀行」発行者としては、それだけではいかにもつまらない。
今までに紹介した作品から、今回の作品とリンクして考えられるような話を二
つ、おまけにくっつけよう。

まずはその「春の祭典」。
ベルリン・フィルが、子どもたち(思春期にあたる子どもも含め)を集める教
育プロジェクトを描いたドキュメント『ベルリン・フィルと子どもたち』では、
総勢250人の子どもが、「春の祭典」を踊る。まったくやる気のなかった子ども
もいるなか、しだいに表情に変化が生まれ、ひとつのプロジェクトとして演し
物がかたまっていくさまには、高揚感も覚える。広い意味でアートの力を見せ
てくれる作品だ。
http://mille-feuilles-hp.web.infoseek.co.jp/cinema/back/film086.html

もう一つは、ストラヴィンスキーを演じたマッツ・ミケルセンについて。
お気に入りの俳優というのが、それほどいない私だが、このデンマーク人マッ
ツ・ミケルセンは気に入りの俳優と言えるだろう。ふだんは観ない「007」シリー
ズに、この人が悪役で出演したから(『007/カジノ・ロワイヤル 』)とわざ
わざ観る程度には好きな俳優だ。
この俳優を初めて観たのは、『しあわせな孤独』というデンマーク映画だ。自
分の気持ちをどうにもできず、新しい恋人にはまってしまう医師の役がぴった
り合っていた。冷血な悪役よりも、女にずぶずぶはまっちゃうインテリ役をや
るこの人が私は好きだなあ。
http://mille-feuilles-hp.web.infoseek.co.jp/cinema/back/film034.html

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★未定ではありますが、年内にもう1本配信したいと思っています。
最近、ちょっと映画鑑賞から遠ざかっていたので、情報に疎くなっておりまし
て。とりあげてほしい作品があったら、ぜひリクエストをお願いします。
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感想、質問、リクエストなど、なんでもお待ちしております。

編集・発行:あんどうちよ
筆者について http://mille-feuilles.hp.infoseek.co.jp/cinema/about.html
日々のつぶやき・twitter: http://twitter.com/chiyo_a

リンクは自由ですが、転載には許可が必要です。
一部分を引用する場合には、連絡の必要はありませんが、
引用元を明記してください。

Copyright(C)2004-2010 Chiyo ANDO

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posted by chiyo at 22:08| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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